古川 佳代子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「地震・台風時に動けるガイド~大事な人を護る災害対策〜」 辻直美監修 Gakken

今年も台風シーズンが近づいてきました。地震も各地で頻発しています。防災対策はできていますか?わたしはといえば、いやはや情けない…。

防災グッズをそろえている方たちは、それを使いこなせるテクニックをお持ちですか?

この本の監修者である辻直美さんは、防災現場で命を助ける看護師さん=レスキューナース。現場に出動するだけでなく、減災の一環で、防災啓もう活動も各地で行っています。その経験から、人にやさしい防災の考え方、方法を伝えることが、自分にとっても他者に対してもいちばん優しいものになるだろうと考え、この本が生まれました。

防災の取り組みは「まじめに、ちゃんとやらないといけない」わけではありません。「100円ショップのすべり止めシートを適当に切って、その辺の棚に置く」だけでも昨日より防災力が1段階上がりますよ、ととてもハードルの低い、私でもすぐに取り掛かれる提案がたくさんあります。

これから防災準備を始める人、もうすでに防災に取り組んでいる人、どちらにもおすすめの知恵が詰まっています。

 

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私の一冊

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「香川にモスクができるまで~在日ムスリム奮闘記~」 岡内大三 晶文社

お隣の香川県にある素敵な本屋「ルヌガンガ」さんは、SNSで幅広いジャンルの本の紹介をされています。この本もルヌガンガさんに教えてもらった一冊です。

タイトルを見たときにまず思ったのが「香川にモスク?なぜ?」でした。両親ともに香川県出身で子どものころから親しんでいる土地なのですが、香川とモスクが結びつきませんでした。けれどもこの本によると、2019年時点で約800人からなるインドネシア系ムスリムのコミュニティーが存在しているのだそうです。

ムスリムのごく一部の人間による蛮行から、ムスリムと聞けば「非文明的、女性蔑視、怖い人たち」といったイメージを持ちがちです。でも本当にムスリムの人たちがそうであれば、香川にモスクが建つだろうか?それとも力ずくでモスクを建てたのか?

その顛末は本に譲るとして、本書に登場するたくさんの「ふわふわと柔らかいコミュニティー形成にたけた隣人」たちのことを、知ってもらえればと思います。

 

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「ごみを出さない気持ちのいい暮らし」 高砂雅美ほか著 家の光協会

ゴミ出しをするたびに、もっとゴミを減らせないものか、と反省します。でも実践にはなかなか結びつかないのが、我ながら情けない…。

そんな時に目に留まったのがこの本。ゴミ出しに正解なんてないし、できること、できないことは人それぞれ。とにかく無理なく、楽しく、心地よく、できることから始めればよいのですよ、と6人の方の取り組みが紹介されています。

「自分がごみと決めたものが、ごみになる。捨てる前にもう一度だけでも使う」「物を買わずになんとかならないかなぁていつも考えています」そんな言葉と共に豊富な写真付きで、楽しいから続けてこられたゴミ減らしの工夫のあれこれが提示されています。

これなら私も始められる、と思えるものがいくつかあり、只今実践中です^^v

 

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「おつかれ、今日の私。」 ジェーン・ス― マガジンハウス

 男が敷居をまたげば七人の敵あり、ということわざがあるけれど、勿論女にだって、ひとたび外に出れば七人の敵はいる。

精根こめて仕事しても報われるとは限らないし、家事をどんなに頑張っても褒められることはまずない。だれも自分を慰撫してくれないなら仕方ない、自分で自分に「お疲れ。今日もよく頑張ったね!」と声掛けしてみる。するとちょっと肩の力が抜け、気持ちがすこし浮上する気がする。

それでも、まだ落ち込んで、暗いトンネルをさまよっているようだったら、この本を開いて何篇か拾い読みしてみるのもよいかも。 いつもは皮肉の利いた辛口エッセイが多い筆者が、読んでくれる人の隣に座って、中の良い友だちの背中をさするように書こう、と決めて書いたという文章は、すっと体に馴染むのでした。

 

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「がっこうのてんこちゃん」 ほそかわてんてん 福音館書店

新一年生の女の子が、小学校の上級生らしいお姉さんに「ねえ、学校にいつまで行かんといかんが?もう飽きたき保育園に戻りたい」。それに対して「もう保育園には戻れんが。ず~っと小学校に行かんといかんがで。小学校が終わっても中学校、高校に行くき12年は学校があるがで!」とお姉さん。

それを聞いた時の女の子のなんとも情けない、悲しそうな表情だったことでしょう。ニヤけそうな口元を引き締めながらも、心から同情したことでした。

この本の著者のてんてんさんも先の女の子同様、学校が大嫌いだったてんてんさんが「こんな学校だったらいいな」、と思う学校の話を書こうと思いできたのがこの物語です。

「みんな同じ」を目指すのではなく「ひとりひとり違う」からはじめてみたら、誰もが自分らしく楽に生きられて、相手のことも自分同様に尊重できるようになるのではないかしらね?

