川村房子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー  2」 ブレイディみかこ 新潮社

「僕」は13歳になった。

労働者階級の父親と日本人の母親とのイギリスでの3人暮らし。この本の1の時はカトリックのいいといわれる小学校に通っていた僕が、地域の中の、元底辺と言われる中学校に入学することを決め、迷ったり悩んだりしながら果敢に前を向いていく様子だった。

2では荒れていた地域も少しずつ、いい方向にかわってきている。中学生の多感な時期に絶えない問題につきあたりながら、自分で考え選び大人への階段をのぼっていく。親離れの季節がやってきた僕と衝突しながら見守っている両親。

親子の成長物語です。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「わたしは繊細さん」 武田由紀 飛鳥新社

表紙に「まんがでわかる!」(漫画,竹嶌波)と書かれているとおり、漫画なのでとても読みやすい。

この本を読んではじめてHSP(敏感すぎる人の意で、作者は繊細さんと名づけている)といわれる人がいる、5人に1人はいて、専門カウンセラーがいることも知りました。

上司の機嫌が悪いと自分に関係なくても緊張してしまう。電話の音や、すれ違う人の柔軟剤の匂いまで気にかかる。まじめすぎたり、気にしすぎたりするというのではなく、繊細さんといわれる人がいるのです。

繊細さんにとって大切なことは、自分らしく自分のままで元気に生きる。本音と感性を大切にする。自分にあう環境を選ぶ、と書かれています。

気を付けなければいけないことにも気付けなかったりするがさつな私ですが、それでも心にとめておきたいと思います。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

 「魔笛」 野沢尚 講談社

我が家の本棚にあった一冊。迫真のサスペンスと書かれているので、私が買って忘れたとは思えない。

渋谷のスクランブル交差点で爆弾テロ。犯人は新興宗教の信者であった照屋礼子。元は公安警察が送り込んだ警察庁警備局の警察官。それを追うのは刑事鳴尾良輔。夫殺しの取調べをした犯人の妻藤子と獄中結婚をしたという複雑な事情をかかえている。

一方、内密に事を収めたい公安も黙ってはいない。次の爆弾テロの予告。鳴尾が犯人への糸口をつかんだことで、手錠で繋がったまま爆死したいと望んでいるのじゃないか、複雑な思いを抱いているのじゃないかと心をいためる藤子。

礼子は、身代金をのせた車を東京中、走らせ警察の目を集中させておいて、全く違う場所に爆弾を仕掛けた。来るともこないともわからない、きっと来る鳴尾の到着を待っていた。情念とも怨念ともわからない。いろいろな思いや行動がからまりあいながら解決へ。

読みすすめるうちにオウム真理教がダブってみえてきたりする。

 

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「七度笑えば、恋の味」 古矢永塔子 小学館

表紙はアニメ。日本おいしい小説大賞…って何?と思って購入。

第一話の鮭と酒粕のミルクスープからはじまって、第七話のたっぷり山葵のみぞれ鍋までの七話になっていて、料理方法や料理のおいしさまで伝わってくる。

でもこの小説は美味しいだけじゃないんです。

主人公の日向桐子。完璧に美しすぎるため母の人形。幼い頃より辛い目にあい、大人になった。今では夫の人形。内緒でみつけた職場も、頭巾にマスク、メガネをかけての仕事。昼食も人目を避け、誰もいない処でとる。自分が自分でいられないことに泪が…。

そこにあらわれるのが72歳の匙田さん。味があって人情味満杯。まわりのみんなも人間味があるんです。

一まわりも二まわりも離れているのに抱く恋心。匙田さんの対応がしゃれていて大人なんです。

読み終えると、ほのぼのとした気持ちになりました。

作者は高知県在住でした。それだけでもうれしくなりますよねえ。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「正欲」 浅井リョウ 新潮社

町立図書館の時久さんが「読みたい希望の本があれば採用されるかもしれませんよ」と声かけをしてくれていたので、申し込みをしてみました。

連絡をもらって最初の借りてです。「次の予約が入ってますので貸し出し期間を過ぎないようにお願いします」と言われて、次の借り手がいることに、ホッとしたことでした。

本を読み終えて、言葉に浮かんだのは「深~い!!」でした。幸せには色んな形があって、家庭や子どもを持たない人、事実婚、同姓婚、ポリアモリー、アセクシャル、ノンアセクシャルといわれても、そのカタカナ名の意味さえわからず、スマホで調べてみました。

はじまりは、児童ポルノ摘発、自然豊かな公園で開催されていた小児性愛者たちの“パーティ”…。

実は違うのです。水遊びをしている子どもたちの水にたわむれる姿。彼らはその水を楽しんでいたのです。ほとばしる水にしか興奮しないのです。

彼らは生まれ持った、自分らしさに対して堂々としていたいなんて、これっぽっちも思ってない。せめて明日生きていけるように、生きのびるために、孤独な魂がよりそっていく。

表面に見えるものでしか理解しえない、想像力の外側にあって、深いと思えたのでした。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「1日10分のごほうび」 赤川次郎, 江國香織他6名 双葉文庫

