「TOKYO ARTRIP 和菓子」 美術出版社
最近、和菓子が気になる。せんべい屋だから当然かもしれないけれど、生まれ育った神戸は、歴史・地理的な背景も手伝って、圧倒的に洋菓子のまち。和菓子はどうしても地味にみえて魅力に気づけていなかった。
実際、自らつくるせんべいも小麦粉、砂糖、卵を使うので【洋風煎餅】と呼ばれている。
−木の実や果物が起源で、米や粟、ひえなど穀物を加工した餅や団子が、和菓子の原形といわれている。
飛鳥〜平安時代に遣唐使らにより「唐菓子」が中国から伝わった。鎌倉〜室町時代にかけて禅僧によって「点心」が、戦国・江戸時代初期にはポルトガルから「南蛮菓子」が上陸。これら3種の影響を受け、江戸時代には色、形、菓子名ともに日本独自の和菓子がつくられるようになった。
和菓子をつくる職人の繊細な技巧だけでなくそこに付随する器や茶にはじまり、空間における書や花や庭などの全体的な芸術、そしてもてなす茶人の心まで、、、 歴史は果てしなく古く、知れば知るほど奥深く、根が深い。あれもこれも知りたくなってもうドロドロの沼状態…。
まずは入門書的なこちらの本。 東京の和菓子を扱う店舗紹介とともに和菓子の歴史や豆知識、写真のかわいさにキュンとなる。 (日本語&英語のバイリンガルで書かれているので、外国のかたに日本の〈wabi-sabi〉的な魅力の和菓子のことを説明するにもピッタリかもしれない。)
和菓子を目の前にしたとき。 その佇まいからひろがるおだやかなテンションに【平和】【平安】を感じて心が落ち着く。揺らぎやすい心を、すーっと正してくれる。そんな感じがする。 地味は滋味。洋菓子は気持ちを高めたいときに、和菓子は心を落ち着かせたいときに。