川村房子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

川村房子

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「本屋さんのダイアナ」 柚木麻子 新潮社

この本は少女から大人になっていく2人の女性のダブル主演で綴られている。

小学校3年生のクラス替えのあった新学期。自分の名前が大嫌いな「大穴」と書いてダイアナと呼ぶ屋島ダイアナ。おばあさんみたいな名前だという神崎彩子。家庭環境も何もかも正反対の2人が本好きを通して親友になった。

2人の大好きな「秘密の森のダイアナ」という児童書が、ダイアナのシングルマザーとしてキャバクラで働く母親、子どもが生まれたのも知らず出て行った父親と、編集者に勤めていた彩子の父親が複雑にからみあっている。

そんな2人がささいな事をきっかけに絶交してしまう。お互いを意識しながらも仲直りのきっかけがつかめない2人。

いろいろな事にほんろうされながら10年。本屋さんに勤めるダイアナ。大学生活を終え、社会人への道を踏み出そうとしている彩子。「秘密の森のダイアナ」をきっかけにまたつながりを手繰り寄せていく。

ラストシーンにむけては、目をしばたきながらいっきに読んでようやく眠りについた。

川村房子

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私の一冊

川村房子

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「ひゃくはち」 早見和真 集英社

人間の煩悩は百八。そして主人公青野が青春をかけた野球ボールの縫い目も百八だという。

補欠でありながらも甲子園への譲れない夢をもっていた青春時代と、八年たってサラリーマンになった自分を、行ったりきたりしながらの野球小説で、家族小説で、友情小説で、初恋小説です。

いつもは表情に出さないが息子が甲子園に出られると聞いて、「誰かの身になってあげられる人間のほうが、野球だけの人間よりよほど価値があるのです。やるだけやってそれでも駄目ならその時は胸をはって帰ってくればいいんだから。がんばれ」とコタツにつっぷして大泣きした父親がおくった手紙も心に残る。

川村房子

 

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私の一冊

川村房子

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「死の壁」 養老孟司 新潮新書

週に一度水泳にいきはじめて5年を過ぎた。その間の半分位を休んではいるけれど。水泳のコーチは、2歳うえでマスターズで何度も優勝。行動的でバイタリティーあふれる人だった。

先日、そのコーチが練習中亡くなった。あっという間の出来事だったと聞いた。あまりに突然でショックだった。

以前に上滑りだけ読んでいた「死の壁」を開いた。誰もが必ず通る道でありながら目をそむけてしまう「死」の問題。人間の死亡率は100%。死といかに向き合うべきか、生と死の境目はどこにあるのか。

自分の老いも感じ始めたこの頃、たまに考えておくと安心して生きていけると作者はいうけれど、本当だろうか。

川村房子

 

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ほのぼのと

占い

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19歳の頃、愛知県にいた私は先輩に連れられて占いに行った。

信じやすい私は行きたくなかったが、いろんな所に連れて行ってもらったりしてお世話になっている先輩の誘いを、断ることもできずシブシブついて行った。

12月の寒い日、軒の連なった暗い路地を入ったつきあたりで、テレビで見た事のあるような雰囲気の家だった。占い師さんはおぼろにしか覚えてないけれど、昔ながらの着物を着た普通のおばあさんだったように思う。

心の隅に隠していることや、自分でもいやだと思っていることを告げられるのじゃないかとハラハラドキドキで手相をみてもらった。

悪いことがみえても黙っててくれたのか、しっかり憶えていることは三つ。

・実家の40キロ以内に嫁ぐだろう。
・名前にさんずいがついていて、2歳上が一番相性がいい。川はさんずいに入る。
・向上心はあるが熱しやすくさめやすい

もう少し詳しく話してくれたけれどそこは内緒。

県内で就職先を探していた友達のなかで、あ~高知に帰るんやなーと思い、熱しやすく冷めやすいのは大当たりなので、心にきざんでちょっとでも努力しようと決めた。

お礼が3000円やったと思う。50年近く前の一週間分の小遣いでいたかった。

どんなに誘われても2度と行くまいとも決めた。

先輩は九州都城の島の出身で、愛知にきて5年。一度も帰ってないと言っていた。

お見合いの話しもあって帰ろうかどうしようか悩んでいた。あの頃、23歳は結婚適齢期だった。帰り道「何て言われた?」と聞いてみたけれど、何も教えてくれなかった。

次の春、にっこり笑って故郷に帰っていった。

あれから全くのご無沙汰だけど元気やろうか…。

今、介護保険を払う年齢になってみるとあれもこれも当たっていた気がする。

穏やかな生活、ちょっとの向上心。これからもがんばろう。

 

