2023年6月27日、土佐町の藤田千春さんが新築する家の地鎮祭が行われました。
地鎮祭は、建物の新築や土木工事の起工の際などにその土地の神様を祀り、工事が安全に進んで無事に完了すること、土地や建造物が末長く安全であることを祈願するために行われるお祭りです。
敷地内に立てたテントの四方に竹を立て、しめ縄で囲みます。神様に来ていただく神聖な場、神域を作るためです。
降神の儀(こうしんのぎ)
神主は白髪神社の宮司である宮元序定さん。参列者は施主の藤田千春さんと大工の森岡拓実さんです。
施主の千春さんは、拓実さんが大工になったばかりの頃から、自分の家を建てる時が来たら拓実さんにお願いしたいと思ってきたとのこと。それがいよいよ実現するという訳です。
祭段に神様をお招きするための「降神の儀(こうしんのぎ)」。
宮元さんが地鎮祭の神様について教えてくれました。この神様たちにこの家の完成を見守ってもらえるように、そして大工さんの安全と施主さんが安心して暮らせるように祈願するそうです。
○白髪の神…氏神様
○大地主(おおことぬし)の神…大地の神様
○家船二柱(やふねふたはしら)の神 …夫婦神で家屋の神
○手置帆意(ておきほおい)の神…技術の神
宮元さんが太い声でゆっくりと「お〜 お〜 お〜」と唱えます。静寂の中に響く声。神様の存在を感じるひとときです。
祭段には、お米や御神酒、昆布や野菜やお菓子などが供えられています。
四方祓い(しほうはらい)
鬼門と言われる敷地の北東から右回りに、四方を順番に祓います。「四方祓い(しほうはらい)」といいます。鬼門とは、日本では古来より鬼の出入り方角であるとして忌むべき方角とされています。
宮元さんが袂より小さく四角に切られた切麻(きりぬさ)を握って、左、右、左へとお祓いします。切麻は、はらはらと地面に落ちていきます。この土地を祓い清め、工事をする人などに災いが生じないように、という願いが込められています。
玉串奉奠拝礼(たまぐしほうてんはいれい)
施主の千春さんが、宮元さんから手渡された玉串を神様に捧げておまいりします。これを「玉串奉奠拝礼(たまぐしほうてんはいれい)」といいます。玉串とは神様が宿るとされる榊(さかき)の枝に、紙垂(しで)や麻を結びつけたものです。
大工の拓実さんも神様へ玉串を捧げます。これで安全に家の建築が進んでいくことでしょう。この土地の神様が守ってくれるはずです。
白髪神社秘伝の「鎮め物」
地鎮祭の最後に、宮元さんが手渡していたものがありました。白髪神社秘伝の「鎮め物」です。麻のひもで結ばれており、大地の神様の心を鎮めるためのもので、置いておくだけで目に見えない煩わしいものから家を守ってくれるそうです。
昔の家は高床式だったので土中に。現代では、鎮め物は基礎のコンクリートの中央に置き、家屋とその土地のお守りとされています。鎮め物は、大工の拓実さんに手渡されました。
地鎮祭が終わったあと、拓実さんがテントの四方に立てていた竹をまとめ、敷地の鬼門、北東側に立てかけていました。こうすることで鬼門から災いが入ってこないようにするそうです。
日本では古来より、たくさんの神様がいると信じられてきました。あらゆる現象や、太陽や月、風や家の台所などまで、存在するすべての物事に神が宿っていると考え、無数の神々を「八百万の神(やおよろずのかみ)」として崇めてきました。
地鎮祭で宮元さんが唱えていた祝詞に「八百万の神」という言葉がありました。
家の神様、太陽の神様、月の神様、風の神様、この土地の神様…。どうかこの地の神様たちが、この家と、この家に集う人たちを見守ってくださいますように。その願いが言霊となって、あたりに響いていました。きっと神様たちは心得てくださっている。そんな気持ちがしました。
9月現在、工事は安全に順調に進んでいます。千春さんの家は今年の冬に完成予定です。