2024年6月

メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 20

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただいています。

このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載されます。

 

やなせさん

香美市出身の漫画家、やなせたかしさんは「人間が一番うれしいことは何だろう?」と長い間考え続けていたそうだ。そして見つけた答えは「人は人を喜ばせることが一番うれしい」。自分の作品を見た人が喜んで笑ってくれるとうれしくてたまらない。笑い声を聞きたくて、喜んでくれるのがうれしくて、描き続けることができたという。

生活しているとさまざまな「うれしい」と出合う。例えば、自分の取り組んだ仕事を喜んでくれた人がいたり、子どもが「このおかず、おいしい!」と言ってくれたり。

相手が笑ってくれた、楽しんでくれた、喜んでくれた。その実感に励まされ、大きなエネルギーをもらいながら、私は今まで何とかやってくることができたのだと思う。

「人間が一番うれしいことは?」。

その問いの答えはどこか遠くにあるのではなく、きっといつも自分のそばにある。

目の前のあの人、この人、誰かを喜ばせることが巡り巡って自分の喜びになっていく。その循環はきっと世界共通。人間は、そういったことにうれしさや喜びを感じる生き物なのだと思う。

「人生は喜ばせごっこ」。

やなせさんの言葉はまさしく真理だと、今実感している。

(風)

 

2024年5月1日の高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。

最近、高知県香美市出身の漫画家、やなせたかしさんの著書を読んでいます。

やなせたかしさんといえば、子どもたちに大人気、丸顔の正義の味方「アンパンマン」の作者というイメージが浮かぶ方も多いと思います。

アンパンマンは、やなせさんがが従軍し、空腹ほど辛いものはないという経験から生まれたキャラクターであることを知りました。いや、キャラクターというよりも、やなせさんの哲学そのものと言ったらいいでしょうか。

アンパンマンは、やなせさんが50歳の時に誕生。やなせさんはそれまで、代表作と言えるものがないという思いに苛まれていたといいます。そう知ってから、あちこちでにっこり笑っているアンパンマンの見え方が変わりました。

そのやなせさんが遺した言葉の一つが「人生は喜ばせごっこ」。やなせさんがご存命だったら「まさにその通りです!」とお伝えしたかったです。

 

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笹のいえ

十三年ぶりの夫婦時間

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今年度に入って、僕たち夫婦の生活に大きな変化が訪れた。それは、「子どもがいない時間」が現れるようになったことだ。今年度から末っ子が保育園に通うようになり、実に13年ぶりに夫婦だけの時間ができるようになった。

第一子である長女が生まれてから今年の三月まで、特別な場合を除き、僕ら夫婦の周りにはいつも子どもたちがいた。しかし、四月からは平日には毎日のように二人きりになる機会が訪れるようになる。

数ヶ月前、この事実に気づいたときの僕たちの反応はある意味対照的だった。

僕は、これまで子どもたちに時間を割かれてなかなかできなかった農作業を一緒にしたり、静かな環境でお互いが思っていること考えていることの共有、それから子どもがいると行きづらかったカフェや美術館に行くことなど、何からはじめようかと考えていた。
一方で、妻は「子どもがいない日が来るなんて」と涙ぐんでいた。もちろん、僕と同じように新しいことを楽しみにしている部分もあっただろうが、寂しさが先に立っていたようだった。

さて、実際にはどうなったか。

思っていたほど夫婦の時間が確保できないことがわかってきた。子どもが五人もいると、誰かが学校や保育園を休むことがあるし、夫婦それぞれの用事や作業もあり、相変わらず忙しい。

つまり、これまで通り過ごしていたのでは、やりたいことはなにも起こらないのだ。

Googleカレンダーをチェックして相手の希望と都合をLINE*で確認し、新しい予定を入力し、その日を迎える。要するに意識的に計画しないと実現しないのだ。当たり前と言えば当たり前、しかし13年の間にすっかりやり方を忘れてしまったようだ。

子どもの成長フェーズによって、僕ら夫婦の在り方や付き合い方も変わってくる。常に意識しておきたいことのひとつだ。

 

*歳のせいか、約束や聞いたことをすぐに忘れるようになった。後々やりとりを確認できるように、大事なことは記録に残すようにしてる。

 

 

写真:土佐町の「Ombelico」さんで友人に撮ってもらった一枚。ふたりでレストランでランチなんて、何年ぶりだろう。

Thanks to 前田きおみ

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