運動音痴の私が絶対に渡ってはいけない、幅50㎝ほどの板を渡してあるだけの簡単な橋「はしとこ」にまつわるエピソードです。
ある日祖父に連れられ、その頃とても可愛がっていた子犬(ロク)をお供に、その橋を渡って対岸の南泉に出かける羽目になりました。
事件は帰路に起こりました。
最後の三枚目の板が深い淵の上に架かっていることもあり、恐怖心がだんだんと増幅されていきます。
ロクにとっても試練です。怖気づき、おしりが引け、見なくてもいい川面を覗き込みながら、恐る恐る右、左と足を運びます。
あと少し、という所で ”チャポン” 淵に落ち、流されてしまったのです。
でも野生は強い。
透明感のある深い緑色の淵からポッカリとその愛らしい白い頭を出し、私の手元に戻ってきたのです。
「はしとこ」への私の恐怖はこの日を境にマックスです。
「二度とこの橋を渡るものか!」
まさかその橋を渡った所の男性とその後ご縁があり、こうして余生を過ごすことになろうとは、その頃は想像だにしなかった事です。