「黙示」 今野敏 双葉社
帯に書かれている「ソロモンの指輪」超古代文明の謎、この言葉に興味を引かれた。
高級住宅街で発生した奇妙な窃盗事件が題材の警察小説です。
謎の暗殺教団が、現代も組織として残っているかのような設定もあり、古代ミステリーの様相を呈してくる。
古代文明に精通した探偵と助手も登場、助手の名前が「明智大五郎」・・・ちょっと笑える。
窃盗にあったIT長者は命をも狙われると不安におののいている。
ほとんどが会話形式で描かれていて、読み手も参加しているような錯覚に陥る。
著者名
記事タイトル
掲載開始日
山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
「海神(わだつみ)の島」 池上永一 中央公論新社
舞台は沖縄、祖母に育てられた3姉妹が、祖母の最後の言葉「祖母の父親が残した秘宝を探し出した孫のみに相続権あり」という具体的には不明な秘宝を巡って話は進む。
少し滑稽味のある内容ではある。
弁護士の話から、年間5億円の地代収入がある土地の相続であることが判明するや否や、3姉妹の争奪戦のゴングが高らかに鳴り響く。
この3姉妹が、まるで現代社会を反映したかのような個性豊かなキャラクター(銀座の有名クラブのママ・水中考古学の学者・地下アイドル)に描かれていて、極端過ぎる嫌いもあるが、テンポのいい場面展開についつい夜更かしをしても読み進みたくなる。
そして、年間5億円の相続の行方は、想像もしていなかった着地となる。沖縄、米軍基地、尖閣諸島など政治的な話題も含まれており、盛りだくさんの内容です。
「最強脳」 アンデシュ・ハンセン 新潮社
「日本の読者の皆さんへ」と題された最初のページで、この本は親子で読めるように書いた、脳の取り扱い説明書と、紹介されています。
最強脳の行く末は「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質にかかっている。ドーパミンとは、何に注目し、集中すれば気分を良くしてくれる「ごほうび」が得られるのか、を教えてくれる物質。SNSでの「いいね!」もドーパミンにより、脳から小さな「ごほうび」がたくさんもたらされる、ここにもスマホ依存の原因が隠されている。
衝動を抑えたり、ブレーキをかけたりする脳の部分(前頭葉)は25歳くらいになってから完成する。しかし、ドーパミンのシステムなどは子供の頃にはすでに機能している。
つまり、10代の子供は、ごほうびに非常に弱い、ここが子供や若者がスマホの餌食になってしまう理由。納得のいく分析、恐ろしくなってくる。
この本の結論は「運動をしよう」…。そうすれば脳は確実に強くなる。根拠は運動する事によりドーパミンの分泌が促され、生命活動を活性化するからだそうです。
「ゼロからの『資本論』」 斎藤幸平 NHK出版
はじめに・・・『資本論』を読破するのは、かなりの難行です。と書かれているように、タイトルだけで尻込みをしてしまう。
この本は“ゼロから”の入門書として役立てていただきたい、そして近年のマルクス研究を踏まえてまったく新しい視点で読み直す、と説明がある。それならば私なりに読めるかなと思い買ってみた。
分かり易く解説してくれてはいるが、読み終えるには多くの時間が必要だった。
「SDGs」が盛んに唱えられる昨今であるが、マルクスが考え、結論を出せずにいた持続可能な理想社会の基本と同じであるように感じた。目新しく見えても、危機感をもって、目指し求める社会は、過去も現在も共通であり、困難な道のりである。
「本書はひとつの問題提起です」と、著者は述べている。
「君のクイズ」 小川哲 朝日新聞出版
クイズ番組に出演し勝利を手にしてきたクイズプレイヤーの心理、推測を描いている。
Q1グランプリの覇者として賞金1000万円が目の前となった僕「三島玲央」、対戦相手の「本庄絆」との決勝戦、最終問題での対戦者の「ゼロ文字押し」(問題を一文字も聞くことなく解答)。しかも正解だった。
この出来事の謎を巡って、敗者となった主人公の考察、葛藤を描く。
クイズに人生を賭けた主人公と、クイズは単なる手段と割り切る対戦者。クイズに対する熱量の違いも見え隠れしている。そこには、対戦者の中学時代に受けた壮絶なイジメ問題も浮上する。
クイズの出題等に関して、作り手の作戦、テレビ番組として魅せる出題方法、解答者のMCに対する繊細な観察力を垣間見た内容でもあり、とても興味深かった。
「徳川家康 弱者の戦略」 磯田道史 文藝春秋
日本の歴史を知りたくて、日本史関係の本を読んではみるが、なかなか全体像がつかめない。この本は「生きるみんなのための歴史」であることを意図して書かれた歴史書です。かみ砕き、専門家が切り捨てがちな二次的な記録も紹介し、人生の参考書として「徳川家康」を扱っている。
高い権威と文化力はあるが、武威を示さなかった「今川氏真」、天才的な指導者「織田信長、豊臣秀吉」、どのタイプも日本を治める事はできなかった。
弱者であった「徳川家康」だからこそ、見極め、寛容、といった特質を活かし、領主の責任を重要視し、世の中を統治することが可能であった。
驚異的な指導力をもつ織田信長・豊臣秀吉に関しては、天才の采配に振り回される周囲の武将達の「織田疲れ」「秀吉疲れ」が、信長や秀吉に対しての反感の一因となったのではないだろうかと記述されている。
現代の政界や民間レベルでも同様の事が言えるのではないかと解釈した。
「70歳からが本物の成長期」 和田秀樹,
「幸せ」について述べられた対談形式の本です。
伝説的な雑誌編集者で、80歳を過ぎた現在も現役の花田紀凱さんと、「高齢医療」の専門医師として、日本一人気の和田秀樹さんとの対談をまとめたもの。
・「脳の若さ」と「身体の若さ」は完全にシンクロしている
・「意欲」の有り無しが老後のすべてを決める
・ ルーティーンではない新しいことをやる
・ 終活にこだわらず生きている間のことを考える 等々
脳を老いさせないコツ、今を生き生きと生きるコツが盛りだくさんです。「日本人の幸福度のピークは82歳以上」という調査結果もあるそうです。年齢を重ねるのも悪くないと勇気をもらえる内容でした。
「お探し物は図書室まで」 青木美智子 ポプラ社
地域のコミュニティーハウスにある図書館の司書さんの影響力、察知能力をメルヘンタッチで描いている。5章からなる短編集のような構成。
婦人服販売員、夢を実現したいサラリーマン、出産後のキャリアウーマン、ニート、そして定年退職後の自分の居場所を求めるおじさん等が、鬱屈した想いを抱え、取り巻く環境に不満を抱き、この図書館に引き寄せられるがごとくやって来る。
そして不思議な司書さんに出会い、一見尋ねた本とは関連のないと思われるタイトルの本を薦められ、付録と称するぬいぐるみのような手芸品を手渡される。
本を探しに来てはいるが、実際は自分探しの来館者が、司書さんの助言により前向きな人生へと漕ぎ出す展開。ファンタジックな司書さんの数少ない助言により自らが思いを定めるようになる過程がキーポイント。