2019年9月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「おさるとぼうしうり」 エズフィール・スロボドキーナ作・絵 福音館書店

「ぼうし、ぼうし、ひとつ50えん!」

頭に帽子をいくつも積み重ねてかぶり、町から町へ帽子を売り歩くちょっと気取った行商人のこのセリフを、どんな風に読むかが腕の見せどころです(少し大きい子は「50円!安い!」と合いの手を入れてきます)。

行商人はたくさん歩いて疲れたため、大きな木の下で帽子をかぶったまま昼寝をし、あ〜よく眠った!と起きたら、さあ大変。頭の帽子が全部なくなっていたのです。

さて、誰の仕業だったのか?答えは、ぜひこの本を読んでもらえたらと思います。

作者のエズフィール・スロボドキーナさんのユーモアセンス、絵や色の美しさ、この本が1970年に出版されてからずっと愛され続けてきた理由がわかるような気がします。

幼稚園や保育園で働いていた時、子どもたちは本棚に並んでいたこの本を「読んで!」と何度も持って来ました。読み終わると満足げな顔をして笑っていた子どもたちの顔が、今でも心に浮かびます。

鳥山百合子

 

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とさちょうものづくり

トキワ苑ポロシャツ作りました!

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「生涯、自分らしく」

 

土佐町にはトキワ苑という特別養護老人ホームがあります。

「生涯、自分らしく」をモットーに、約80名の利用者さんが日々この施設で過ごしています。

高齢化が著しい、土佐町のような中山間の町にとってとても重要な役割を担っている施設です。

 

そのトキワ苑から、「スタッフが仕事中に着るポロシャツを作りたい!」とご相談を受けました。

実は昨年も同様のご相談を受け、とさちょうものがたりが製作していた下田昌克さんの絵柄のポロシャツをお買い上げいただいたという経緯がありました。

それでは今年はトキワ苑オリジナルの絵柄を作成してみてはいかがでしょう?とご提案したところ、少し時間を置いてから、下のようなイラストが編集部の元に届いたのでした。

すごい!

 

 

編集部では、なんとなく施設の職員さんで、絵の得意な方が描かれるのかな?と想像していたところ、実際に描いたのは施設の利用者である81歳のおばあちゃん。

絵を描くのが好きで、今でもよく絵筆を持つそうです。今回描いてくれたのは土佐町でもよく目にするアジサイの花でした。

 

 

 

上がイメージ図。背中一面にアジサイが咲いている絵は手の温もりを感じます。意外な迫力もありますね。

左胸にはトキワ苑の施設名とともにモットーである「生涯、自分らしく」。

 

 

全部を仕上げてからお届けに伺いました。

真ん中のおばあちゃんが絵を描いてくれた小川和子さん。左がトキワ苑の職員の古谷さん。後ろと右の2人が印刷を担当したどんぐりのきほちゃんと寿光くん。

 

 

とさちょうものがたりのシルクスクリーン事業のスタートは、「地域で自分たちで作れるものは自分たちで作った方が良いのではないか?」という疑問からでした。

それは都会の業者さんにお願いした場合には地域外に流れていくお金を、自分たちで作ることで地域外に逃がさないようにするということ。

そうしてできた仕事に、仕事を必要としている地域の人が取り組み実現させていくということ。

さらにこういった仕事のひとつひとつを、たとえ不器用でも着実に完遂していくことで、仕事をする人々ばかりか、仕事をお願いしてくれる地域の人々にも、その経験値が蓄積されていくということ。

そしてそうした経験を積み上げるほどに、関わってくれる地域の方々との間に理解が深まっていくのを実感します。

トキワ苑のみなさまには、今回とても良い機会をいただきました。スタッフ一同心からの感謝をお伝えします。ありがとうございました!

