朝の天気予報で、今日9月10日は雨が降るでしょう、と確かに言っていた。
午前10時頃から徐々に灰色の雲が広がり、湿った生温かい空気を感じるようになった。顔を合わせた近所の人が「そろそろ雨が降りそうやね」と空を見上げてつぶやいた。
正午過ぎ、雨がぽつり、ぽつりと降り出した。5分後には傘が必要になり、さらに5分後には軒下に避難しても雨が吹き込み、肩もズボンも足元もびしょ濡れになるほどの土砂降りになった。頭上では時々雷が響き、ぶ厚い雲の内でピカっと一瞬だけ光る。
山を背景にして、雨は天から地まで続く斜線を描くように、東へ東へと移動しながら降り続ける。
以前、土佐町石原地区出身で司馬遼太郎さんの編集者だった窪内隆起さん(現在93歳)が「ヤリカタギ」という話をしてくれたことを思い出した。
「雨が風のぐあいで柱のようになり、それが何十本も連なる」様子をそういうのだと教えてくれた。目の前の風景がまさにヤリカタギじゃないか、と思いながら編集部(職場)の窓を閉める。
「この雨で稲刈りも一旦中断やねえ」と町のお母さんが話していた。聞いてみると、酒米の収穫がもう始まってるいるらしい。
強烈な雨は10分ほど降り続いたあと少しずつ雨脚を弱め、空が白く明るくなってきた。小鳥の遠慮気味な鳴き声も聞こえ、「ああ、雨が止んだのか」と分かる。
でも油断してはならない。5分もしないうちにまた雨音が激しくなる。雨の音の大小を聞きながら働くこと約1時間。窓から空を見れば、雨はしとしとと降っている。外に出るとあたりは雨と山のむんとした匂いで満ち、午前中よりも多分1~2度気温が下がったように感じる。
降ったり止んだりを繰り返しながら、少しずつ秋に向かっていくのだろう。晴れた日の夜には、もう随分前から虫の声が聞こえているのだから。