カルタ
幼い頃の思い出を、記憶を辿って書いてみました。
大正15年9月27日生れ、寅年。三才上の兄、三才下の妹、赤ちゃんの弟がいました。
物心ついたのは四月から入学と云うお正月でした。外は雪が積って寒い日、炬燵に足を入れて家族皆で暖まって居た時、兄が見た事も無い、色々な絵のある物を並べたのです。絵があったり、字ばっかりだったりと父が突然「イヌモアルケバ、ボーニアタル」と云ったのです。
すると兄が「ハイ」と云って、私の目の前の1枚を取ったのです。父が分る様に説明はしてくれたものの、生れて初めて見たり聞いたりで、兄は1人で悦に入っていた。
両親の考えで、カルタで楽しみながらカタカナを覚えさせようとしたらしく、その時代はカタカナが先でした。よみかたと云っていたカルタのお陰で全部覚えるのは時間がかからず、両親の思い通りだった様でした。
教科書を揃え、先ず「ヨミカタ」の本を見てびっくりしたのは、まるで絵本の様な色刷りで、表紙には満開の桜の花、中もまるで絵本の様な色刷り、ワクワクした1頁目は「サイタ、サイタ、サクラガサイタ」でした。
「キレイ」の一言でした。2頁目は「コイコイシロコイ」。大きな声で読みました。
兄はショックで見向きもしなかった。兄達は、まっ黒な本だったのです。
(続く)