四月の中頃だっただろうか、小学四年生の長男が、ゴールデンウィークにクラスの男子数名をうちに連れてきたいと言った。
せっかくの長期休暇、そんなスペシャルな日があってもいいだろう。僕は息子に、何をしたいのか紙に書いてごらんというと、友だちと相談し計画を立て、数日後に仕上げて持ってきた(写真)。遊びまくって、食べまくる。なかなか楽しそうな一泊二日になりそうではないか。ゴールデンウイークの間、うちの奥さんはじめ、長女次女三女の女子チーム全員が帰省する予定だ。きっと男子だけの二日間は盛り上がること必至である。とは言え、エネルギーの塊みたいな男の子たちを大人として引率していけるのか、いささか不安があった。
果たして当日となり、笹のいえにやって来た男子たち。
うちの長男次男は興奮気味に(そしてなぜか自慢げに)トイレや風呂の場所などを案内している。珍しいコンポストトイレや五右衛門風呂に尻込みするかと思いきや、クラスメイトは興味津々に息子たちの説明を聞いているようだった。
車から荷物を移動し、僕は長男作の計画書を頭で確認していた。このあと車で出掛ける時間までは家の中で遊ぶのだろうとぼんやり思っていたら、
「父ちゃん、川に行くき、大人がついて来て!」
と息子たち。到着して数分、すでに計画とは違う事態に頭が混乱する父ちゃんをよそに、着替えはじめる男子。もちろん、みな水着なんて持ってきてない。どうするのかと思っていたら、長男が自分のを人数分タンスから引っ張り出してきて、履いてもらうことにしていた。僕よりも機転が効くではないか。
家から歩いて五分にあるいつもの川に連れて行く。5月初旬、川の水はまだ冷たいが、仲良し男子たちには関係の無いことだった。ふざけたり、追いかけっこしたりして、ゲラゲラ笑いながら、もう楽しくて仕方ない様子だ。
そろそろ時間だからと家に戻り、着替えて、今度は市内にある回転寿司屋さんへ。
車で片道小一時間、道中の車内もこれまた騒がしい。大声で歌をうたい、下ネタやギャグを言い合い、一発芸を披露する。とにかくやかましくて、終始ハイテンション。毎日のように顔を合わせるメンバーだから、気心が知れ、それぞれの個性がうまく絡み合ってる。息子はいい仲間たちに囲まれているなと、羨ましいくらいだった。
食事を終えて帰宅。風呂に入り、着替えて歯を磨き、布団を敷いても、彼らのエネルギーが静まることはなかった。夜が更けてきて、さすがにもう遅いから寝るようにと促す。横になってからもしばらくおしゃべりの声が聞こえていたが、そのうち寝息が聞こえてきた。
寝静まった彼らを見ながら、僕は男子たちの未来を思い描いていた。
これから年月が過ぎ、数年後には社会に出ていろんな経験をしていく彼ら。何人かは地域の外に出るかもしれない。しかしそれでも、彼らのいまの関係性は大きくは変わらないような気がする。たとえ何年ぶりかに会っても、すぐに今日のような「あのころ」に戻るのではないだろうか。相変わらずふざけあったり、軽口言い合ったりして、良い時間を過ごすんじゃないだろうか。そんなことを考えていたら、僕もいつの間にか寝てしまっていた。
翌朝、寝てる間にしっかりとチャージした彼らの辞書に疲労の文字はなかった。一緒に朝食を作って食べ、しばらく遊んだら、送りの時間。遊び足りない男子たちを車に乗せてお迎え場所に向かった。
「あのとき、あんなことしたよな」
「そうそう」
って、思い出せる二日間だったら嬉しいと思う。
また遊びにおいで。