2019年6月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

尾崎康隆

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「ドオン!」 山下洋輔 文, 長新太 絵 福音館書店

うちから追い出された“オニのこ ドン”と“にんげんのこ こうちゃん”。
ふたりの間で突然始まったドラムバトルに、気づけばおとうさんやおかあさん、ペットのねこやうし、まちのみんなも加勢して…。

ドンドコ ドンドン ドン!

ドコンコ ドコンコ ドン!

ドンドコ ドンドコ ドコドン ドン!

ドカシャバ ドカシャバ ドカドカドカ!

ドンカカ ドンカカ ドカカカドン!
そして、不意にみんなが同じタイミングで鳴らした「ドオン!」

 

長新太さんの絵本は大好きで子供たちにもよく買って帰るのだけど、その中でも、ジャズピアニストの山下洋輔さんと共著したこの本は特別。
「みんなで生きる」って、きっとこの本で描かれたようなことだと思う。
ひとりひとり違うリズムは、ひとりひとり違う意見や哲学をもっているってことでもあって、それがぶつかり合うとケンカになることもある。
けど、ふとしたタイミングで、同じ「ドオン!」を鳴らしてしまうこともあって、ワッハッハって笑って「またやろうね」って別れることもある。

ひとりひとり違う人間。無理に合わせる必要なんてない。
それでも、ちょっとした一瞬の「ドオン!」があれば、一緒に生きていけるんだよ。

尾崎康隆

 

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高知の方々はもちろんご存知のことと思いますが、嶺北地方(大川村・大豊町・本山町・土佐町)の一大イベント、れいほく博の開催が近づいています。

れいほく博ウェブサイト

今年7月7日から12月25日までを期間として、嶺北地域で「アウトドア」「生活文化」「食」をテーマとした地域博覧会「土佐れいほく博」を開催します。
「土佐れいほく博」は、パビリオンを設置するのではなく、各町村の既存イベントを磨き上げて実施するほか、ラフティングや登山などの「アウトドア」や地域の生活文化を体験していただく観光キャンペーンです。ーれいほく博ウェブサイトより

 

2019年7月7日の開会式を見据え、「4町村の方々にれいほく博ポロシャツを着てほしい!」というれいほく博事務局の思いを受け、とさちょうものがたり x どんぐりのシルクスクリーンでの制作を行なっています。

4町村の関連団体のみなさまに声をかけさせていただき、2019年6月7日時点で200枚を超える発注をいただきました。みなさま本当にありがとうございます。

 

カラーバリエーションは上にある5色。ロイヤルブルーが一番人気な気がします。

 

 

 

印刷はもちろんどんぐりのメンバーさん。今ではすっかり職人さんの域にまで達しています。

 

れいほく博は7月7日が開会式です。みなさまぜひ「れいほく博記念ポロシャツ」を着て盛り上げましょう!

 

 

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私の一冊

藤田純子

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「牛をかぶったカメラマン」 レベッカ・ボンド 光村教育図書

この本はまさに、事実は小説より奇なり!でございました。

ロンドンの町にまだ馬車が走っていた頃、リチャードとチェリー兄弟が、鳥たちをできるだけ刺激せず自然体で撮影するために、様々なカモフラージュを自作したり、困難も危険も気転にサバイバルしたり、自分たちのわくわくを探求するまっすぐな心で成し遂げていった素晴らしい功績のお話です。

特になんとか工夫するという精神を大いに発揮して実現させていく行動力には、読んでいて彼らのわくわくが伝わりました。
本の最後には、実際の撮影風景も載せられていて「本当にこんなことをしてたんですね!」って。

実はここが一番好きでした。
やはり事実は、心に訴えるものがありますね。

藤田純子

 

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Tosa Sake Dreams

春の開花

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3月。今季最後の酒樽を仕上げたときに、土佐町の季節の変化が私の五感を満たした。

初めて聞く鳥のさえずりが耳に届き、冷たい冬から目覚めたばかりの肥沃な大地の匂いと、青々とした森林の香りが混ざり合い春のそよ風に乗っていた。

早春の繊細な開花がその色づきを大胆に見せはじめ、それは酒の醸造が結実する時でもあった。

醸造の季節である冷たい冬に米と水から、作り手たちによって愛情を注がれ生み出されたその芳香と滋味が自己表現を始めるのである。

酒造におけるこの季節感覚は私にとって新しい経験であった。前職であるノルウェーのノグウェ・ネウで、私は通年製造である四季醸造を行っていた。それはノルウェーの夏の気温の低さと、あくまで少量の生産(600L)を行っていたから可能であったことだ。小規模での温度管理は比較的に容易だったのだ。

もちろんノルウェーでも長く暗い冬の後に来る春の到来を、私は心から歓迎していたのだが、土佐町ではまた別の意味での春の到来を経験した。それが酒の醸造の本当の意味を私に教えてくれたように感じる。

先の話ほどロマンティックではないかもしれないが、もうひとつ同じくらい大切なことを私はここで学んだ。それは醸造場と醸造に使う道具が、非常に清潔に丁寧に保たれ整理されていることだった。

それはもちろん来るべき秋に再びすみやかに醸造を始めるためである。

全ての作業が終わった後、私は酒蔵の全て ー洗浄され、分解され、丁寧に保管された全てー を丹念に観察して歩き回った。

それは醸造場とその中身が暑い夏の日々を耐え抜き、不潔なものがあちらこちらで育ってしまう心配をなくすためのものである。

そのこと自体は、いわゆる酒造のイメージ、SNSなどのメディアで目にするようなイメージとはおそらく異なるものだろう。だがそれは確実に私が最大の尊敬の念を感じた部分でもあるのだ。

それから春は、様々な新しく美味しい酒が、遠方や海外のお客様に向けて着実なパレードを行う時期でもある。

この時期に酒蔵で働き、様々な方法で酒が準備され、(生酒以外の場合)火入れされ、瓶詰めされる様子を目にするのも楽しいものである。この種の春の贈り物をちょびっとずつ味見することも、もちろん素晴らしいことである。

酒のいくつかは、完成までに長くかかるものもある。無数の風味と芳香が出会い、婚姻を結び、桂月の作り手たちが注入した醸造の技と素材の可能性の頂点に達するために、年月と成熟をより長く必要とする酒だ。

自らがその一部となり、素晴らしいチームと共に働いて作ったものが完成する時。そんな時ほど充足感を得ることのできる時はない。

それから全ての工程と意図が、多くの人々と共有できる美酒の中において結実する様を目にすることも素晴らしい。

まったりとした夏の夜に、適度に冷やした桂月を口にする瞬間を私は心待ちにしつつ、同時に次の輝かしい醸造の季節を夢見てもいる。

Spring Blossoms

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Tosa Sake Dreams

Spring Blossoms

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In March, as we built up the last sake batches of the season, the changes in Tosa cho began to fill my senses. There were bird songs new to my ears and the smell of the fertile rich earth waking up from the cold winter, mixed with the scent of the lush mountain forest on the spring breeze. The early spring’s first new delicate blossoms began to boldly show their colours, and so too it was the moment for the sakes that had been brewed to start to blossom. Their aromas and flavours beginning to express themselves from the rice and water so carefully and lovingly crafted by the brewers over the cold winter brewing season.

This sense of the seasonality in sake brewing was a new experience for me. In my previous position at Nøgne Ø brewery in Norway I had been doing shiki jozo, year-round brewing. This was largely possible because of the relatively cool climate during the Norwegian summers and the fact that I was making small batches (600Li) and so it was relatively easy to maintain a small air-conditioned brewery. Of course, in Norway, I welcomed the spring with great joy after the long dark winters there, but for the first time in Tosa I experienced the spring in a new way, and in a way that showed its true meaning to the brewing of sake.

The less romantic but equally important thing I was to learn was how the brewery and all the brewing equipment needed to be scrupulously cleaned and put in order so that come autumn the brewing could be seamlessly started again. I have to say, when it was all done, I walked through the brewery in wonderment at seeing everything, cleaned, disassembled, and carefully stored so that the brewery and all its contents would make it through the warm summer months without the worry of nasty things starting to grow anywhere. This is maybe not the part of Sake brewing that we see on flashy social media platforms but is certainly something that garnered my greatest respect.

