「おこめ」はうちの飼い猫の名前で、もちろん「お米」が名の由来だ。
千葉に住んでいたとき、路端にひょっこり現れたところを保護。
生後二ヶ月ほどだったが、周りに母猫がいる様子もなかったので、そのまま放置もできず、以来家族となった。
笹での生活が落ち着いた頃、預かってもらっていた家から彼女を連れてくることになった。
車とフェリーを乗り継ぎ、二日掛けて高知に引っ越してくるときは、ずっと不安そうに鳴いていた。
人間の都合で申し訳ないことをしたなと思う。
猫は家につくというから、新しい環境に慣れてくれるのか心配したが、笹のいえを気にいってくれたみたいだった。
彼女を迎えるまで、家はネズミ天国。天井を走り回るわ、台所の野菜を齧られるわ、困った状態だった。
おこめを飼いはじめると、ネズミたちはどこかへ引っ越してくれたのか被害は一切なくなった。
朝起きたとき、狩ってきたばかりのネズミやトカゲが枕元に置いてあって、ドキッとさせられる。
横にドヤ顔の彼女が座っているので、褒めてやって、亡骸に手を合わせる。
千葉でも高知でもひとの出入りが多いところで暮らしているので、人懐っこくて甘え上手。
猫好きのヒトが分かるようで、足元に絡んできて喉を鳴らす。
でも、実は子どもが苦手で、特に人数が多いとぷいとどこかに行ってしまう。
作業に追われ忙しい時間を過ごしているとき、陽だまりのある縁側で優雅に毛繕いをしている彼女が目に入ると、
「まあそんなに急がなくてもいいか」と思わせてくれる。
拾い猫ゆえ正確な歳は不明だが、大体七歳くらい。うちの子どもたちよりも長い付き合いだ。