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私の一冊

川村房子

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「深夜食堂」  安倍夜郎  小学館

 

作者は高知新聞でも度々掲載されている四万十市出身の漫画家です。

繁華街の路地裏に、ひっそりと佇む「めしや」を舞台に、店を訪れる訳ありの客たちのドラマを描く。

テレビでは小林薫さん主演でドラマ化されており、韓国版、台湾版でのドラマ化中国では映画化も決まっているという。フランス語版漫画もあるというからすごい。

人生あまり上手くいってない登場人物が、それなりにやっている感じがいやされるからだという。

レシピの説明書きもうれしい。
・玉ねぎを少しきざんで、ツナに塩とブラックペッパーをふってマヨネーズで和え、クラッカーにのせてハバネロを少々。
おつまみにいいかも…。

・軽く塩コショウして小麦粉をまぶした鮭をフライパンでやく。バターを溶かして最後に醤油を「じゅっ」。
鮭のバター焼き。鮭を買ってこようと思った。

川村房子

 

 

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私の一冊

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「笑え、シャイロック」 中山七里 KADOKAWA

図書館であわてて借りて「シャーロック」かと思いきや「シャイロック」という題名。

帝新第一銀行に入行した結城。バブル崩壊後に焦げついた債権の取り立て部署に配属となり、上司は伝説悪名髙い回収マン山賀。彼について回収不可能と思われる案件に取りくんでいく。

「シャイロック」は「ヴェニスの商人」に登場する、強欲なユダヤ人の金貸しだという。山賀について学ぶうちに秘めた優しさや配慮に気づかされていく。

そんなある日、山賀が刺殺体でみつかる。帝都第一銀行の闇をにぎっていたようだ。

部長があげた稟議で決済された案件の多くが不良債権であった。山賀の残した多くの案件に孤軍奮闘していく。銀行の窓口にいくと笑顔で応対してくれるが預かるだけではやっていけない。

貸し付けてはじめて成り立つ大変さは、大小の銀行を問わずあるのだろうと改めて思わされた一冊だった。

川村房子

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私の一冊

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「女のいない男たち」 村上春樹 文藝春秋

題名にひかれ短篇集だという事もあって手に取った。世界の村上春樹といわれノーベル候補者。落選すると泪するファンもいるというほどの作家だから、とついつい読んでみる。

「ドライブマイカー」「イエスタディ」「独立器官」「シェラザード」「木野」「女のいない男たち」と6編で組まれている。

いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。男と女の話であっても違う。哲学のなんたるかなど全くわかってないが、なんだか哲学的だと思ってしまう。

川村房子

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私の一冊

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「自閉症のうた」 東田直樹 角川書店

自閉症である彼が書いた本を英訳したイギリス人作家との交流、メールのやりとりがQ&Aの形式で書かれている。

作家自身も自閉症の子どもを育てているので質問も具体的。他に「自閉症のうた」「旅」の二編が掲載されている。

作者は言葉としてしゃべる事ができないし、自分で文字にする事もできない。12歳から24歳の現在まで20冊以上の本を出版しているが、それは文字盤ポインティングやパソコンを使って表現しているとのこと。内に秘めているものは大きい。

この本を読んで、自閉症のの人たちと交流のある私は参考になった。

是非読んで欲しい一冊です。

川村房子

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私の一冊

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「ひぐらし先生 俳句教えてください」 NHK出版 堀本裕樹

テレビ番組の「プレバト」の俳句コーナーが楽しくて、手に取ってみました。

師匠であるひぐらし先生と弟子で料理上手なもずく君との、ほんわりとしたやりとりが楽しい俳句入門書です。

「ひぐらしメモ」

・切字…一句の途中で、または末尾で強く言い切る言葉。「や」「かな」「けり」等も随所に載っています。

百首以上の俳句も載って、俳句に興味あるかたには是非おすすめです。

もずく君の旬のものを使った料理もいいですよ。

川村房子

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私の一冊

川村房子

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「空中ブランコ」 奥田 英朗 文藝春秋

 

精神科医伊良部の元に診察を受けにくる悩める者たち。

5つの短編構成になっている。

大学の講師で附属病院勤務の池山達郎は同級生である伊良部を訪ねて「脅迫神経症」だと告白。

伊良部の治療は、自分の意思が希薄でどこか操られているようなところがあり、診察室は観覧車で乗ったら一周する間合わせるしかないと達郎は思う。

その治療はハチャメチャで、驚きあきれながらも、いつのまにか心の病を克服していく。

痛快な一冊です。

川村房子

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