川村房子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

川村房子

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「流浪の月」 凪良ゆう 東京創元社

2020年本屋大賞受賞作品。

普通ではなかったけれど、楽しく幸せに暮らしていた更紗。父親が亡くなり、誰かに頼らなければ生きていけない母親は出て行った。伯母の家に引き取られ、言葉にだして訴えることもできない窮屈な暮らし。

更紗9才、公園で時間をつぶす毎日。その公園には、いつも本をよんでいる大学生の文(フミ)がいた。帰りたくなくて、アパートについて行った。自分というものをわかっていて、理性で必死に抑えているフミ。自分が自分らしくいられる毎日に癒されていく更紗。

何をされたわけでもないのに、誘拐事件となりつかまってしまい「フミー、フミー」と叫ぶ姿がネットで流され、大人になってもつきまとう。

世間の片隅でひっそりと暮らす、フミとの運命のような再会。

慎ましやかな女性がいいと云われていた昭和世代に育った私。「私らあにはわからんけんど、今の時代こういう生き方もあるんじゃねえ」と友人は言う。

心に残る作品です。

 

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私の一冊

川村房子

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「少年と犬」 馳星周 文藝春秋

2020年直木賞受賞。新聞をみて買おうと思っていたら、大大大の犬好き友人から「欲しい」とラインがあり、それならと私は本屋大賞を買って、交換して読むことにした。

傷つき、悩む人々と、彼らに寄り添う犬を描く感涙作!

東日本大震災のあと、岩手県から西へ西へと向かう一匹の犬。

男と犬  犯罪に手を染めた男性
泥棒と犬 窃盗団の外国人男性
夫婦と犬 壊れかけた夫婦
娼婦と犬 体を売って男に貢ぐ女性
老人と犬 元猟師で死期まじかの老人
少年と犬 震災のショックで言葉も出なくなった少年

その時々に出会う人々に寄り添い心癒すが、目はいつも西の方角をむいている。

読む章ごとに胸がつまり泪を誘います。

 

 

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私の一冊

川村房子

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「さよなら、ビー玉父さん」 阿月まひる 角川文庫

今年4度目の宝塚。孫の夏休みのフォローで10日間。今回も嫁さんの本棚から借りました。

奥田狐(コン)の安アパートに、離婚で別れた息子の遊が訪ねてきた。妻と離婚した時、テレビ、ネット、携帯すべての娯楽品と縁を切って、大阪から奈良に引っ越したのだった。

2年後、8歳になった遊が1人で、電車を乗り継ぎ、たずねてきた。自分しか愛せない、とことんダメな父と、その父親を好きで子どもでいることを諦めきれない健気な息子。

他にも味のある登場人物の中で、親子のきずなを深めていく。

ダメ親父にこんな思いがあるのかと思わされたり、「あーあ」と落胆したりですが、どこまでもいい子の遊に心あたたまります。

 

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私の一冊

川村房子

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「いつも忘れないで。」 浅見帆帆子 ダイヤモンド社

嫁さんの本棚からの一冊です。イラスト入りの、薄い小さな冊子の様な一冊。これが、読むと奥深いのです。

「精神レベルをあげよう。その為にはプラスのパワーをあげよう。日常の小さな心がけでたまるプラスパワー」。

簡単なようで、心がけの日々の積み重ねはなかなか難しい。

「精神レベルが上がってないうちは、自分の本音に正直に。会いたくない人、見たくない物、嫌な気分になることをしていると、心のなかにマイナスがたまっていく。はじめのうち、そういうことは意識して避けること。レベルがあがっていくと、自然に受け入れられる」と。

レベルを上げていくことは難しくても、嫌な気分で過ごすことがないように…。

そうありたい。

 

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私の一冊

川村房子

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「月の満ち欠け」 佐藤正午 岩波文庫

新聞に載っていた宮本輝さんの文庫を買いたいと大阪で本屋に寄ったけれど、大きな店で店員さんも忙しそうで声もかけにくく、待ってくれてる家族も気にかかる。ふと見ると、「直木賞受賞作」文庫本があり購入。

あたしは、月のように死んで生まれ変わるー

この七歳の娘が、いまは亡きわが子?今は亡き妻?今はなき恋人?

