「青空と逃げる」 辻村深月 中央公論新社
深夜一本の電話が平凡な日常を突然奪った。追い詰められていく母「早苗」と息子「力」。
舞台は知人を頼って逃げた高知県四万十からはじまる。最近選んでるわけじゃないのに、小説の中に高知県の出てる場面にいきあう。やっぱりちょっとうれしくて頬がゆるんでしまう。
その四万十に、父親の行き先を尋ねてきた怪しい男たち。お世話になった方々へのお礼も伝えられずに、必要最小限の荷物だけをもって、恐怖におびえながら逃避行を続ける早苗と力。
高知県の四万十、兵庫県の家島、大分県の別府。
秋田県の仙台に父親がいるらしいと知って、羽田空港をさけ名古屋空港からと思ったが、早苗が風邪で倒れこんでしまう。逃避行の間に、右に左にゆれながらも成長していく力の姿に胸うたれる。思春期の感性に、年甲斐も無くつい入り込んでしまう。
青空から逃げるのではなく、青空と一緒に逃げる。
救いと再生の物語。