「子の無い人生」 酒井順子 KADOKAWA
約20年前に「負け犬の遠吠え」というタイトルでベストセラーになった著者の方です。この著者の著書はどれも好きで、とても読みやすいです。土佐町から神戸へ出張する際の電車の中で読むのがなぜかピッタリな感じがして、何度かお供していただいております。
田舎vs都会 独身vs既婚 子持ちvs子無し … どちらが良いとか悪いとか単純な主張をするわけではなく、落ち着いた文章と鋭い分析、ウィットに富んだ文調は笑いを抑えながら夢中になって読めます。一見重たくなりそうな話題も、この方にかかれば何事も、誰にでもそんなこともありますよねぇと思えてくる不思議。
土讃線の「特急・南風」の車窓から見える吉野川の如く、人生悲喜こもごも、川の流れのように〜 たしか美空ひばりも歌われていらっしゃった、結局ジタバタしても仕方がないんだ…と、もののあはれを感じながら瀬戸大橋を渡るのです。
新神戸に降り立つ頃には、酒井順子さんのようにスパッとキレ味のよい頭になった気分で、無数の人生が錯綜している都会へと紛れ込む私の姿があります。