鳥山百合子

メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 10

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

夏のお祭り

夏、 土佐町各地でお祭りが開かれた。ちょうちんの明かりのもと、よさこいや土佐町音頭といった盆踊り、りんごあめやかき氷などの夜店、花火も上がってとてもにぎやかだった。

お祭りの最後は抽選会。あるお祭りの抽選会では、ガラガラを回して出てくる木札に番号が書いてあり、その番号の抽選券を持つ人が景品を手にする。

景品はかなり実用的でクーラーボックスや町指定のごみ袋半年分、自転車、ビール1ダースなど。その 中で私が一番欲しかった物はすげがさだった。

土佐町に引っ越してきたばかりの頃、すげがさをかぶり田畑で働いている人を見た時は驚いた。時代劇や社会科の資料集で見たことがあったすげがさを実際に使ってみると、内側の五徳と呼ばれる輪っかに頭がはまって風通しがよく、顔にちょうどいい日陰を作ってくれる。

いよいよ次の景品はすげがさ。マイクを持った人が 声高にゆっくりと番号を読み上げた。残念ながら最初の数字から違った。番号を呼ばれて走っていったのは小さな男の子だった。
結局私は何も当たらなか った。 が、踊って笑ってとても楽しかった。お祭りを 大事にしている人がいるからお祭りは開かれる。そう感じた4年ぶりのお祭りだ った。

(風)

 

2023年9月7日、高知新聞の「閑人調」というコラムに掲載された記事です。今年の夏、4年ぶりに開催された夏祭りのひとコマを書きました。

夏の間、土佐町の各地で行われる夏祭り。どのお祭りでも盆踊りを踊り、夜店が出て抽選会があって花火が上がる。お祭りに合わせて帰ってくる人もいて、どこもわいわいと賑やかです。

この記事が掲載された後、ある方から「このお祭りは“野中祭”じゃないかねえ」と聞かれました。そうです、その通り!

野中祭の抽選会は「ガラガラを回し、出てきた木札の番号が当たり」というシステム。そのガラガラと木札の風情が最高なのです。当たった人が次の景品の当たり番号を出すため、ガラガラを回せます。未だあのガラガラに触れたことがない私、来年こそ回してみたい!そして願わくば、すげがさを手に入れたい!景品を選ぶ方々。来年の野中祭の景品の一品に、是非ともすげがさ入れてくださるよう、お願いいたします。

四年ぶりのお祭りに集った人が皆、とてもいい顔をしていたことが印象的でした。準備してくださった方々、ありがとうございました。

 

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読んでほしい

地鎮祭

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2023年6月27日、土佐町の藤田千春さんが新築する家の地鎮祭が行われました。

地鎮祭は、建物の新築や土木工事の起工の際などにその土地の神様を祀り、工事が安全に進んで無事に完了すること、土地や建造物が末長く安全であることを祈願するために行われるお祭りです。

敷地内に立てたテントの四方に竹を立て、しめ縄で囲みます。神様に来ていただく神聖な場、神域を作るためです。

 

降神の儀(こうしんのぎ)

神主は白髪神社の宮司である宮元序定さん。参列者は施主の藤田千春さんと大工の森岡拓実さんです。

施主の千春さんは、拓実さんが大工になったばかりの頃から、自分の家を建てる時が来たら拓実さんにお願いしたいと思ってきたとのこと。それがいよいよ実現するという訳です。

祭段に神様をお招きするための「降神の儀(こうしんのぎ)」。

宮元さんが地鎮祭の神様について教えてくれました。この神様たちにこの家の完成を見守ってもらえるように、そして大工さんの安全と施主さんが安心して暮らせるように祈願するそうです。

○白髪の神…氏神様
○大地主(おおことぬし)の神…大地の神様
○家船二柱(やふねふたはしら)の神 …夫婦神で家屋の神
○手置帆意(ておきほおい)の神…技術の神

宮元さんが太い声でゆっくりと「お〜 お〜 お〜」と唱えます。静寂の中に響く声。神様の存在を感じるひとときです。

 

祭段には、お米や御神酒、昆布や野菜やお菓子などが供えられています。

 

四方祓い(しほうはらい)

鬼門と言われる敷地の北東から右回りに、四方を順番に祓います。「四方祓い(しほうはらい)」といいます。鬼門とは、日本では古来より鬼の出入り方角であるとして忌むべき方角とされています。

宮元さんが袂より小さく四角に切られた切麻(きりぬさ)を握って、左、右、左へとお祓いします。切麻は、はらはらと地面に落ちていきます。この土地を祓い清め、工事をする人などに災いが生じないように、という願いが込められています。