 

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私の一冊

西野内小代

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「現代語訳 論語と算盤」 渋沢栄一 筑摩書房

数年後にお札の顔になる「渋沢栄一」を予習しましょう、という軽い気持ちで買った一冊です。

人間の基本姿勢は、時代によって左右されてはならないと再認識させられました。過去から学ぶ事の大切さがひしひしと伝わってきます。

東京の谷中霊園にある渋沢栄一さんと奥様のお墓が巨大なモニュメントだった事に納得しました。

西野内小代

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笹のいえ

子狸

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ある日、山道を車で走っていると、子狸に遭遇した。

減速しつつ、「タヌキがいるよ」と子どもたちに伝えると、「どこどこ!?」とフロントガラスに顔を寄せてきた。

離れたところに車を止めて、車内から静かに観察する。向こうもこちらに気づいている様子だが、逃げるわけでもない。ぎこちない動きから、怪我か病気をしているかもしれない。周りに親の姿は見えなかった。臆病そうに上目遣いでこちらをうかがっている子狸が少し気の毒になって、できるだけ迂回して、その場を離れた。

あんなに小さな狸は見たことなかったので、僕はとても得した気分になった。

猪や猿、ハクビシンに兎に山鳩など。山で野生動物を見かけるのは珍しいことではないけれど、その出会いのたびに、僕たちと彼らの暮らしがとても近くにあるのだと感じる。確かに、田畑を荒らされたり、野菜を食べられてしまったり、困ったこともある。人間も動物も生きていかなければならないわけで、どうやって共存していくのか、あれこれ考える。

そういえば、小中学生時代の僕のあだ名は「タヌキ」だったことも思い出した。

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私の一冊

鳥山百合子

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「国旗のえほん」 戸田 やすし 戸田デザイン研究室

ページを開くと世界の国々の国旗が描かれている本。お話が書いてあるわけじゃないけれど子どもたちはこの本がとても好きです。下の国名を隠して「この国旗はどこの国?」とクイズをしたり、紙を切り、国旗の模様を描きうつして旗を作ったり。

スイスやアメリカの国旗はわかりやすいけれど、ラグビーボールのような形の盾と槍が描かれている「スワジランド」、爪で丸い何かを握っているような龍が描かれている「ブータン」(調べてみると握っているように見えた何かは、「龍の爪についているのは宝石で富の象徴」なのだそうです)。

他にも「アンティグア・バーブーダ」や「セントクリストファー・ネイビス」など、長い名前の国もあります。その国を探すために地球儀とセットで楽しむのがおすすめです。

鳥山百合子

 

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私の一冊

石川拓也

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「佐々井秀嶺、インドに笑う」 白石あづさ 文藝春秋

日本人でありながら、インド仏教最高指導者として1億5千万人の信徒を率いる立場にいる佐々井秀嶺さん。2017年6月に土佐町でも講演していただいたのでご記憶の方も多いと思います。

過去、佐々井さんの生涯を描いた伝記は数冊刊行されていますが、この本は白石あづささんというライターさんが書いた、これまでの佐々井さんの本の中でおそらくもっともくだけた、等身大の本だと思います。

佐々井秀嶺さんは、約44年間日本に帰ってきていなかったのですが、最近はだいたい年に一度6月あたりに一時帰国されます。

今年も1ヶ月ほど帰国されていて、その間にたくさんの講演や法要などをされていました。沖縄での講演もあったと聞きます。

とさちょうものがたり編集部も、岡山での講演を赴き、2年ぶりの佐々井さんとの再会を果たしました。

 

佐々井秀嶺さんのこと

 

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土佐町ストーリーズ

くせ地(黒丸)

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芥川から黒丸へ越す所の畝が丸山じゃが、その東に川を渡って行ったところにハヨがハエ言う所(く)がある。

以前は伐畑農業いうて、山を焼いては畑にして稗など作りよった。

その山を焼くに、人が中で火をつけよるに、そのまわりにずっと火をつけまわして、「早よう出え、早よう出え」と呼びまくって焼き殺したという。

そんでハヨがハエいうてここを耕すと祟りがあると言いよったが、今は植林になっちょります。

町史

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土佐町ストーリーズ

高須の地名と河内神社(高須)

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高須の北浦という所に大きな榎(えのき)があって、それに鷹が巣をこしらえちょった。

そして近くの家の子どもをさらっていくので、始末せんならんことになった。

狩人じゃったら祟りがないということで、狩人を連れてきた。鉄砲か弓じゃったかは知らんが、射たれた鷹は飛んでいって河内神社の坪(庭)に落ちた。

榎はそのままにしておいたらまた巣をこしらえてはいかんということで切ることになり、祟りがあってはということで、その榎から御神体をつくるからと神様にお断りの祈祷をして伐り倒したそうな。伐ったあとは田になっちょるが、京都の仏師に頼んで八体の神像を刻んでもろうたそうな。

町史

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メディアとお手紙

『土佐町の記憶 ウェブ連載』 高知新聞に掲載されました!

