「クマと森のピアノ」 デイビッド・リッチフィールド作 俵万智訳 ポプラ社
はじめて書店で見たとき、まずは表紙にひと目ぼれ。少し開いた上品な深紅の緞帳の向こうで、燕尾服のクマが、木製のアップライトピアノに向かって演奏しています。そのコントラストのなんと洗練されて素敵なこと!表紙に続く木漏れ日の耀く木立の美しい風景に誘われ、あっという間に絵本の世界に引きこまれてしてしまいました。
ごく小さい時に森の中でピアノに出会ったクマのブラウン。それが何なのかも知らなかったけれど、鍵盤に触れ、その音を聞いた時から心を奪われ、毎日毎日ピアノに触れにやってきます。拙く途切れ途切れだった音が少しずつなめらかになり、いつしかその音はメロディーとなり、森の動物たちの心をとらえます。そしてある日のこと…。
こどもの時に出会うのか、20代なのか60代なのか…。出会う年代や人生経験のちがいで様々な受け止め方になるだろう本書。BGMにお気に入りのピアノ曲等を流しながら、静かにじっくりと味わってほしい絵本です。