 

玉串奉奠拝礼(たまぐしほうてんはいれい)

施主の千春さんが、宮元さんから手渡された玉串を神様に捧げておまいりします。これを「玉串奉奠拝礼(たまぐしほうてんはいれい)」といいます。玉串とは神様が宿るとされる榊(さかき)の枝に、紙垂(しで)や麻を結びつけたものです。

 

大工の拓実さんも神様へ玉串を捧げます。これで安全に家の建築が進んでいくことでしょう。この土地の神様が守ってくれるはずです。

 

白髪神社秘伝の「鎮め物」

地鎮祭の最後に、宮元さんが手渡していたものがありました。白髪神社秘伝の「鎮め物」です。麻のひもで結ばれており、大地の神様の心を鎮めるためのもので、置いておくだけで目に見えない煩わしいものから家を守ってくれるそうです。

昔の家は高床式だったので土中に。現代では、鎮め物は基礎のコンクリートの中央に置き、家屋とその土地のお守りとされています。鎮め物は、大工の拓実さんに手渡されました。

 

地鎮祭が終わったあと、拓実さんがテントの四方に立てていた竹をまとめ、敷地の鬼門、北東側に立てかけていました。こうすることで鬼門から災いが入ってこないようにするそうです。

 

日本では古来より、たくさんの神様がいると信じられてきました。あらゆる現象や、太陽や月、風や家の台所などまで、存在するすべての物事に神が宿っていると考え、無数の神々を「八百万の神(やおよろずのかみ)」として崇めてきました。

地鎮祭で宮元さんが唱えていた祝詞に「八百万の神」という言葉がありました。

家の神様、太陽の神様、月の神様、風の神様、この土地の神様…。どうかこの地の神様たちが、この家と、この家に集う人たちを見守ってくださいますように。その願いが言霊となって、あたりに響いていました。きっと神様たちは心得てくださっている。そんな気持ちがしました。

 

9月現在、工事は安全に順調に進んでいます。千春さんの家は今年の冬に完成予定です。

 

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 9

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

ろいろい

制作に5年をかけた絵本がついに完成した。土佐町をテーマにした絵本で、題名は「ろいろい」。「ろいろい」は土佐弁で、うろうろするという意味だ。

蛇腹式でひとつながりになっているページをのばすと、主人公が歩く道々で出合う四季の風景や行事、歴史や言い伝え、町の人の姿が描かれている。

絵本に何を描くのか?制作チームから出てきたのは町の日常の風景だった。お祭りや棚田や街並み、神社や川や星空、そして町の人。「昔はボンネットバスが走っちょった」「田の草取りに背蓑(せみの)は欠かせない」「もちまきも!」。町の今昔が描かれ、登場する物事はこれからもこの町にあってほしいという願いでもあった。

この絵本を制作するにあたり、町の方たちに大変お世話になった。昔の写真を見せてもらい、各地の風習の意味を教えてもらった。解説書も作り、伝統行事の歴史的背景や言い伝えを詳しく書いた。稲叢山の桜、虫送り、かじ蒸し…。

これらの風景画あるのは、この地で生きてきた先人たちがいたからこそ。だから今の私たちの暮らしがある。そのひとつながりの中で私たちは生きている。絵本を通し、そのことが少しでも伝わればうれしい。

(風)

 

2023年8月23日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。「とさちょうものがたり」でも紹介している土佐町の絵本「ろいろい」のことを書きました。

ここにも書きましたが、絵本「ろいろい」が完成したのは町の方たちのおかげです。本当にたくさんの方にお世話になりました。土佐町の今昔の話を聞かせてもらい、昔の写真を見せてもらい、資料をお借りしたり、たくさんのご協力があったからこそできた一冊です。

絵本のページをめくり、家族や友人との会話のきっかけになれたら嬉しく思います。そして、町の今昔の姿を知ることで、次の世代へ引き継いでいこうとする思いに少しでも繋がればと願っています。

もうすぐ販売も始まります!この絵本の舞台は土佐町ですが、どこに住んでいようと共感してもらえる内容になっていると思います。町の方たちや町内外の方たちに愛される一冊になりますように。

 

土佐町の絵本ろいろい ①

 

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高知新聞 閑人調 8

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

川で泳ぐ

青く澄みきった川。アユやアメゴの泳ぐ川。岩の上からザブンと飛び込むと耳元で水の粒がはじけ、暑さでぼんやりした身体が一気に目覚める。

高知に来るまで川で泳ぐなんてしたことがなかった。せいぜい足を水につけたり、網で魚を捕まえるくらい。川へ行って遊ぶことは、1日がかりの特別なイベントだった。

ところが今は「今日も暑いなあ。川行くか!」。タオルとゴーグル片手に近所の川へ。2時間ほど泳いで気分爽快。川はとても身近な存在になった。

私のお気に入りの場所は、飛び込める岩や子どもが遊べる浅瀬があり、木漏れ日がきらめいて小指ほどの魚たちが泳ぐ。セミと小鳥の鳴き声、水のせせらぎ。大きく息を吸い込んで水に潜れば、小さな悩みのあれこれは、まあいいかと思えてくる。

ただ7月下旬から「テジロ」と呼ばれるアブがブンブン寄ってくるのには参る。手足が白くハエのような風貌できれいな川にいる。血を吸うのでかわの吸血鬼と呼ばれ、水面から出た手足や顔の周りをしつこく飛び回り、とても厄介だ。

でも、逃げ回ってばかりもいられない。手でたたき、ひっくり返ったテジロを魚の餌となれとばかり、川へ投げるようになった自分に成長を感じている。

(風)

 

2023年8月4日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。タイトルは「川で泳ぐ」。

夏、子どもたちに何度も「川に行きたい!」とせがまれます。そう言われたら「よっしゃ、川行くか!」といそいそと水着に着替え、タオルとゴーグルを持って、近所の川へ。車で10分もしないところに、お気に入りのきれいな川があるなんて、なんて幸せなことでしょう。

岩から飛び込んだり、浮き輪でぷかぷか浮いたり、浅瀬に座ってぼんやりしたり、満足するまで遊んだら、家に帰ってアイスを食べる。これ、最高。

本当は、夏休みの間ずっと川で遊びたいのに7月下旬からはテジロが出現。いつも行く川にテジロが出ると、もっと川の下流で泳ぎますが、やっぱりいつものあの川が最高だなと思うのです。

 

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読んでほしい

川へ!

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「今日も暑いな」という日は、タオルとゴーグル片手に、車で10分ほどのお気に入りの川へ行く。

その場所には飛び込める岩と浅瀬があって、ちいさな子どもも安心して遊ぶことができる。3メートルほどの高さから飛び込むと、小さな魚たちが驚いて、あちこちに泳ぎ散るのが見える。水はきらきら、気分は爽快。近所にこんなきれいな川があるなんて、なんて幸せなことだろう。

ただ、7月下旬ごろから、テジロというアブがブンブンと飛び回るのには閉口する。テジロはきれいな川にいて、手で追い払ってもしつこく顔や手足の周りを飛び回り、血を吸うのでとても厄介な存在だ。まだ数匹ほどなら手で叩いてやっつけるのだが、8月ともなれば大群が襲ってくる。そうなると、もうこの川へは行けない。

なんとも残念。テジロ大量発生後は下流の別の川へ行く。このテジロ、なんとかならないものか…。

 

 

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 5

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

梅仕事

今年も梅の季節がやって来た。産直市で梅の姿を見つけ、1年ぶりに懐かしい 友人に会ったような気持ちになる。毎年、わが家では梅シロップを作る。このシロップを水や炭酸水で割ってごくごく飲む。これで夏バテ知らず、暑い夏に欠かせない飲み物だ。

まず梅をきれいに洗って水気を拭き取り、ヘタをようじで取り除いてガラス瓶に入れていく。コロンと弾む音が心地良い。瓶の底が梅で隠れたら次は氷砂糖を。この作業を交互に繰り返していくと黄緑色の梅と透明な氷砂糖の層が出来上がる。この色合いを眺めながら、今年の梅仕事を無事終えた達成感を味わうのもまた良い。

今年は小学校5年生の次女と一緒に作った。保育園児の頃から手伝っているので、もうすっかり一人前の仕事ぶりだ。次女の楽しみは氷砂糖。瓶に入れるタイミングで自らの口にもパクリ。 そういえば氷砂糖を買う時から既にウキウキしていた。

そんな次女を見て、私自身もそうだったことを思い出した。母が梅酒を漬ける時に口に入れてくれた氷砂糖、それが何よりの楽しみ だったことを。

長女と長男もしてきた梅仕事。子どもたちが大人になった時、この季節の恒例行事をふと思い出してくれたらうれしい。

2023年6月12日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。

我が家の恒例行事である「梅仕事」、梅シロップ作りのことを書きました。

子どもたちと一緒に梅を洗い、梅のