とさちょうものがたり

土佐町ストーリーズ

蛇穴(東石原)

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今から百六十年前のこと、東石原村(現在の東石原)に、郷士(名前は定かでない)がおったそうな。

郷士と言うのは、お百姓さんが武士の待遇を受けておったもので、戦いが始まると、くわやかまのかわりに刀を持って戦いに出よったそうな。

その郷士の治める領地の中に、それは大きくて見ごとな欅(けやき)の木があったと。

たぶん祠かお堂があって、そこに植えたものが大きくなったんじゃろう。

その欅の木には大きな穴があって、水がごうごう流れる音がしよったと。

村の人たちはあの穴の中には蛇が棲みよるらしいと言いよった。

ある年のこと、その欅を江戸の水野出羽守のところへ出すことになり、野村儀八と大館達次の二人が何日もかかって切りたおしたと。

まあ木は無事に江戸へとどきお役に立ったそうなが、後がおおごと。木を切った二人は、その日から大病にかかって苦しんだそうな。

また、そのころには村に名本(なもと)と言って、今の区長さんのような仕事をする人がおったが、その名本さんのところまでは五百メートルぐらいあるのに欅を切った時の木屑が、流れていって大さわぎをするし、木の切り株がごうごうと大きな音を出して鳴るんじゃと。

きっと、これはあの穴の中に棲む蛇のたたりじゃと言って村の人がいっぱい集まって、お通夜をしたり切った後をきよめて、いろいろのものを供えてお祭りをしたそうな。

すると、だんだんと鳴るのがおさまって、もとのとおりの株になったそうな。

皆山集より(町史「土佐町の民話」)

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私の一冊

鳥山百合子

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「本の子」 オリヴァー ジェファーズ (著),‎ サム ウィンストン (著),‎ 柴田 元幸 (翻訳) ポプラ社

これは私、鳥山の大切な一冊「本の子」。

この本の中には、世界中で読み継がれてきた昔話や児童文学、ファンタジー、たくさんの本や言葉が出てきます。

本の中のページを開くと、たくさんの時間がつまっていていろんな出来事があって、いろんな人生がある。
それは「ものがたり」。

人は、自分のものがたりを日々積み重ね、時には自分と隣の人のものがたりを重ね合わせながら今この場所で生きているんやなあと思います。

「わたしたちはものがたりでできている」。

『とさちょうものがたり』とどこか通じるものを感じて
この本を手にした時、本当にうれしかったのです。

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私の一冊

山崎幸子

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「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 ハイム・G・ギノット (著),‎ 菅靖彦 (著) 草思社

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土佐町ストーリーズ

蛇の家(黒丸)

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ずっと昔、黒丸での話よ。

ある晩のこと、きれいな娘さんが「この川には渕はいくつもあるけんど、どの渕も先客がおるので泊まる所がない。どうか泊めてくだされ」言うてやって来たと。

それじゃあと言うことで泊めてやることにしたが、寝る時に桶を貸してくれえ言うたと。

大きな桶もなかったので、楮(かじ)を蒸す桶でもかまん、誰もあけてくれな言うてそれをすっぽりかぶって寝たと。

夜中に、体が蛇にもどったもんよ。

桶がバリバリ言うて割れたそうな。朝になってみると、娘さんの姿は見えざったそうな。

そのことがあった後、すぐ隣の家から火が出たそうな。

昔のことじゃきに草葺きよね。近くの家はどんどん焼けてしもうたけんど、その家だけ焼け残ったと。

娘さんを泊めた時に、私の寝姿さえ見んかったら、どんな火事にも焼けんから言うて寝たそうなが、その御利益だったもんよ。

草葺ではなくなったけんど、その家は今もあらあね。

蛇の娘がどこから来て、どこへ行ったかは聞いちょりません。

 

町史(「土佐町の民話」より)

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土佐町ストーリーズ

蛇神様(北境)

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応仁の乱から百年余りが過ぎ、やっとのこと平和が訪れようとしておった。

その頃、南越村(みなごしむら・現在の北境)の名本(今の区長さんのような仕事をする人)藤大夫(ふじだゆう)の弟で和田孫三郎が須山に分家した。

それがこの地に人が住むようになった最初であった。

その下方には十二戸の百姓が住み、長い戦乱に生き残ったのは、蛇神様が守ってくれたおかげだと、住民は毎日酒や魚を供えておった。

杉の平から落ちて来る谷川に蛇渕があって、大きな蛇が棲んでおった。

渕は青々として底は知れず、周りはしめなわで囲まれ、色とりどりの花が飾られておった。

住民は幸せで、境村や和田村から多くの人に来てもろうて盛大に蛇神様祭りをしておった。

それは天録から宝永にかけてのことじゃった。

いつの間にやら蛇神様が南越村の蛇渕へ移っちょった。

「これは大変じゃ。どうやったら戻ってくれるろう。」とさわぎよった。

ちょうどその頃雨が降り始めた。雨は毎日降り続き、次第に滝のような雨になった。そして急に山が崩れて、十二戸はアッと言う間もなく八ヶ内川に押し流されて生き残った人はいなかった。

