「エイドリアンはぜったいウソをついている」 マーシー・キャンベル文, コリーナ・ルーケン絵, 服部雄一郎訳 岩波書店
今年1月に出版されてから何人もの友人に薦め、何度も読み返している絵本。絵本ならではの仕掛けはみごとで“魔法”と呼びたくなるくらい素敵な仕掛けです。
まじめで嘘が許せない主人公の女の子は、同じクラスのエイドリアンが「うちには馬がいるんだよ」という度にいらついてしまいます。小さな家におじいさんと二人で住んでいるエイドリアンが馬を飼っているはずはないからです。
いつものとおり、エイドリアンが馬のことを話し出した時、女の子は思わず「それ、ウソだよ!」と叫んでしまいます。そのときのエイドリアンのすごく悲しそうな目…。正しいことをした女の子でしたが、気持ちは晴れません。
ここからの展開と物語に寄り添う絵が秀逸で、読み返すたびに幸せな気落ちに包まれます。
自分とは違う価値観を受け入れた瞬間にパッと世界が広がる、驚きとうれしさ。自分で自分の周りに作っていた壁を突破らった時に見える豊かな世界の美しさ。様々なものを伝えてくれる絵本です。