ふと目を窓の外に移すと、今日も仁井田ご夫妻が連れ添って校庭にある木の下を歩いています。お二人は夏でも冬でも体調が良ければ毎日お散歩するよう。時には一日に朝夕、お二人の姿が見えます。
石原の集落活動センターにある池には、納涼祭で残った金魚たちが泳いでいます。毎日のお散歩の途中、きみあきさんは必ず立ち止まって金魚を眺めています。釣りが好きなきみあきさんらしい。

お散歩の途中、石原集落活動センターを歩く
暫くすると袋を下げた高橋さんが、ゆったりとした足取りで歩いて来ます。高橋さんは時にはやまさとの市にあるベンチでのんびりと腰掛け、近くを通りかかると「これいらんか?」と畑で採れた野菜などを渡してくれます。
夕方になると、仕事から戻って来た人たちが国道沿いを早速と歩く姿が見られます。
健康のために歩いたり走る習慣がある方々も土佐町には沢山いると、移住して来てから気づきました。
もちろん健康的な生活習慣はどこでも見られること(セネガル共和国ダカールにある海岸線を夕方にジョギングする沢山の人の姿に感心した記憶があります)だけど、ここでは時間の流れが緩やかで、お散歩している人たちも走っている人たちもゆったりと景色を楽しんでいるような気がします。
毎日のお散歩で季節の移り変わりを確かめるのも楽しみのひとつ。
水仙の葉が道端の枯れ草からすっと伸びてきたら、もうすぐ春が来る予感に心がふわっと暖かくなります。

国道沿いに咲く水仙
春先に石原の国道沿いを歩いていると、『フラワー会』の立て札の横に植えられた桜の木と水仙の花々に目が留まります。
それは旧道沿いにも繋がり、西石原バス停の側にある桜や菜の花と共に美しい風景を織り成してくれます。
初夏が来ると郵便局の側にある橋からは、薄桃色に煙ったような合歓木が枝先を川面に伸ばしている姿が見えます。

石原を流れる川に彩りを添える合歓木
暑い夏の終わりを告げるように、ほんわりと甘い木蓮の香りが幾つのも庭先から漂い、秋の訪れを教えてくれます。
地福寺とその近くにある公園の紅葉が見事に色づき、刈り取った田んぼに置かれた藁帽子を眺めながら里山のひんやりとした空気の中、白い息を吐きながら坂道を登ります。
冬に時々積もる雪の日は、滑らない様にゆっくりと新雪を踏んで歩くのも楽しみのひとつ。

山の上で冷たい空気を突き通して鳴いているのは何の鳥かなぁ、と考えながら立ち止まってそっと雪を摘んでみたり…
毎日お散歩する人々の姿を暫く見ないと、「元気かしら?」と心配したり、久しぶりに見かけると「元気になって良かったね。お散歩している」と、ほっとしたりすることも…
来年の春も、おそらく何十年も前に『フラワー会』の皆さんが丁寧に植えた球根や、道沿いにある家々の花壇やプランターに植えられた花々が芽を出し、きっとお散歩する人の目を楽しませてくれるでしょう。
今日は急に色づき始めた紅葉と銀杏を観に、ちょっとお散歩に出かけようかな。