 

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「発達障害の人が見ている世界」 岩瀬利郎 アスコム

「定型発達」という言葉を恥ずかしながら本書を読むまで知りませんでした。定型発達とはいわゆる普通の人=発達障害ではない多数派の人びとを意味する用語です。

学校や職場、地域の人たちと互いの意見や考え方を理解し、尊重し合いながら関係を築いていくことの難しさを感じることが時々あります。人と円滑にコミュニケーションをとることはなかなかに難しいことです。定型発達者同士でもそうなのですから、発達障害の人たちはもっと悩み、傷つき、苦しんでいるだろうことは想像に難くありません。

上手にコミュニケーションをとるために必要なことは定型発達者、発達障害者の区別なく「相手の見える世界」を想像すること。他人の「靴を履いてみる」ことかも?

相手を理解し、適した接し方をとれればコミュニケーションがスムーズになる例が具体的に示されていて、たくさんの気づきとヒントをもらえた本でした。

 

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「小さなまちの奇跡の図書館」 猪谷千香 ちくまプリマー新書

図書館運営で一番の課題は「読まない人」「本に関心のない人」に、図書館に来てもらうことです。その課題を克服し、「読まない人も行く図書館」となり、市民に愛される図書館となった鹿児島県指宿市立図書館。

どこにでもあるような、小さな町のさびれた小さな図書館が、ライブラリー・オブ・サ・イヤー他の名だたる賞を受賞する図書館に成長するまでの過程が丁寧に書かれた本書。市民の居場所となるための図書館づくり等を目的として図書館サービスを拡充させていく経緯は、とても興味深く参考になりました。

図書館学者ランガナタン博士の五法則「①本は利用するためのものである ②いずれの人にもその人の本を ③いずれの本にもすべてその読者を ④読者の時間を節約せよ ⑤図書館は成長する有機体である」にもあるように、図書館はすべての人にとって開かれ、必要とされている知識を提供する場所です。

そして地域のコミュニティースペースとして、人が安心して集える場所でなければなりません。そういう図書館を目指さねばと反省しつつ、伸び代はまだまだあると自分を鼓舞しながら読んだことでした。

 

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古川佳代子

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「ヘルシンキ生活の練習」 朴沙羅 筑摩書房

図書館のカウンターに座っていると時々「面白い本はないですか」とか「おすすめの本はありますか」と聞かれることがあります。簡単なようで難しいこの問いですが、気がつけばわたしも本好きの友だちにたびたび投げかけています^^。

この本を紹介してくれたのは二人の友人です。あの二人が紹介してくれるなら間違いない、と手に取ったのが運の尽き。しなければいけないことを投げ出し、寝なければ仕事に差し支えるとわかりつつ…。

社会学者で日本国籍を持つ在日コリアンの著者の朴さん。幼いころからずっと「私は何者なのか」と悩んできたけれど、大学で社会学を学び「私は何者なのか」と悩まなければならない状況が問題なのだ、と気がつきます。では、どうすれば状況を帰れるかと思っているタイミングで、フィンランドの首都、ヘルシンキでの仕事を得て、二人の子どもを連れて移住します。

日本とフィンランドでは社会の成り立ちはずいぶん違いますから、当然、社会制度や思想も違います。ヘルシンキで子どもたちと共に暮らしながら「生活の練習」を重ねる朴さんの率直な思索が綴られています。

 

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「ソノリティ はじまりのうた」 佐藤いつ子 KADOKAWA

 若い人たちの成長物語は、心躍り励まされ、読後感も良いものが多いように思います。合唱コンクールの指揮者に選ばれた内気な中一の女の子と、彼女を取り巻く同級生たちを描いたこの作品も、そんな心地よい物語でした。

合唱に興味がもてず時間の無駄遣いだと思う子もいれば、なかなかまとまらないハーモニーにいらいらする子もいたり。高校時代は音楽部(合唱部)だったこともあり、自分の体験と重なる部分が多くて、なんだか自分もクラスの一員になったような気持ちで読みました。

音楽に限らず、仲間と一緒に何かを作り上げていく難しさと楽しさ、そしていつしか一丸となってまとまっていく高揚感はぜひリアルな生活の中で体験してほしいのです。けれども、それもなかなかままならぬ昨今。せめて本の中でたっぷりと味わってください。

 

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古川佳代子

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「香君  上・下」 上橋菜穂子 文藝春秋

1989年に『精霊の木』でデビューをされて以来、ずっと追いかけている上橋菜穂子さん。歳を重ねるに従って、作品はどんどんと重厚になってきているように思います。

香りで万象を知ることのできる「香君」に守られている国・ウマール帝国は、奇跡の稲〈オアレ稲〉によって繁栄してきました。けれども近年、虫害により国の存亡にかかわる食糧危機に見舞われます。

香君と同じく植物の香りから様々なことを読み取れる少女アイシャは、誰にもそれを打ち明けることができず、深い孤独を感じていました。自分の力を疎ましく思うとともに、香りから得られる様々な生き物の豊かな営みは、アイシャに喜びももたらせてくれます。相反するアイシャの思いをていねいに綴りつつ、並行して描きだされる国の憂いや統治者の苦悩、思惑、駆け引きは、架空の世界のこととは思えない力で読み手を翻弄します。

未来に希望を持つことが難しく思える時もありますが、それでも自分の想像力を駆使して、どうすれば少しでも良い未来につながるのか考え続け、できる限りのことをして生きていく先にこそ「希望」を作り出せるのかもしれない、と思わされた物語でした。

 

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