「本が語ること、語らせること」 青木海青子 夕書房
奈良県東吉野村にある「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」のことを知ったのは、『彼岸の図書館 ~ぼくたちの「移住」のかたち』(青木真兵・海青子著 夕書房)に出会えたからでした。
人口1700人ほどの小さな村の古民家に移住したお二人は、蔵書を居間に開架して私設図書館ルチャ・リブロを開館します。図書館に訪れる様々な人との対話を重ねるうちに、図書館は少しずつ枠を広げ、知の拠点へと発展していきます。とても刺激を受け、共感することも多い本でした。
その私設図書館ルチャ・リブロの司書である青木海青子さんが、図書館での6年間を通じて感じたことを綴ったエッセイが収められたのが『本が語ること、語らせること』です。本書にはエッセイと共に、人びとから図書館に寄せられた悩みに海青子さんと夫でキュレーターの真兵さんの答えた記録が収録されています。
海青子さんたちと同じく本という「窓」を持つことと、本のある場所に身を置き“書物の声を発さずとも人に語りかけ、また語らせる力”のおかげで今の自分があるように思います。毎日のくらしに頑張りすぎている人に「ぼちぼちでかまんきね」の言葉と共にそっと差し出したい本です。