「秘境旅行」 芳賀日出男 角川ソフィア文庫
先日の総裁選で、候補者である河野太郎氏がこう発言していた。 「いろいろ変えられるのは、若者、よそ者、ばか者」と。 これは名言だなぁ〜と妙に納得。
あちらこちらの地方をみていても、よそからきた移住者がその土地に根付いてお店をひらいたりしてお客を呼び込んだり、外部にむかって上手くPRして広めたり、学生が新しい企画を立ち上げて活気づいたり、盛り上がったりしているのは日本各地でみられる。 そして、なによりばか者でないと他人の目線、意見が気になって行動を起こすことはできなかろう。 でも。 なんでもかんでも変えていっていいとは思わない。
やはり、それは長い時間をかけてその土地土地において昔から引き継がれてきた伝統や文化の個性は尊いものだから。 一度、途絶えてしまった伝統や文化を再生するのはイチからはじめるよりはるかに難しいと思う。 そして、地方地方それぞれの特色が観たいからこそ旅をして、その【ちがい】に面白みを感じるんだろう。
この『秘境旅行』の冒頭にも −今や日本には秘境などはなくなってしまったと思う。どこへ旅行しても私と同じシャツを着て標準語をしゃべり、テレビを楽しむ市民や村人ばかりである。 と。 実際、私達も移住先を探すにあたって色々な地方都市をまわったが結局、どこも大きな国道沿いには都会と同じ大手企業のチェーン店ばかりが立ち並ぶその姿には、趣も個性もなく幻滅した。 「田舎ってどこも一緒だね…」 一体ここがどこの場所かわからないほどそういう通りは似通っていて区別がつかないほど。
そんな都会の毒に蝕まれないよう田舎に生まれ育った方々にはその土地のもつ個性や伝統に確固たる自信をもっていただくこと、新しい流れをとりいれながらも守っていくことが今後の若者、よそ者、ばか者の使命にも思う。