「祈りの幕が下りる時」 東野圭吾 講談社
同じ作者の作品で映画化もされた「麒麟の翼」は、日本橋の麒麟の像の下で死体で発見された男性の死の真相が明らかになっていく過程で浮かび上がってくる父と子の切ない絆を描いたミステリーでした。
この作品は「麒麟の翼」事件を解決した刑事加賀恭一郎をめぐるもうひとつの父と子の物語ともいえるものかもしれません。ミステリーとしては勿論、物語としても魅力ある作品だと私は思います。
矢野信子
著者名
記事タイトル
掲載開始日
山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
「怪人二十面相」 江戸川乱歩 ポプラ社
森 啓
峰石原の谷の渕の一つに、昔エンコウが棲んでいたと言われる渕がある。
土地の老婆おりえと言うものの年若い頃生んだ子どもは、生まれるとすぐに立って走りまわり、頭のいただきに皿のようなものがあったので、エンコウ渕のエンコウにみいられたものであろうと評判になって、家族の者が恐れて頭の皿に釘を打ちこんで殺したということじゃ。
また、東石原の惣川(そうかわ)のフクチビというところの渕にもエンコウが、棲んでいて、そこの近くの農家のおさとと言う娘が、そのエンコウにみいられてみごもったので、近所の猟師が鉄砲を持って渕をねらったと。
するとそれだけでエンコウはねらわれたところに弾に打たれた孔(あな)のようなものができて死んでいたと言われ、その後この猟師の一家には不幸がつづき、御祈祷でみてもらうとエンコウをねろうたたたりだと言い伝えられているそうじゃ。
町史(桂井和雄 「土佐の伝説」第二巻より)
「おしいれのぼうけん」 ふるたたるひ たばたせいいち
土佐町みつば保育園の山下志保先生が教えてくれた「おしいれのぼうけん」。
写真に映っている横顔は、子どもたちが恐れる“ねずみばあさん”。
志保先生がねずみばあさんのセリフを『ねずみばあさんの声』で読むと、
「『先生、似いちゅう!』って子どもたちが言いゆう。」と先生は笑って教えてくれました。
うちのすえっこもねずみばあさんを恐れるひとり。
朝、保育園にいく前になかなか着替えなかったりする時「あ!ねずみばあさんが見いちゅう!」と言うと
一発で言うことを聞きます(笑)
ありがとう!ねずみばあさん!
(それはともかく)怖いものがあるって大事なことやな、って思います。
「バガヴァット・ギーターの世界」 上村勝彦 ちくま書房
「バガヴァット・ギーター」はインドの聖典のひとつ。
インド人、特にヒンズーの人々にとって、その精神性の根幹にある大事な一冊です。マハトマ・ガンディーも彼の行動の根拠としてこの本を挙げています。
インドに行くとよくわかることですが、日本の文化のルーツの多くがそこにはある。インドで生まれ、中国というフィルターを通ったものが古代や中世の日本にたどり着き、いつしか日本の伝統となっていたりします。
この季節にプロ野球選手が挑戦する「護摩行」なんかもそうですね。
最後にこの聖典の中でももっとも知られている一節を。
あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない。また無為に執着してはならぬ。(第2章47節)
「こんとあき」 林明子