「こども」 はまだまさよ(文)はたけなかちえこ(絵) 飛鳥出版室
2017年5月
山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
沢田みどり
桜蘂
5月のある日、今日の夕ごはんのおかずの一品にと近所の産直市で買った切り干し大根を水につけて出かけた。しばらくしてから帰ってくると、切り干し大根はふっくらと水を含んでボウルからはみ出しそうになっていた。
その時、ボウルの中に赤むらさき色をした細い茎のようなものがいくつも一緒に入っていることに気づいた。
何かな?と、切り干し大根を指先でかき分けながらよく見てみると、その細い茎の先には小さな花のようなものがついていた。
ああ、そうやったのか。
これは、いつも桜が散った後に落ちてくる。
新緑の季節から桜の季節へと、頭の中が一気に巻き戻された。
この大根は冬に作られたものではなく春大根で、春の太陽の下で干されたものやった。
きっとこの大根を干した場所のそばには桜の木があったんや。
春の光のなかで風に吹かれながら桜の花びらがちらちらと散り落ちた場所に、千切りされた大根が干されている情景が目の前に見えるようだった。
調べてみると、そのものにはちゃんと名前があった。
「桜蘂(さくらしべ)」。
桜の花が散ったあと、萼(がく)に残った蘂(しべ)が散って落ちることを「桜蘂降る(さくらしべふる)」というのだそうだ。俳句の季語にもなっていた。
桜の花が散ったあとに葉桜の季節が始まると思っていたが、その間にもうひとつ「桜蘂降る」季節があったのだ。
この切り干し大根を作った人に会いたい。
もしその人に会えたら、言いたいことがある。
ひとつ目。「あなたが作った切り干し大根はとても美味しかったです。」
ふたつ目。「あなたの家のそばに桜の木はありますか?」
キネマ土佐町 冬
町内では2017年3月に公開した「冬編」
高知県のイメージは冬も暖かい南国のイメージですが、土佐町のある嶺北地方はひと味違います。
山深く雪の多い土佐町の冬。そこには凍りつくような美しい暮らしがあります。
音楽はヨーロッパの様々なミュージシャンが集まった混成バンド、Macfeck。
ヨーロッパの伝統的な民族音楽を奏でるこのバンドの曲”Shlofn”は、高地ドイツ語とヘブライ語が混ざり合った方言である「イディッシュ語」の古い子守唄です。
イディッシュ語はいわゆる「失われゆく言語」
戦争で多くのドイツ系ユダヤ人が迫害され殺害されたために、現代では話せる人が極端に少なくなってしまった言葉です。