「メェ~~」
「メェ~~」
小学生の頃、山羊の鳴き真似をするのが流行った。
と言っても、私と近所の今ちゃんの二人だけ。
家から500メートルぐらい登った所に住んでいる今ちゃん。
今ちゃんちでは山羊を飼っていた。
ある日、いつものように山羊が鳴いているので、下から私が鳴き真似をして「メェ~~」と言うと、向こうも答えてくる。
おもしろくて何度も何度も繰り返し、だんだん声のする方へ近づいていくと、山羊だとばっかり思っていた「メェ~~」は、何と、今ちゃんだった。
今ちゃんは、最初からわかっていたんだ。
3歳年上の今ちゃん。
小学1年生の時から、毎朝、学校へ連れて行ってもらった。
かしこくて、足も速く、何をやってもあこがれの存在。
その今ちゃんに、ついに卒業の時が来た。
無事、卒業式も終わった次の日、「今ちゃん!行こう~!」
何と、私は、いつものように迎えに行ってしまった。
当然、今ちゃんは、「・・・???」
あれから、56年。
いろんなことがいっぱいあり、今も同じ場所に暮らしている。
そして私は、「今ちゃん!行こう~!」と、相変わらず言っている。