「三つ子のこぶた」 中川李枝子 のら書店
まきお、はなこ、ぶんたという名前の三つ子のこぶたの毎日はとてもにぎやか。朝起きてごはんを食べて、遊んで、お昼ごはんを食べる。昼寝して、おやつを食べてまた遊ぶ。夜ごはんを食べて、お風呂に入って、寝る。その合間に喧嘩あり、涙あり、親は休む暇がない。食べたそばから「おかあちゃん、おやつまだ?」。
そう言われたお母ちゃんの気持ちが手に取るようにわかります。
私の息子も同じでした。まだ2〜3歳の頃、さっきおにぎりを食べたばかりなのに「おなかすいた…」。おやつに持ってきた蒸かし芋やらお菓子の存在を知っているからです。「あともう少ししたらね」と言うと「わかった!」と遊びに行く。律儀にも5分後くらいに戻ってきて「“もうちょっと”たったよー」と呼びに来る。お腹をぽっこりさせた幼い子がこちらを見ている姿がどこかいじらしくて「じゃあ一つだけね」と言ってあげる。本当に嬉しそうにガツガツ食べる。また遊んで、そして「おなかすいた…」。日々その繰り返しでした。
繰り返される毎日には忍耐が必要とされ、多くの葛藤がありました。でもその合間には、子どもにも大人にも発見や驚き、楽しみや悲しみ、そして、かけがえのない喜びも確かにあったのです。その時はわからなかったことが今はわかります。どんな時も一緒に成長してきたんだなと思います。私は子どもたちに育ててもらってきたんだな、と。
この本は3人の子どもたちが幼い頃、それぞれに読みました。「おやつまだ?」のところで笑うのも3人一緒でした。身に覚えがあるのでしょう。
子どもたちが小さかった頃のことを懐かしく思い出せる一冊です。
鳥山百合子