The spring then, was the time for a steady parade of different, new and delicious Sakes being made ready and sent out to customers far and wide. It was fantastic to be working at the brewery and see the many varied ways the Sake was prepared, pasteurized (or not in the case of the Namazakes) and then bottled. Of course, it was always great to get a little taste now and then of these spring offerings. Some sakes we will have to wait longer for though. They will need to age and mature much longer, until the myriad of flavours and aromas combine and marry to achieve the pinnacle of all the brewing skills and ingredients that the Keigetsu brewers have put into them.

There is nothing quite so satisfying as seeing something that you have been part of, working together on with a great team, be completed.  And then seeing that all the steps taken and attentions given have culminated in something pleasing, to be shared with others. I am looking forward to sipping on a nicely chilled Keigetsu Sake on a balmy summer’s night and dreaming about the next glorious brewing season.

春の開花

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私の一冊

西野内小代

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「人は皆、土に還る 」 曽野綾子 祥伝社

カトリック教徒の曽野綾子さんの作品です。
援助の品を送った国には、そこがどんなに渡航に困難な地域でも必ず自らが赴き、ご自分の目で援助が正しい目的で使われているかどうかを確認されるというパワーの持ち主です。

そこらのエセ篤志家とは格が違います。作品にも説得力があります。

 

世話をし過ぎると成長しない植物、手厚く世話をしないと成長しない植物、そこの見極めが人間社会でも同様であると関連付けられています。

この本から実行してみた事があります。

落花生を植えてみました。やせた土地でもよく育つツートップらしいので…。

畑仕事初心者でも大丈夫かしら?

西野内小代

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左胸に印刷したロゴ

 

土佐町や嶺北に在住ではない方のために、まず「しゃくなげ」の紹介から始めましょう。

「しゃくなげ」は、土佐町のお隣、本山町にある障がい者支援施設。正式には「社会福祉法人 本山育成会しゃくなげ荘」、地元の人には「しゃくなげ」と呼ばれています。

社会福祉法人 本山育成会しゃくなげ荘ウェブサイト

本山育成会では、入所者やグループホームにて生活している方々が日常生活において必要な習慣やマナーを身につけ、健全な社会生活、家庭生活への適応性を高めるため、生活支援や作業支援を行います。ー本山育成会ウェブサイトより

 

「しゃくなげ」では障がい者の方が一緒に居住して寝起きを共にしています。農園も運営し、有機無農薬で作るお米や野菜を育てています。

そのしゃくなげが、農園で作った農産物を主に使ったお店を開くという。店名は「カフェレスト しゃくなげ」。モーニングとランチを提供するそうです。

この記事を書いている時点(2019.6.7)はとっくにお店がオープンを迎えていますが、まだお店がオープン前の3月後半、しゃくなげの職員さんから「お店で働く人が着るポロシャツを作ってほしい」という注文をいただきました。

カラーはピンクとネイビーの2種類。

デザインはコーヒーカップから立ち昇るしゃくなげの花。通常、しゃくなげの花はこんもりとまとまっているので一枚一枚バラした様子は少し珍しいかもしれませんが、これが合わさるとしゃくなげになります。

 

 

背中

 

もちろん印刷はシルクスクリーンで、どんぐりのメンバーさんが行いました。職人の技!