バックの隅にいれて持ち歩き、病院での待合やコインランドリーでの洗濯乾燥時などチョッとした暇な時間にページをめくります。

今はスマホの時代だけれど、何とも使いこなしきれないわたしには丁度です。

作家が替わっての短編小説。お気に入りだったり、はじめての出あいだったり、昔よく読んだ作家だったりで楽しく読みました。

今日は裏表紙に書かれている文章を紹介します。

「NHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、世界17言語に訳して朗読された小説のなかから、豪華作家陣の作品を収録。亡き妻のレシピ帳もとに料理を始めた夫の胸に去来する想い。対照的な人生を過ごす女友達からの意外なプレゼント。ラジオ番組の最終日、ある人へ贈られた感謝のメッセージ…。小さな物語が私たちの日常にもたらす、至福のひととき。好評アンソロジー、シリーズ第二弾!」

第一弾 第三弾もあるようです。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「52ヘルツのクジラたち」 町田その子 中央公論新社

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。

たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない、何も届けられない。その為、世界で一番孤独だといわれている。

帯に書かれてなかったら、作者も題名にも素通りしていたかもしれない。

生きるのに疲れ、最果ての街にきた貴湖。そこで自分と同じ匂いのするしゃべることのできない少年と出会う。親からの愛情が注がれていない孤独な少年の匂いが、家族から受けた虐待の日々と重なってくる。

貴湖の持つタブレットを通して、クジラの歌声をきく少年。繰り返しの日々の中で少しずつ心を開いていく。

自分の人生を家族に搾取されてきた女性貴湖と、母に虐待された少年。彼らが出会い新たな物語がつむがれていく。

文体の読みやすさもあって一晩で読んでしまうほど。夜中に目もしぱしぱ。長男の嫁さんにすすめると「いっきに読んだよー」と…。

 

 

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「スイッチ」 西澤保彦 光文社

梅雨時、すっきりしないお天気が続きます。

この作品の舞台は高知で安芸や春野、はりまや橋と、身近な場所がでてくると頭の中の地図に再現されます。

時は昭和52年、婚約者に会いに高知を訪れた22歳の菜路充生。彼女の都合で、一人でホテルに泊まることになったその夜、銀色の奇妙な雨にうたれ意識を失ってしまう。目覚めた時、ボクの体は別の人格に乗っ取られていた。

体の中には二人の存在があり、22歳のボクと53歳になった僕。体を自由にできるのは53歳の僕。ボクには記憶のない31年。妻とは離婚したという。人生の輝く時期をうばわれ、喪失感に苦しむボクを、今度は連続殺人事件が襲う。

ミステリアスな作品でした。作家のあとがきも楽しんで読みました。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「きみに読む物語」 ニコラス・スパークス アーティストハウス

10代の夏に巡り会ったブルーカラー育ちの若者とエリート階級の娘。理不尽な別れがあっても、若者は一途に愛を貫いた。離れて暮らした苦しい年月。そして偶然の導きによる再会。その後の平凡で幸せな日々。

数十年後、妻は病にかかり、日々の記憶を忘れてしまう。記憶をなくした妻に、毎日読み聞かせるのは、二人が出会い、別れ、そしてまた恋に落ちた現実のラブストーリー。

文中に「わたしはありふれた人間だ。ごくふつうの考え方で、ごくふつうの生活を送ってきた。記念碑などないし、名前もすぐに忘れられるだろう。でも、わたしには全身全霊をかたむけて愛する人がいる。いつでも、それだけで十分だった。」と…。

優しい純愛小説。著者の妻の63年間連れ添った祖父母の実話に基づいた作品で、2005年海外小説第1位に選ばれました。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「嘘をつく器  死の曜変天目」 一色さゆり 宝島社

ミステリーはあまり読まないけれど、NHKの朝ドラの影響で「曜変天目」の器ってどんなものだろうと思って読んでみた。

「曜変天目」とは、鉄分を多く含んだ釉薬を鉄釉というが、なかでも黒、黒褐、茶色といった釉調を持つ焼き物は、一般的に天目と呼ばれる。天目という名前は、中国浙江省天目山の禅院で使われていた什器を日本の禅僧が持ち帰ったというところから由来するらしい。うーん、なるほど、と思いながら読んでいくけれど、ひと月もすると、中国からきた焼き物位にしか覚えてないのが悲しい…。

京都鞍馬の山中にて、人間国宝間近と目された陶芸家西村世外の他殺体が見つかった。世外は「曜変天目」を完璧に作っていた。この幻の焼き物を巡る殺人事件を、世外の弟子である町子と保存科学の専門家大学助教授の馬酔木で、一転二転する殺人犯を追ってゆく。

ミステリーは、結果が知りたくて最後が一気読みとなり、夜のふけるのも忘れてしまう。

ちなみに「馬酔木と書いてアシビと読む」。はじめて見る名字で、何度もページを前に戻して確認した。パソコンですぐに漢字がでるのでスマホで調べると、あせびの木の事でした。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone