土佐町ストーリーズ

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ミッキィとテイジ

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土佐町で、カラオケボックスといえば田井の上村商店の横にある『すたあふるうつ』。

でも私が子どもの頃は、同じく田井にあるスーパー、末広ショッピングセンターの隣にサンライズというレストランがあって、

その横にもカラオケボックスがありました。

今ではレストランとカラオケボックスはなくなってオンベリーコというイタリアンレストランになっています。

 

 

小学校の頃、同級生とその保護者で、よく一緒にカラオケに行きました。

 

同級生のお父さんに “ミッキィ” と “テイジくん” がいます。

この ”ミッキィ” のイントネーションは、千葉県にある某ネズミの国のネズミの呼び方とは

また違ったイントネーションなのですが、それはそれとして。

 

この “ミッキィ” 、良く言えば個性的な歌声。

悪く言うと音痴でした。

ごめんねミッキィ。

 

その “ミッキィ” と “テイジくん” が2人で歌う定番の曲がありました。

 

山本コウタローとウイークエンドの『岬めぐり』。

 

2人は普通に歌っているつもりです。

でも、見事にハモるのです(笑)

奇跡のコラボレーション。

子ども達はもう大爆笑。

 

今では一緒にカラオケに行くことなんてなくなってしまったけれど、

また久々に聞きたい、2人の『岬めぐり』。

 

 

文:和田亜美 絵:川原将太

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化粧地蔵(土居)

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「ワシらぁが子どもの頃にはもうあった。誰が置いたのか、どうして置いたのか・・・」

 

土佐町役場の駐車場の片隅にひっそりと佇むお堂があります。

その中には一体のお地蔵さん。

そのお地蔵さんは、顔と手が白く、体は全体的に緑色で袴の部分が黄色。

白い顔には、黒いラインで目と瞼と口が描かれています。

そのお地蔵さんは化粧地蔵と呼ばれています。

最初に「化粧地蔵っちゅうのがあるんじゃ」と聞いた時は、いわゆる女性がするお化粧を想像したけれど

そうではなく、全体的に色が塗られている、そんなお地蔵さん。

 

「お四国巡拝みたいなことをして回りよった人、といういわれがあるけんど定かじゃないねぇ」

そう教えてくれたのは和田富雄さん。土居に住む80歳。

両サイドにも石像があり、こちらは欠けたり頭がなかったり。

 

「ワシらぁが子どもの頃にはもうあった。誰が置いたのか、どうして置いたのか・・・」

「お正月とお彼岸にはお大師様と一緒にお祭りするねぇ。お膳とお茶を用意して」

「地域を守ってくれゆうお礼にね」

お大師様と阿弥陀如来が、化粧地蔵が祀られているお堂の裏側に置かれています。

 

そのお堂の中には、昭和62年にこの化粧地蔵のことを取材した高知新聞の記事が

切り抜かれてクリアファイルに入った状態で置かれていました。

その記事は、喫茶「みなみ」の主人である和田裕吉さん(当時43歳)に聞いた話でした。

この化粧地蔵は、九州の山伏がここへ来て行き倒れになったものをお祀りしたものだと言われているとのこと。

もとは濡れ仏だったものを裕吉さんのお母さんが小さなお堂を作って安置されたとのことです。

 

この記事が書かれる数年前、裕吉さんが夜中にふっと目を覚ますと、

お風呂場に煙がもうもうと立ち込めているのを発見。

朝まで寝ていたら火事になるところだったけれど、目が覚めたのはお地蔵さまが助けてくれたのだ。

そう思ってそれ以来毎月十日と二十日にはお菓子を供えてお参りしていたそうです。

 

今でも、工事などでここを通る、という時などは建設会社の社長さんがお供えをしてお参りし、

「ちょっと通らせてください」とお願いするとのこと。

 

 

文:和田亜美 絵:川原将太

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疫病院の足切れだぬき(上野)

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上野の前の保育所のあった所はむかしは、疫病院と言うて伝染病にかかった人を隔離する病院があった。

