食欲の秋です。私は特に揚げ物が好き!
今でこそスーパーに行けば、色々な油を売っていて、予算や用途に応じて選べる…。便利になったものです。
私が小学生の頃は、スーパー等は無くて、揚げ油を買うのには、空の一升びんを提げて川向いの地区の東側の北泉にあった店屋(てんや)の曽我部商店まで、てくてくと歩いて買いに行くのだった。
ある日のお使いで、私と妹二人は、その北泉まで一升びんを持って油を買いに行くことになった。今夜のおかずは、天ぷら!そう思うと重い油も、なんのその。歩いて十五分位かかるその道を、お店で油を一升びんに入れてもらって帰るのだった。
持つのは姉の私。ところが、帰る途中で雨が降り出した。傘は持って来なかった。二人の妹は、手に何も持ってないので、早足で帰り始めた。私は妹たちが急いで帰るのを目で追いながら、重い油の入った一升びんを両手で抱えて(今みたいに強いポリ袋やエコバッグは無かったし、買い物かごに一升びんは入らなかったので、手で持つしかなかった)、雨の中をゆっくり急いで帰っていく。
一升びんの口の廻りには、油を入れた時に付いた油分が残っていて、時々「ぬるっ」と滑る。私はトキワ橋を渡った所で、一升びんを持つ手を変えようとして「つるっ」とすべらして落としてしまった。
油の入ったびんは、雨の降る中、「ガシャン」と割れた!油は、ジャリ道に吸い込まれていった。割れた瓶の破片が散らばった。
雨は降っている。妹達は、どんどん遠ざかる。
私は涙が出た。何もかも私の責任。今晩のおかずはどうなる。
私は、一人雨の中を歩いた。
妹達は、油がなくなったのを知らない。おかずが天ぷらじゃなくなるのも知らない。
長女って損だ!
心からそう思った。