「岡潔 数学を志す人に」 岡潔 平凡社
科学的愉快にも数学的自由にも全く興味はなく、もちろん数学を志すなんて露とも考えたことはありません。わたしには一番縁遠い本だなあと思っていたのですが、いろんな偶然が重なって「読まねばなるまい」と意を決して手にとりました。
ところが意外や意外、面白いのです。共感することが多々あって、さくさくと読める読める。あまりに面白くて我ながら不思議だったのですが、数学する、を文学するや思考する、に脳内変換して読んでいるからだとハタと気がついて納得した次第。
「数学の研究を知的にやり、あるいは意志的にやる人はいるが、まだ感情的にやるところまではいっていない」とか「数学は起きている間だけやっているのではない。眠っている間に準備され、目ざめてから意識に呼出し、書き進めているような気がする」などなど。
岡潔は数学者ですから「数学」になるけれど、音楽家や画家、あるいは一般人である私にも、それぞれが生きるうえで大切にしているものがあり、それに置きなおせる普遍的なものについて、数学者らしい知的な語り口で綴られています。