「どんぐりのメンバーさん」というより「どんぐりの職人さん」と呼びたい

できたてホヤホヤなり。

できたてホヤホヤなり。

 

そしてオープン後のある日、「カフェレスト しゃくなげ」を訪れランチを食べてきました。この日のランチメニューはホイコーロー。

 

ボリュームいっぱい

お腹いっぱいになって700円!これは施設が自分たちで農園を運営しているから実現できる値段なのだそうです。

 

一息ついたときに撮影させていただきました。

障がい者支援ー有機農業ー健康的で美味しい食事ーローカルビジネス、まだまだ要素はたくさんあるかもしれませんが、そういった地域社会に必要とされている物事や仕事がとてもきれいに繋がって循環している様子に脱帽する思いがします。

これから度々食べに訪れる場所になることは間違いない「カフェレスト しゃくなげ」です。

 

カフェレストしゃくなげ   〒781-3601 高知県長岡郡本山町本山530−8

 

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私の一冊

石川拓也

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「空をゆく巨人」 川内有緒 集英社

噴火直前のマグマのようなエネルギーを感じる一冊です。

蔡國強さん(さい・こっきょう・ツァイ・グオチャン)といえば、現代アートの世界で知らない人はいないぐらい世界的評価を受けている芸術家ですが、彼が無名の若者だった頃から、とても力強いサポートをし続けていた実業家がいました。福島県いわきに在住の志賀忠重さんという方です。

この本は、そのふたりの出会いと絆を追ったもの。

一見、無茶と思えるような蔡さんのビジョンや計画を、志賀さんと、時にはいわきの人々と一緒に乗り越え実現させていく様子が詳細に描かれています。

蔡さんは、いわきの人々に支えられながらアート作品を具現化し、それが蔡さんが世界的に評価を受けるきっかけにもなったのですが、志賀さんをはじめとしたいわき陣も、「サポートしている」という感じでもなく、「一緒になって遊んで楽しんでいる」とでもいうような軽快さがあったようです。

何か大きなプロジェクトが、参加している人たちにとってはあんまり意味はわかんないんだけど、大きな熱気や大きな流れとなって実現に一気に向かう様子が爽快です。

得体の知れないものが実現しようとしているという感覚は、人々の助けを借りないと完成できないような大きなアート作品にとっては、参加する人々のひとつの強い理由になるのでしょうし、単純に楽しそうだなと思います。

蔡さんが世界を相手にぐいぐいと快進撃を続け、それとともに活動範囲もどんどん広がり、蔡さんの作品制作をサポートするいわきの人々も世界の美術館に赴いて制作を行う。現地の美術館関係者には「チームいわき」と呼ばれながら。

最高かよ、と唸ってしまう関係ですね。

 

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くだらな土佐弁辞典

いぬる・もんてくる

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いぬる・もんてくる

【動詞】 いぬる=去る もんてくる=戻ってくる

▼使用例:

「もう、いぬる」「あとでもんてくる?」
(「もう行く」「あとで戻ってくる?」)

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ながい旅でした。」 砂浜美術館 編集・発行

「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」

この本を作ったのは、高知県黒潮町にある「砂浜美術館」。

町に新しいハコモノを作るのではなく、もともとここにある海や砂浜、ここにある季節に沿った人々の営みや知恵を「作品」として、この環境そのものを美術館にしようという考えで砂浜美術館は生まれたそうです。
時は1989年、今から40年前。その考えにとても共感します。
40年もの間、この考えでやり抜いてきたことには並々ならぬ苦労もあったことでしょう。

今年のゴールデンウィークに訪れた黒潮町の砂浜美術館でこの本を購入しました。少し黄ばんだこの本を手にした時から、この本の持つ体温が伝わってくるようでした。本にはそういう力と役割があるように思います。

黒潮町の海に打ち上げられたものが紹介されていて、くじらの骨ややしの実、船のスクリューや気象観測器といったものもあります。

2枚目の写真はその中のひとつ「海流ビン」です。アメリカのブライアン君(当時11歳)がタンカーで働く人に頼んで太平洋側に流したもの。9ヶ国語でメッセージが書かれており、瓶の口はロウで固められて水が入らないように工夫されていたとのこと。16歳になったブライアン君からは「理科の実験で流した」と返事が届いたそうです。流れ着いたものにも物語があるのですね。

この本の中にこんな文章があります。

「海岸に流れ着いたものを、単なるゴミとしかとらえることのできない感性より、素敵な砂浜美術館の作品、そうとらえられる感性。それが私たちの求める姿です。」

私たちのそばにも「作品」となりうるものが、あちらこちらにあるのではないでしょうか。

鳥山百合子

 

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