季節は冬本番。今シーズンも長野県に住む搾り師・トキさん宅にお邪魔して、自分の醤油を搾りに行ってきた。
軽トラの荷台に醪や樽などの道具、お土産などを積み込んで、信州方面に向け出発。前回から約10ヶ月ぶり、今回はどんな醤油が搾れるだろう、向こうの天気はどうかな、搾り作業の流れを覚えているかな、などと道中考えながら運転、休み休みしながら10時間ほど掛けて到着した。
トキさんとその家族は、相変わらず元気に暮らしていた。手づくりのかまどが新調されていたり、五右衛門風呂小屋が完成していたりと、変化もあった。農を暮らしの中心とした彼らの暮らしは学びが多く、毎回行くのを楽しみにしている。お互いの近況を報告しつつ、翌日の搾りの打ち合わせをする。
出来上がった醪は、年ごと、場所ごとに様子が異なる。その状態を読み取り、美味しさを可能な限り引き出し、保存性も高く保つには、熟練した技術と知識や想像力が欠かせない。醪に加える水の量を加減し、何度も味見をしてから搾りはじめる。櫂(ふね)と呼ばれる搾り器から出てきた醤油に濃度を測るボーメ計を浮かべて数値を確認、稀ではあるが、必要な場合は塩を足す。僕ひとりの判断では難しい場面もあったが、要所要所で彼に的確なアドバイスしてもらって、搾りを進めた。
ひと樽搾るのに半日以上掛かり、その間はずっと集中。作業が終了すると、緊張が切れるのか、ドッと疲れる。多いときは日に三回搾るというから、搾り師はいやはや大変な職業だと実感する。
どんな醤油になるかと心配したが、トキさんから「うん、美味しくできたね」と言ってもらってホッとした。
数日間の滞在の間に、他グループの搾りを見せていただいたり、子育てや暮らしのことなど話ししたりして、良い時間を過ごすことができた。一緒に連れてきた長男も、一家に温かく迎えられて、いろんな経験をしたようだった。冬は搾りのシーズンで忙しい時期なのに、毎年日程を空けてくれる井上さんとその家族に感謝。
最終日、今度は搾りたての醤油とその搾りかすを載せて、高知方面に向かってコトコトと車を走らせた。
写真:お湯で溶いた醪を袋に入れ、圧を掛けると、搾り器の口から醤油が出てくる。火入れする前の生醤油だ。周りに醤油の良い匂いが漂う。