とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。
鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。
初ガツオ
産直市の魚売り場へ行った。今が旬と言わんばかり、 今にもピチピチ飛び跳ねそうな魚が並んでいた。初ガツオだった。黒潮に乗ってはるばる太平洋を北上してきた初物、 目が合ったからには夕飯のおかずは決まりだ。でも丸ごと一匹をさばく自信は恥ずかしながらゼロ。冊を買うことにした。
売り場に並んだ冊には皮がついている。刺身にするには皮をはいだ方がいいのだろうか。店員さんに聞くと「皮付き、皮なし、どっちもいけるよ。好みは人それぞれ!」と笑う。
よく見ると皮は2種類。青味を帯びた黒、そして銀色に光って筋が入ったもの。違いがわからず、隣で熱心に選んでいたおんちゃんに聞いた。
「黒は背中、銀は腹じゃ。腹は脂が乗ってたたきにするとうまいで!わしは腹が好きじゃ」とガハハと笑う。 そして「ほら見てみい。背 中と腹の色が違うろう」と氷の上のカツオの群れを指差した。本当だ!
せっかくだから背も腹も買い、夜、皮付きのまま厚めに切っていただいた。背と腹の味の違いを考えながら食べたのだが、私の舌ではよく分からなかった。
が、初ガツオは口の中でとろけ、幾度となく店員さんとおんちゃんの笑顔を思い出させた。とても良い5月の一日だった。
2023年5月30日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。
今回は産直市に並んでいた初ガツオのことを書きました。
氷の上に並んだカツオたちはピチピチと銀色に光り、ぎろりとこちらを見ていました。はるばる太平洋を北上してきたのかと思うと、何とも愛しくなってきます。
高知の食、高知の人。その掛け算が高知の魅力です。