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2019年8月22日、高知新聞に掲載されました。とさちょうものがたりの連載「山峡のおぼろ」を執筆してくださっている窪内隆起さんの記事です。「山峡のおぼろ」のうちの20話をまとめた「とさちょうものがたりZINE04」について、高知新聞嶺北支局の森本敦士さんが書いてくださいました。ありがとうございます。

この記事が掲載された22日の午後、窪内さんが連絡をくださいました。「この新聞記事を読んだたくさんの知人・友人が、朝から次々と電話をかけてきてくれた」、と。

窪内さんが記した記憶が、多くの人に届きますようにと願っています。

 

土佐町の記憶 ウェブ連載  87歳幼少期の苦楽つづる
司馬遼太郎さんの元編集者 窪内さん(高知市)

【嶺北】土佐郡土佐町出身で、産経新聞記者時代に作家の司馬遼太郎さんの担当編集者を務めた窪内隆起さん(87) = 高知市一ツ橋町=  が、ウェブサイトに古里の思い出を連載している。山川での遊び、銃後の生活…。平易で温かみのある筆致から、貧しくとも自然と人の絆で満ちた山あいの暮らしが浮かぶ。

窪内さんは1955年に産経新聞大阪本社入り。65年に文化部に配属され、同紙で「竜馬がゆく」を連載中だった司馬さんの担当となった。続けて「坂の上の雲」が始まったが、窪内さんは父親の大けがを機に69年に退職し帰郷。その後も96年に司馬さんが亡くなるまで交流は続いた。

ウェブサイトは土佐町の魅力を発信するプロジェクト「とさちょうものがたり」。同町在住の写真家、石川拓也さん(45 )ら編集部が昨秋、窪内さんに執筆を依頼した。

戦前を知る人が減っていくことを案じていた窪内さんも快諾。「山峡のおぼろ」と題して昨年11月から連載しており、編集部はこのほど、20話分をまとめたA4版、48ページの冊子「ZINE04」も発行した。

これまでの各話は、窪内さんが12歳まで過ごした土佐町西石原(旧地蔵寺村)での出来事が中心。初めてアメゴを釣った「モリタカ渕」、飢饉食の彼岸花団子を作ってくれた「おゆうばあちゃん」などは克明な記憶で、当時の情景を生き生きと伝える。出兵先で死を覚悟した父親から送られてきた爪と毛髪を見た時の思い、家族の取り乱す様子など、生々しい戦争の影もつづった。

窪内さんは執筆中、産経新聞退職の際に司馬さんから贈られた色紙の言葉「婉なる哉故山 独坐して宇宙を談ず」が頭から離れなかったそう。故山は古里、宇宙は世間の意味で、司馬さんは「美しい古里でいろんなことをゆっくり考えたらいい」と話したという。

連載について窪内さんは、「戦争による日本の大きな悲劇、苦しい時代が忘れられていく気がしていた。文字に残すことが大事だと思った」。全40話の予定で、今後も随時掲載していく。

「ZINE04」は土佐町内などで無料配布しているほか、高知市の金高堂などで1部600円(税別)で販売もしている。

(森本敦士)

 

 

*「とさちょうものがたりZINE04」についての記事はこちらです。

 

Zine 04号を発行しました!

 

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私の一冊

西野内小代

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「保育園義務教育化」 古市憲寿 小学館

異質な意見を述べる、少し意固地なコメンテーターという印象しかない著者の穏やかな雰囲気の表紙に驚き、内容が気になり読んでみました。

テレビではなかなか発信してない知識人としての一面を感じさせてくれました。確かなデータを根拠に子供の成長そして日本の経済を論じています。

保育園へ小さな子供を預ける罪悪感、母親の愛情の多寡のみに後々の人生がゆだねられているかのようなプレッシャーから快く解放させてくれます。

西野内小代

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