そこに足切だぬきと言うて片足の切れた大きいたぬきがおった。

そのたぬきはとにかく人を困らす悪さが好きで、人にとりついては目まいをさせたり、熱をださせたり、命をとったりはせざったけんど人を困らしよった。

そこの近くの道は歩くとカラーン、カラーンと下が空洞になっちゅうような音がしよった。

またそこの近くを夜歩きよったら、ガサガサ言うんでこりゃおかしいと気がつくと、いつの間にか藪を歩きゆう、そんでまたちょっと行くと、ザブザブ言うんでおかしいと思えば、川を歩きゆうと言うようにようだまされるもんよ。

こんなたぬきは、樺のたつ瀬や駒野の上のもちが渕にもおったと言うことじゃ。

 

川村岩亀(「土佐町の民話」より)

絵:川原将太

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いいだこ売り(土居)

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昔、伊予(現在の愛媛県)の寒川から猿田峠を越して、瀬戸内からたこ売りが来ていました。

 

あるいいだこ売りが、森のかまち(水路)のふち(近く)を通りかかった時、草刈鎌をごしごしとぎゆう豊年さんに、

「兄さん地蔵寺へは何どき(時間がどれくらい)かかろかいの」と聞きました。

豊年さんは、ジロリッと見ただけで物を言わんと。

アリャこの人おかしいと思ったたこ売りは

「これはしたり」

と言うと、かまちぶちをかみへだいぶ歩いたと。

そしたらその足を見て豊年さんが草刈鎌をとぐのをやめて大声で

「たこ売りのおんちゃん!その足なら一とき半ッ(三時間)」

と言うたそうな。

和田久勝(館報)ー「土佐町の民話」より

絵:川原将太

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稲叢山(黒丸)

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稲叢山には稲ににた草がはえるのでその名がついたと言われる。

この草は神々の食物で、一般の人々が刈り取ることをきらっていた。

ある年のこと、栗ノ木村(現在の栗木)の太郎平と言う人が、稲叢山のこの草を刈り取ろうと山に入り鎌をかけようとした。

するとすぐに、地響きがし、暗闇となって、大きな老翁(年とった男)が現れ、太郎平の鎌を取りあげ

「これは神々のお食べになるもので、お前たちの食べるものではない。もう決してこの山に来るでないぞ。」

と言って去って行った。

太郎平はやっとの思いで家に逃げ帰った。帰ったものの大事な鎌を取られて、百姓仕事もできない。

困り果てた太郎平は山の神にお願いしたところ、大杉の上にあの老翁が現れ鎌を落としてくれた。

それからこの山を鎌取山と名づけて、祭り始めたと言う。

この話は、山の神が老翁になって現れたと言う伝説である。

 

稲叢山を含めた山は”一の谷山”と呼ばれ、古来七里回りの大深山とされ、不入山(いらずやま)の霊山であった。

もし山に入る時には、三日七日の精進(修行にはげむ)で身を清めなければならなかった。

殺生人(狩りをする人)も精進せずに踏み入ると、昼間と言えどもたちまち暗雲垂れ、風雨が激しくなり猟ができない。

それで山を出ると、一瞬にして晴天白日になると言うような、さまざまな怪異が生じたと言われている。

また、土佐町の山々では、まずこの山から日が当り始めるので、「日の出山」、「朝日山」とも呼ぶことがあると言い伝えられている。

 

町史(「土佐町の民話」より)

 

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オハル淵とモチガ淵

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昔、自分が子どもだった頃は、友達と連れ立って川へ遊びにいったものだけど、

今自分が親になってみると、子どもだけで川へ行かせるのはとても不安。

そんな話をしていたら、町長登場。

土佐町長 和田 守也。昭和31年生まれ。

 

 

『相川には“オハル淵”っちゅうところがあってにゃあ、そこでは泳がれんと

親からキツう言われちょったんじゃ。』

 

『相川口からアラカシの坂を少し上ったら左手の川に大きな岩があるがにゃあ、

その辺を“オハル淵”っていうがよ』

 

『“オハル”という人が溺れて亡くなったき、泳がれんと言われよったがにゃあ。

本当かどうか知らんけど。』

 

『床鍋のカーブの辺も、“モチガ淵”とゆうて、泳がれんと言われよった。

こっちは餅を背負うて歩きよって、足を滑らせて亡くなった人がおるき

“モチガ淵”とゆうらしいけど、そんな話あるかにゃあ(笑)』

 

適当か!

