「ぶきっちょアンナのおくりもの」 ジーン・リトル作 田崎眞喜子訳 福武書店
年明けに、懐かしい本を読み返してみました。やはり良いなあ、好きだなあと、幸せな読書初めでした。それがこの「ぶきっちょアンナのおくりもの」。
アンナは五人兄姉の末っ子です。 アンナ以外の家族はみんな美しい容姿と手先の器用さに恵まれています。それにひきかえアンナだけが、ずんぐりとしていて不器用でした。そのうえアンナは、小学校二年生になってもまだ字が読めませんでした。兄姉たちはアンナをばかにして相手にしてくれません。母親もアンナの鈍い動作にいつもイライラしていました。そんなアンナの唯一の理解者は父親でした。
時は第二次世界大戦間近、ナチスが台頭してきたドイツに住み続けることに不安を抱いた父親はカナダに移住する決断をします。カナダに移住してすぐに受けた健康診断で、アンナはひどい弱視だったことがわかります。 眼鏡をかけた瞬間からアンナの世界は一変します。けれども内気なアンナは大好きな父親にさえ、自分の世界がどんなに変わったかをうまく伝えることができません。家族にとって、アンナはやはり“ぶきっちょアンナ”のままでした。
その一方で、視覚障がい者のクラスに通い始めたアンナは、自分にもいろいろなことができることを知ります。あるがままのアンナを受け入れてくれるクラスメイトたち。アンナは少しずつ自分に自信を持ち始めます。
自分の家族という小さな社会での評価がすべてだと子どもは思いがちです。けれども違う社会、違う視点を持つことで世界は広がり、なんて生きやすくなることでしょう。いえ、これは子どもに限ったことではないですね。大人だって同じこと。自分の属する小さな社会がすべてだと思い、その評価に翻弄されてしまいがちです。壁にぶつかったらアンナのことを思い出すことにいたしましょう。