反対に、南越村は五戸しかなかったのに、方々から人が来て二十三戸になりにぎわった。

そして、それはそれは盛大な蛇神様祭りをしておった。

 

そんなことが百年余り続いたある年、「どうも近頃蛇神様が見えんようになったが、どう言うもんじゃろう。大夫さんに見てもらおう。」と言うことになり、毎日毎日笛や太鼓で蛇神様迎えの祭りをしたが、帰って来てはくれざった。

それから間もなく、大崩れがしたり、伝染病で家が絶えたりして、昔の五戸に戻ってしもうた。

それから久しいことたってから、蛇神様は汗見川へ移ったことが分かった。

そういうことは、地元の人は気付いてない風であったが、石ころだらけで人の住める所ではなかった沢ヶ内に人が来て住みだし、やがて店もでき大きい集落となったそうじゃ。

 

和田輝喜(「土佐町の民話」より)

 

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私の一冊

仙田聡美

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「でんしゃはうたう」 三宮 麻由子  (著),‎ みねお みつ (イラスト) 福音館書店

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私の一冊

山崎幸子

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「アンジュール―ある犬の物語」 ガブリエル バンサン ブックローン出版

土佐町の山崎幸子さんが紹介してくれた一冊は、ガブリエル・バンサン作「アンジュール」。

この本は鉛筆の線のみで描かれ文字はありません。
飼い主に捨てられた一匹の犬の悲しみや戸惑いを鉛筆の線だけでここまで表せるのかと驚きました。

最後にひとりの少年に出会い、お互いに少しずつ近づいて行く姿にいつもぐっときます。

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私の一冊

鳥山百合子

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「せいめいのれきし」 バージニア・リー・バートン (著, イラスト),‎ まなべ まこと (監修),‎ いしい ももこ (翻訳) 岩波書店

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うれしいお知らせです。

パクチー銀行土佐町支店が経営破綻したのが11月2日のこと。

[ニュース]パクチー銀行土佐町支店が破綻しました。

 

資本であるパクチーの種が気づいたら枯渇していたのが原因です。困っていたところ、去る11月6日に土佐町を訪問したパクチー銀行頭取・佐谷恭氏の手によって新たな資本が届けられました。

今回の追加資本によって、土佐町のみなさまがたくさんパクチーを栽培し、採れた種の一部を返却してもらえると、パクチー銀行はその循環によって半永久的に運営が可能になります。そうなるといいなあ。

 

 

 パクチー銀行土佐町支店 が経営再開。ー土佐町本部

土佐町新聞十一月二日号 に破綻を報道したパクチー 銀行土佐町支店が、破綻を 乗り越え十一月二十一日より 運営を再開する見通しであ ることを関係者が明かした。

パクチー銀行土佐町支店 はそのずさんな経営により、 十月後半から資本の枯渇による運営停止を余儀なくさ れていた。再開するために はパクチーの種を用意する ことが必須だったが、十一 月六日に土佐町を訪れた佐谷恭パクチー銀行頭取により資本注入を受けることが 可能となった。

同頭取は「開設二ヶ月で破綻を迎えた土佐町には、パクチーが広 がる可能性が眠っている」と今回の破綻騒動をポジ ティブに捉えている。

土佐町支店によると、前回 の報道の直後から、頭取の他に安曇野支店、佐渡支店、ひばりヶ丘支店などからも資本注入の申し入れがあったとのこと。

土佐町支店長 の石川拓也氏は「やっぱり 親切な人が資本を持って来 てくれた。待っててよかっ た」と述べ、あくまで他力本願なその姿勢には今後批判が集まりそうだ。融資希望者の一人は「支店長は相変わらず他力本願だが、パ クチー栽培は挑戦してみた い。資本が届いてありがたい」と複雑な感情であることが伺える。また別の希望 者は「全国の支店が進んで シェアして助けてくれよう とする姿勢はパクチー銀行の面白いところ。だが土佐 町支店のずさんな体質はな かなか治らないのではないか」と疑問を呈した。

土佐町新聞は支店長に対し て文書で正式に回答を求め たが、期限直前に「ひとやすみひとやすみ」と謎の回答が届いたのみだった。

 

紙面にもありますが、11月2日付土佐町新聞の一報の直後、パクチー銀行本部の他にも他支店の方々から資本注入の打診がありました。安曇野支店、佐渡支店、ひばりヶ丘支店などなど。

パクチー銀行のように、自然の力を拝借して資本(パクチーの種)を増やしていくという活動は、「シェアする」という意識と直結していると実感した次第です。この感じ、ちょうどよく「所有意識」と距離を置いている感じがおもしろいのですが、実はこの感覚は土佐町に住んでいると馴染みのあるもの。果物や野菜などを「置いといても腐るだけやき」と手渡してくれる感覚と同じですね。

なにはともあれ、打診いただいた他支店長のみなさまにはこの場を借りて御礼申し上げます。次回の破綻の時には宜しくお願い致します。

土佐町支店は、いつか採れたパクチーの種を返済に回してくれる方が現れるときをゆっくり待つことにします。ひとやすみひとやすみ。

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私の一冊

仙田聡美

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「きょうはなんのひ?」 瀬田貞二 (著),‎ 林明子 (イラスト) 福音館書店

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