『「失敗」の日本史』 本郷和人 中央公論新社
時代は変化し、文明は進化しようとも、人間の本質、本能、欲望に大した変化はなく、対象が少々異なる程度、歴史は繰り返す。
歴史に名を残した武士や大河ドラマ等で大々的にとりあげられる代表的な戦などについて、何故勝って当然の陣営側の負け戦となってしまったのか、誇張ともとれる状況などを筆者の知識や詳細な資料を元に謎解き風に解明している。
少人数で大群の今川軍に勝利し、今川義元をも討ち取ったことで有名な織田信長の「桶狭間の戦い」が人数的な誇張なのか、そして今川義元は何故生き延びる事を考えずに討ち取られたのか、納得のいく数字をあげ、当時の勢力図も考慮し、考察している。この伝説が太平洋戦争においても大国アメリカに勝利できるという刷り込みになったと指摘する。
因みに、今川義元は何としてでも生き延び、時の熟すのを待つべきであり、徳川家康(伊賀越え)や織田信長(金ヶ崎の退き口)のように、なりふり構わず逃げなかったことが最大の失敗であると述べられている。
歴史を学ぶことは未来への教訓であり、受験の暗記科目ではないと痛感。