過去から現在への時間軸に沿って、繰り広げられる一つの物語。恋人だったり、妻だったり生まれるまえの記憶を持ったまま、自分が生まれる前の人生を覚えていて、前世の記憶の好みや癖の一つ一つが娘の体に入っているって…。

過去から現在へ時間軸に沿って、繰り広げられる3人の男と女の物語です。

 

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私の一冊

川村房子

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「我が家の母はビョーキです」 中村ユキ サンマーク出版

「統合失調症」って病気、知ってますか?

「私の母は27歳のとき、突然おかしなことを言いはじめ、そしてついに、この病気を発病しました…。当時私は4歳。」という作者は、マンガ家。

統合失調症生活31年になった母と、介護福祉士で楽天家、我が家の潤滑油で私と母にとって心の安らぎの夫の3人暮らし。

何年たっても、父のギャンブルと借金癖は、なおることなく全く頼りにならない。父と母の離婚成立。17歳で後見人。

母親も苦しいだろうが、子どものかかえた苦労やつらさは壮絶。

この生活の中で母の面倒をみながら、よくぞまっすぐに生きてこられたものです。総理大臣賞でもあげてほしい。

母と暮らしながら、周囲に出せない病気のことを学び、誰かに相談することで、とても生きやすくなってきた。

相談機関、いろいろな書類の提出の仕方も詳しくかかれている。

ユーモアをまじえた親子のやりとり。

家族一緒にのんびり楽しく「失敗」と「反省」を繰り返しながら、「涙」と「笑顔」で生きてみよう…と結んでいる。

ユーモアとのんびり、ゆっくりはとても大切だと思う。

 

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ほのぼのと

川あそび

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夏休みになると、友達と連れ立って川に行った。

小学校の頃は石橋という所。川を渡るのに大きな岩を橋にしていたので、はらばいになって渡った。雨の降った後などは、岩の間をゴウゴウと水が流れていくのが恐くて、おそるおそる渡ったことを思い出す。

石橋を半分ほど渡った所に石ばかりの中州があり、そこにぞうりやタオルを置いてから川に入った。

ずーっと上の方まで浅瀬になっていて、それから徐々に深くなっていたので、みんなで楽しめた。今のようにプールも無い時代。幼子を連れた大人も何人もいた。

ごりという魚もたくさんいて、竹でくんで作った「ぶったい」というものや、「底びん」という箱型の木枠の底にガラスをはったもので覗きながら、小さな網でしゃくりあげて捕っている大人もいた。孫の水遊びの傍らで楽しんでいたのかもしれない。あの頃、「底びん」がほしかったなー。

川に行くのは、一日一回やったか二回やったか忘れたけど、決められちょった気がする。できるだけ長くおる為に、寒くなったら中州でひなたぼっこをしながら、小さな岩を持ち上げてごりを探したりした。おこぜややつめうなぎもおった気がする。

小学校の1年か2年の時、丁度仕事が休みやという、友達のお父さんが石橋に連れて行ってくれたことがある。川の浅瀬を少しのぼっていくと、淵の方に大きな岩があって、その周りは私の背丈ほどの高さで、そこまでの距離は2メートルもなかったと思う。泳ぎは「犬かき」しかできんかったけれど、岩まで泳いでいって、しがみつきよじ登るのがおもしろかった。

このおもしろさを友達にも教えようと、

「ここまできいやー」

「こわいけいやー」

「だいじょうぶ いけるいける ここでひっぱちゃおけねー」

「ほんとー ほんならいってみる」

と泳いできはじめて途中で、ブクブクブクーと沈んでもがきはじめたので、ワーと思って得意の犬かきで助けようとそばまで行ったら、どこをどう引っ張られたのか一緒にブクブクと沈んでもがいた…。

