あずる
【動】手こずる、難儀する
【例】 パズルにあずる
著者名
記事タイトル
掲載開始日
「いのちは贈りもの ホロコーストを生きのびて」 フランシーヌ・クリストフ 岩崎書店
普通の生活を過ごしていた人々が世の中の理不尽な大きな力によって、寒さも暑さも、空腹も清潔さも省みられず、感情は踏みにじられ、愛情から見放され、暴力と恐怖と絶望の劣悪の中に放り込まれる…。そんなことが第二次世界大戦の時、ユダヤ系の何百万人もの人々の上に降りかかった…。
信じられない。想像を絶する。恐ろしすぎる。これがもし、日本人を差別視したのなら私たちも同じことが起き得たのだ。
この本を書いたフランシーヌは、9歳から12歳まで強制収容所を転々と移動させられながら、体験したこと、見たこと、聞いたことを子どもの率直な記憶をもとにまとめている。
ここまでひどいとは…。ヒトラーによって洗脳され、狂人となった人々の非情さに胸が悪くなる。人を狂わせる戦争の恐ろしさが胸に突き刺さる一冊でした。
藤田純子
らっきょうの塩漬けから約1ヶ月が過ぎ、「そろそろ本漬けしようかと思うんじゃけど」と計美さんが言いました。
その日は7月29日、昼間の色々な仕事を済ませ、その日の夜、いよいよ本漬けです。
「この時期は昼間はとても忙しいきよ。毎年、らっきょうの本漬けは夜なべ仕事よ」と計美さん。
計美さんは、部屋の奥から一枚の黄色がかった紙を持ってきてくれました。
30年以上前、雑誌に載っていた「らっきょうの甘酢漬」の作り方。切り取って大事に持ち続け、このレシピでらっきょう漬けを作ってきたのだそうです。
「何十年も昔の本の資料。これがなくなったら困るけ」
作ることを重ねてきた計美さんの蓄積が見えるようでした。
「まあ、らっきょうを畑で育てるところからやってみや!」と笑う計美さん。
らっきょうを育て、収穫し、洗って、塩漬け、塩抜き、そして本漬けする。そうすることで初めてらっきょう漬けを食べられる。
長い道のりですが、いつかやれるようになれたらいいなあと思います。
*計美さんのことを書いた記事はこちらです。
同じく6月18日の夜、昼間に下準備したらっきょうを塩漬けしました。
らっきょうは切ったらすぐに芽を伸ばすので、その日のうちに塩漬けにするのです。
農業を生業としている計美さんは、トマトや他の野菜の世話や出荷、保存食作り、細々とした用事を全部済ませた夜のちょっとしたすきま時間を見つけて作業します。細切れの時間を上手に利用しながらいくつもの仕事をこなしていく。本当に働き者のお母さんです。
「だいたい一ヶ月置いたら発酵してくる。水も濁ってくる。泡が出てくらあ。そしたら本漬けにする」と計美さん。
この乳酸発酵が計美さんのらっきょうの美味しさの秘密です。(ある程度、量が多い方が発酵がしやすいそうです)
「もう何十年もそれでつけゆうきね!」
計美さんの漬けたらっきょうは天下一品!!食べると元気をもらいます。(実は私も毎年らっきょうを漬けますが、「母さんの漬けたらっきょうより計美さんのらっきょうの方が美味しい」と子どもたちは言います。。)
「色々若い人に教えちょかんとよ。むこうに持って行っても使いものにならんきよ」と計美さんは笑うのでした。
「また本漬けの時にきてみいや。声かけちゃおけ」と計美さん。
本漬けは一ヶ月後!
→らっきょう漬けづくり 本漬け編に続く
*この日の夜、計美さんのご主人の豊喜さんの姿が見えませんでした。聞いてみると「夕方、山水が止まってしまった。途中のホースが抜けたのではと見に行った」とのこと。バイクで山へ上がって行ったそうです。山で暮らすということは、朝昼夜関係なく、何でも自分たちでやっていかなければならない厳しさも隣り合わせにあるのです。
「ニュータイプの時代」 山口周 ダイヤモンド社
以前「武器になる哲学」をこの欄で紹介しましたが、近年の山口周さんの著作はキレッキレの内容が続きます。
現時点で山口さんの最新刊と思うのですが、まず前提として、
・世界がVUCA(ブーカ)化している。
VUCAとは、Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語。
この世の中の誰も先を予想できない目まぐるしい変化を踏まえて、個人としても組織としても、綿密な計画を立てることに時間を費やすより、その場その場の対応力を磨いていくべき、と論じています。
その上でこの環境に適応できる力を持った人をニュータイプと呼び、旧態依然のオールドタイプとの対比で、来たるべき未来で必要とされる能力をリストアップしていってます。
子狸との遭遇から数日後、今度は鳶に逢った。
たぶん多くの男子たちがそうであるように、僕は小さいときから鷲や鳶などの猛禽類が好きで、図鑑などをよく見ていた記憶がある。保育園から小学校低学年のころよく観ていたいわゆる「戦隊モノ」の中には、鷹をモチーフとしたキャラクターがいたりして、憧れの存在だったのだ。
地域によって頭数の差はあるものの、鳶は山間部においてさほど珍しい動物ではない。土佐町でも毎日のように彼らが空で気持ち良さそうに円を描く姿や独特の鳴き声を見聞きすることができる。どういうわけか、カラスと折り合いが悪く、激しく鳴きながら空中戦を繰り広げている場面にも出くわす。身体は鳶の方が大きいが、これまで僕が見た勝負では、いつもカラスが勝利し、鳶が這々の態(飛んでいる生き物にこの表現が合っているのか分からないけど)で逃げていくのを何度も目撃してる。
この日見つけた鳶は、笹から一番近くにある小さな橋の手摺に留まっていた。僕は、その凛とした姿勢、鋭い目とくちばしに見入っていた。しばらくののち、こちらを一瞥すると翼を大きく広げ、優雅に飛び去って行った。
毎年恒例のらっきょう作業。6月のある日、土佐町の和田農園で行われるその作業を私はとても楽しみにしています。
ゴールデンウィークが明けた頃、和田農園の和田計美さんから電話がかかってきます。
「今年も、らっきょうに来てもらえるろうかね?」
「もちろん!」
天気予報と計美さんの育てるトマトなどの野菜の生育状況とも相談しながら日程調整が行われ、今年は6月18日に決定。
作業自体も楽しいですが、何より楽しみなのは、計美さんの作るお昼ごはん!
らっきょう作業の日程を決める時に必ず聞かれる「お昼ごはん、何がいいろうかね?」
私は毎年、迷うことなく(遠慮もなく)、この2品を必ずお願いしています。
卵は飼っているにわとりの卵。贅沢に6つも割って、大根の入ったお鍋に溶き入れます。こんなに美味しい切り干し大根の煮物は、未だかつて出会ったことがありません!
コリコリコリコリ、歯ごたえがたまらず、つまみ食いが止まりません。春に収穫した、たけのこを干したものを柔らかく戻して味付けしたもの。私も作れるようになりたい。
計美さんの料理は土から生まれます。お米や卵はもちろん、大根もたけのこも、計美さんが山からの恵みに手を加えて一年中食べられるよう工夫したものです。もう何も入らない…というお腹を抱えて、また一年が巡ったのだという実感が湧いてくるのです。
→らっきょう漬けづくり(塩漬け編)に続く