実りの秋。土佐町では、ほぼ稲刈りが終わりつつあります。
つい2週間ほど前、10月6日のこと。
町のあちこちで稲刈りをする人たちの姿を目にしました。
黄金色の田んぼの中を「ブーーーーン」というコンバインの重低音が響き、その合間に「ピッ、ピッ、ピッ」という高音の機械音も入り込みます。
「ピッ、ピッ、ピッ」はコンバインが後方にバックする際の音で、田の中でコンバインが向きを変える時に鳴ります。
この2つの音は、この土地が稲刈りの時期を迎えたことを教えてくれます。厳しい暑さが続く中、稲の成長を見守り続けた農家の方たちの苦労が報われるときです。
稲は良い天気が続き、稲が「ちょうどよく」乾いた時に刈ります。
農家の方たちは天気予報をにらみ、晴天が続いた後の大体この日、と稲刈りの日の狙いをつけます。機械や道具の準備をし、人や時間の段取りもバッチリ、さああとは刈る時を待つのみというところまで整えます。
でも自然は人の思い通りにはならず。狙った日の前日や明け方に雨がぱらつこうものなら稲が濡れてしまうので、稲刈りはできず。再度、日を決め直すことになります。
大小さまざま、何面もの田で稲を育てている方は、何日もかけて全ての稲を刈るわけです。日程の段取りの多さたるや。人間の思い通りにはならない気候とより向き合う時期、農家さんの間で交わされる会話は、主に天候についてと「稲刈りは終わったかよ?」という互いを気遣う言葉。
町のあちこちでは「はぜ干し」をしている風景も見ることができます。(写真中央奥をご覧ください。)
はぜ干しとは、田に竹などを組んで「はぜ(はざ)」を作り、束にした稲を逆さまに掛けて干すことをいいます。はぜ干しすると、茎や葉に残っている栄養分がゆっくり一粒ずつにおりてきて旨味や甘味が増すそうです。そのお米の味は格別だといいます。
お米を作っている人は、自家用のお米ははぜ干しする方も多いです。干してある稲のそばで耳をすますと「プチ、プチ」と一粒ずつが乾く音が小さく聞こえます。
10月6日は、さらさらと稲が揺れる気持ちの良い風の吹く日でした。稲刈りを待つ田のそばにしゃがみ込むと、頭を垂らし風に揺れる稲の間から、小さな虫たちの声も聞こえてきました。
夕暮れどきには、山裾から空にのぼった満月が、稲刈りが終わった田の数々をぼんやりと照らしていました。