誰かが両腕に2人をかかえてひっぱりあげてくれた。気がつくと、友達のお父さんやった。ずーっと遠くに座っていたとおもったのに飛んできた。私のお父さんと比べると、小さなおじさんやと思っていたので、とてもビックリした。

いつもは口数の少ないおじさんやったけれど、そのまま家に連れ帰られ大目だま。そのあと、おやつをもらって二人で昼寝をした。

あれから、早明浦ダムができ、地蔵寺川も分水され随分と水量がへった。

過疎化がすすみ町の人口も年々減ってゆく。もう一度、石橋に行ってみたいと思うのに、降り口の階段が草におおわれて行けないのが残念。

毎年夏になるとそう思う。

 

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私の一冊

川村房子

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「4TEEN」 石田衣良 新潮社

東京月島。ジュン、ダイ、ナオトと僕テツロウの4人。思春期真っ只中の14歳。

この小説は8つの章にわかれている。

第1章は「びっくりプレゼント」。ナオトは早老症で入院。母親は今度の入院は長引きそうだという。僕たちは、図書館に行って詳しく調べた。へこんでいてもはじまらない。簡単にナオトをつれていかせはしない。3人は特別な誕生会を病室でやろうと作戦会議。

性についても多感な年頃。大人でも考えつかないような「びっくりプレゼント」を悪戦苦闘しながら用意する。

その他の章もこころ熱くなりゆさぶられる。

中学生の話しだけれど感動しクスリと笑わせてくれる。是非読んで欲しいのに、上手く伝えられないのがもどかしい。

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私の一冊

川村房子

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「スターダストパレード」 小路幸也 講談社

テレビでも放映された東京バンドワゴンの作者。図書館にあれば必ず読みます。これも図書館の一冊。

元暴走族のヘッド福山マモル。ハンサムで頭もよく優しさもあるが、家庭環境に問題があり、生きることをすてていた。それでも仲間には暴走以外のことは禁じていた。

そんな彼を無実の罪で逮捕した刑事の鷹原。刑務所に入れてくれた事によって、今までの生活から離れ自分を見つめなおすことができた。

出所の日、鷹山が迎えにきた。車の中には、母を不審死で亡くした5歳の女の子ニノン。母親は政治家の愛人だった。ニノンが何者かに狙われているため、鷹原のもと妻美里の所へ連れて行き、二人を守るよう依頼。恩義のあるマモルに断るという選択はない。

鷹原と美里とマモルとの過去。逃亡中、きっちりと距離をおいてついてくる一台の車。

母親の死の真相は?マモルのこれからは?鷹原との関係は?

テレビドラマのようにほっこりとさせてくれる小説です。

ある人との出会いで人は成長する。そういう経験のもてる人は幸せだとおもう。

川村房子

 

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私の一冊

川村房子

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「エムエス  継続捜査ゼミ2」 今野敏 講談社

図書館でも人気があって、この作者の本が入ると予約待ちになることが結構ある。以前にもこの作者の感想を書いた事がある気がするけれど…。

警察を定年となり、友人の女子大学長に誘われて、準教授として教鞭をとっている小早川。

彼のもつゼミ「継続捜査ゼミ」には5人の女子大生。「冤罪」をテーマと決めた。そんな折も折、大学構内で傷害事件がおこり、傷害容疑で小早川が警察に任意同行された。身に覚えがないのに執拗に問い詰められ犯人扱いされる。その精神的苦痛は大きい。警察時代の自分をふりかえってみると、犯人逮捕に必死になっていた自分がいる。自由に動き回れない小早川にかわってゼミ生は、回りの人の協力を得ながら真相を追究し、容疑を晴らしていく。

女子学生が選んだ冤罪事件も考えさせられる内容だった。

娯楽小説には最適だと思っているけれど、寝る間を惜しんで読んでしまうからそうじゃないかも。

川村房子

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