 

でも、昔の人達は、そうやって子ども達を危険なところに行かせないように

していたんだろうなぁ。

そういう言い伝えをたくさん教えてくれる。

町長の話は尽きない。

 

文:和田亜美 絵:川原将太

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きのこ雲の記憶

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澤田千恵野さん(昭和2年生まれ。91歳)に、戦争中のお話を伺いました。

 

まあけんどね、人生というものはね、いろいろありましたぞね。わたしたちの人生は。

18歳の時から2年間、挺身隊で、長崎の川棚(かわたな)海軍工廠へ行っとったが。

大川村から6名呼び出されて、6人一緒に行った。男の人は徴用で、女は挺身隊。

 

私は、魚雷よね、後方魚雷を組み立てたりね。魚雷のいろいろな部品を組み立てる。

その工場で組み立てて仕上がったものは、試験場で試験しよりました。

大きな建物の中からその航空魚雷を飛行機に積んでいって、落とすがですよね。

試験に行ったこともあります。

敵の軍艦を目指して落とすような兵器でした。

仕上げ工場の最後のはしの方で、航空魚雷の心臓部を私は受け持ってね。それが私の仕事。

航空魚雷の心臓部の「しんどき」という、人間でいうと心臓のところ。

 

原子爆弾も見たしね、この目で。

私がいたのは長崎の市内でなかったですけどね、長崎の原爆が落ちた時は、この目ではっきり見てね。

 

「空襲警報ーー!総員退避ーー!!」と言ってね、みんな防空壕に入ったの。

私がおった工場は海岸ぶちで、離れたところに防空壕があったき、防空壕へ入ることができなくって、原子爆弾が見えた。

 

まっ黄色い、黄色い、黄色い玉が一番はじめですわね、火の玉。

そして黄色からね、赤い、赤い火の玉になる。

それからきのこ雲、もくもくもく…。
音がしました。むろんね。

一瞬。
一瞬のこと。

 

 

空襲にもおうたぞね、毎日、ほんとね。

爆弾が落ちたところをあくる日に見に行ったりしました。すごい穴になってました。

あっちもこっちも、馬がいっぱい死んでました。馬がおりましたね、あの時。

川棚はちょっと山でしたきね、兵隊さんが馬を飼ってたんじゃないでしょうかね。

馬が何頭も爆弾の破片でやられてね。

 

(地元に)帰ってくるのは帰ってきたんですけど、原爆症ではないと思うけど、みんな年がいってほとんどの人たちが亡くなってね。残っているのは私ぐらい。

 

魚雷をつくっている時、もうそれこそ18歳、19歳くらいの娘ですきね、まだほんとね、こどものように思ったけどね。

いろいろあったんです。今考えてみたらね。

 

 

澤田千恵野 (高須)

 

 

 

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夏の思い出

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30年くらい前、保健福祉センターが建っているところには公民館がありました。

当時小学生だった私。

ある夏のこと。

公民館の横の木だったか、電柱だったかにとまっているセミを見つけたのです。

虫取り網を持っていなかった私は、何を思ったのでしょう、

石をぶん投げてセミを捕ろうとしたのです。

石はセミから大きく外れて、公民館の窓ガラスをぶち破りました。

(いかん!逃げようか・・・)

と思ったものの、足は動かず。

そうこうしているうちに中からおんちゃんが出てきました。

『この石、投げたのあんたかね?』

『はい・・・』

怒られるー!と思ったけれど、そのおんちゃんは

『よく正直に言うた、窓ガラスはかまんき』

と許してくれたのです。

その時の私がどれほどホッとしたか。

 

あれから30年。

あの時のおんちゃんは、町長になりました。

 

 

文:和田 亜美  絵:川原将太

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かくれんぼ

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子どもたちとかくれんぼをした。

じゃんけんですえっこが負けて鬼になった。さあ、どこへかくれよう?

