分類メギ科ナンテン属の常緑低木
分布中国、インド、日本
概要花期は5~6月 果期は11~2月
撮影2024年1月/土佐町 大谷地区・三島地区
常緑の葉と真っ赤な実。
普通に見かける誰でも知っている植物ではないでしょうか。
ナンテン(南天)は読み方から「難を転じる」縁起の良い木としてよく利用されます。
正月飾りでは定番のように松竹梅と同等に使われ、普段でも人家の庭や寺院などの庭木として利用されています。
南天の木は幹の先端に葉が集まってつく独特の姿をしています。
特徴は長さ20~60㎝の羽根状になる巨大な葉で、ふつうに私たちが葉っぱだと思っている幅2㎝前後の小さな葉のようなものは「小葉」と呼ばれるもので「葉」ではありません。
次の写真の場合、「赤い実のついた果茎が、1枚の葉の茎(葉軸)から出ている」というふうに見てもらえれば、ナンテンの葉の特徴が分かってもらえるかも知れません。
正式名称を「3回奇数羽状複葉」と言います。
因みにこの1本のナンテンには葉が5枚あり、最大の葉の長さは60㎝でした。
ナンテンは日本の中部以南に自生するという説がある一方で自生は疑問とする意見もあります。
平安初期に弘法大師(空海)が遣唐使としての帰路に持ち帰ったとされる説もあります。こういった渡来説の場合には、古くに持ち込まれた栽培種の実を鳥たちが食べて各地に広まったということになります。
確かに人の手によって植栽されたとは思われない場所で悠々と育つナンテンを目にすることは珍しくありません。
次の写真は道路沿いの法面でコンクリートの隙間から顔を出しているナンテンです。
南西向きの「日向ぼっこには持って来い」のような場所で、冬の日射しをいっぱい浴びて葉っぱも赤く紅葉しています。
紅葉したナンテンは大谷地区の県道17号沿いの法面でも見ることが出来ます。色々な木や草と絡みあいながら崖にへばりついています。
枯れ色の中で赤い実が目立ちます。
ヒヨドリたち野鳥は真っ赤なこの実を目掛けてやって来るのでしょうか。それにしてはナンテンの実はなかなか無くなりません。
いつまでも長持ちして枝に残っていることから、酒席に最後まで残って席を立とうとしない人々のことを「ナンテン組」などと言ったりします。
車窓からも見えますが、運動がてら歩きながらいろんな角度から眺めてみるともっともっと楽しい発見があるかもしれません。
余談ですが、この場所の下側は「みんなの森」です。
森地区集落活動センターが景観整備のために造林木を伐採してハナモモを植えていますが、ここにもナンテンがいっぱい生えています。
もともと植わっていたのかも知れませんが、下草刈りで刈り飛ばされても株が残っているので苗はまた生えてきます。
鳥が運ぶのか、人が運ぶのか、風が運ぶのか。ナンテンの実があちこちへ飛ぶことに間違いはなさそうです。
そのことを一番身近に感じさせてくれる場所だと思います。
三島地区にある林の下層ではまた違った味わいを持つナンテンを見ることが出来ます。
うっそうとした40~50年生の人工林で、下層の優占種はアオキ(青木)です。青々とした葉と赤い実が特徴の常緑低木ですが、実はまだ色づいていません。
その中にあってナンテンの赤い実がとても印象的に輝きます。葉は緑色と一部黄葉、これがまた周辺の景観にぴったり溶け込んで美しさを一段と増大させていました。
ナンテンは本質的には有毒だそうです。
ところが生の葉には殺菌作用があるそうで、赤飯や皿鉢料理にはふつうに飾られます。
赤い実は煎じて飲むと咳止めになると言われます。
有毒である一方、薬草植物でもあるのです。
ナンテンは、口にはしないよう気をつけましょう。