この日は午後から雨予報だった。
西の空から灰色の雲が近づくと、湿度が上がりはじめて、ひんやりとした風の中に雨を感じる。
カエルたちがケロケロと鳴きはじめる。
彼らの鳴き声雨予報はかなりの精度なので、聞き逃してはいけない。
「そろそろだな」とお昼ご飯もそこそこに、洗濯物や日干ししてあるものを家の中に取り込んでいると、そのうちにポツポツと来た。
雨が降ると、いろんな匂いが漂ってくる。
水の匂い 山の匂い 土の匂い それから、アスファルトの匂い
仕事の手を休め、深呼吸をひとつして、雨の音に耳を傾ける。
頭の中で、予定していた作業を雨仕様に組み立て直す。
降りはじめのシンプルな雨音が徐々に重なり合い、本降りになってきた。
雨が落ちる音に混じって、別の音がする。何が鳴っているのか考える。
「あ、アレ仕舞い忘れてる」と気が付いて、片付けに走る。
残念ながら雨読晴耕とはいかなくて、雨の日には雨の日の作業がある。でも、雨の音をBGMに普段後回しになりがちなことをするのは良い気分転換だ。
大雨が続くと、山水のパイプが詰まったり、崖が崩れたりして、大ごと(大変なこと)になることがあるので困るけれど、適度の雨は、ひとにも田畑にも心地が良い。
いつの間にか、カエルたちの鳴き声は大合唱になっていた。