 

「いーちー、にーい、しゃーん、しーい、ごーー・・・。」

遠くから数を数える声が聞こえ始める。

「もーいーかーーい?」。

 

 

私は薪ストーブのある部屋の窓を開けた。開けるとそこはもう外で、足元には薪棚がある。薪棚の上には割った竹を並べて屋根のようにしてあるからその上に乗れるのだ。

うん、ここがいい。

私はそこにそっと乗って、しゃがんで隠れた。ちょっとぎしぎしいっているけど、まあ大丈夫だろう。
窓を閉めると、すえっこの声は聞こえなくなった。

いい場所を見つけた。

 

きっとなかなか見つけられないだろうなと思いながらしゃがんでいると、風が吹いてきた。
思わず顔をあげると、目の前には今年の新しい葉をつけたイチョウの木が枝を揺らしていた。
鶏小屋の隣に植えたイチジクの木は、いつのまにか大きくなっていた葉がわさわさと揺れ、今年の実までつけていた。
目の前には雑草がぐんと伸びている。草刈りをしないといけない。

新緑の季節を迎え、半袖でもいい日が増えてきたなあと思ってはいたけれど、もうこんなに季節が移り変わっていたのか、としばらくぼんやりと目の前の風景を眺めていた。

すると遠くに見える山々の向こうから、むん、としたにおいが運ばれてきた。
あ、これはどんぐりの木の花のにおい。

土佐町のカフェ「かのん」のお父さんがこの前教えてくれた。この風のことを「薫風(くんぷう)」というんだよ、と。

「五月の風は季節のかおりを運んで来るんだ」。
その言葉はとても心に残っていた。

現実の世界と言葉が結びつくというのは、きっとこういうことをいうのだろう。

 

「どこにいるのーー?!」

すえっこの声が家の中から聞こえてきて我に返った。近くにいる。
そうやった、かくれんぼをしてたんやった。

そろそろ姿を現してあげようかなと、ドンドンドン!と外から窓をたたくと、「え?どこ?どこ?」と驚いている声がして笑ってしまう。

「え?ここ?こんなとこ?」と息子の声もする。
きっと長い間私が見つからないのを見て、一緒に探し始めたのだろう。ふたりが窓の方を見ている感じが伝わって来る。

私も外からガラス越しに中をのぞき込む。ふたりと目が合った。
ふたりの顔が何だか引きつっている。

ガラガラと窓を開けてあらためてふたりを見ると、ぱああっと笑顔になった。

「なんだ!母さんか!どっかのおっさんかと思ったよ!!」と息子。

窓ガラスの向こうに見えた私の顔は「おっさん」だったらしい。

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レモンとさくらんぼとびわ

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「宅急便ですー。」

職場に小包が届いた。今まで職場に届いたことがなかったから、誰からやろう?と思いながら受け取った。
先日愛媛県に引越しをした友人からだった。

開けてみると、箱いっぱいのレモン!大きいのも小さいのもごろごろとたくさん。

わあ!これで何を作ろうか?
まずレモンピール。塩レモン。レモンチーズケーキもレモンのマフィンもいいな。
その場にいた友人たちにおすそ分けした。

 

しばらくすると、土佐町の友人から電話がかかってきた。「川田ストアにさくらんぼが届いているはずだから、寄って分けてもらってね。」
そのさくらんぼは、この前土佐町に来た山形県出身の人から送られてきたのだという。

今度はさくらんぼ!

 

川田ストアに行くとお母さんが、冷蔵庫からさくらんぼの箱を出してくれて分けてくれた。お礼にレモンをいくつかおすそ分け。

お母さんが言った。

「レモン!ちょうど買いに行こうかと思ってたところ。びわがたくさんあるから、ジャムを作ろうと思ってたの。」

びわのジャム!
私の家にも近所のおじいちゃんからいただいたびわがたくさんある。私もジャムを作ろう。

お母さんに作り方を聞いた。
「皮をむいて、中の種をとって、小さく切って、砂糖とレモンを入れる。」

 

夕ごはんの片付けの合間にジャムを作った。
レモンを半分に切って絞ると、本当にいい香り。

何度もくんくん鼻を近づけたら鼻にくっついちゃって、それからしばらくずっとレモンの香りが近くにあって何だかうれしかった。

 

ホーローの鍋にびわと砂糖とレモン汁を入れコトコト煮始めると甘ずっぱい香りでいっぱいに。

子どもたちが「いい匂いやね〜。ちょっと食べさせて」と味見。

ビンに4つ分できた。

近所のおじいちゃんにおすそ分けしよう。お友達にもあげよう。

 

なんだか全部つながっている。
めぐりめぐるおもしろさ。どの出来事も愛おしい。

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