「宇宙兄弟 心のノート2」 小山宙哉 講談社
漫画「宇宙兄弟」の名言がまとめられている「心のノート2」。どのページも納得の名言ばかりですが、私にとっての特別な言葉があります。
主人公ムッタと日々人が幼い頃、二人の興味を宇宙へと導いた天文学者・金子シャロンの言葉です。
「人は何のために生きているのか」。幼い日のムッタの疑問に対するシャロンの答えは、『そんなつもりはなくても、人はね、誰かに“生きる勇気”を与えるために生きてるのよ。誰かに、勇気をもらいながら』。
私は今、自分でも言葉にできないようなもやもやした何かが胸の内にあるのを感じています。コロナウィルスの影響で行動が制限されていることも大きな影響を与えていると思いますが、いつまでこの現状が続くのか、先の見えない道のりにどこか疲れを感じている。それは私だけではなく、日本中、世界中の人たちが同じ問題を抱えているのだとわかっていながら、不安や疲れから言葉がきつくなり、今までだったら気にならないことが気に障り、ケンカや揉め事になることもありました。その度に、こんなはずじゃなかったのにとため息をつく。そんなことをしばらく繰り返していました。
でもある日、ふと顔を上げて見渡すと、周りには大切な人たちがいました。今までもいたはずなのに、私がちゃんと見ていなかったのです。ダメな時はダメだと叱ってくれる人がいました。何かできることはある?と声をかけてくれる人がいました。いつでもどんな時でも笑顔で迎えてくれる人がいました。
その人たちの存在に私はどれだけ支えられてきたか、前を向く「勇気」をもらっていたか。その人たちがいる環境をいつの間にか当然のように思ってしまっていましたが、それは決して当たり前のことではなかったのです。
人は、さりげない一言や行動を与え合いながら生きています。ふとした言葉やまなざしが誰かを救うことだってあるし、誰かを傷つけ苦しめることもある。「その人がそこにいる」ことには、思っている以上に大きな力があります。人が環境をつくっているのです。
今、日本中、世界中の人たちが皆、経験したことのない渦中にいます。大変な状況のなかですが、少しでも「生きる勇気」を与え合えるような言葉を、行動を、まなざしを互いに伝え合えたらと思います。