「怖い絵 死と乙女編」 中野京子 角川文庫
この欄で以前も別の本を紹介したことがありますが、中野京子さんの「怖い絵」シリーズはハズレが一冊としてない名シリーズです。
西洋アートの歴史の中で名作と謳われる絵画の数々。その中から、時代背景や作者の意図や、その他諸々、実は「怖い」という絵を丁寧に一作ずつ紹介しています。時の権力者を描いたものなど、政治と密接に絡み合ってる作品が多いので、西洋史としての本とも言えるものです。
中には意に染まぬ権力者からの依頼を断れずに、画家が人知れず絵に含ませた謎解きのような寓意。もしくは絵の中の主人公が辿った悲劇的な運命。
画家の技巧が巧みな分、画面に霊魂を感じさせるような凄みがまた怖さを募らせる一冊です。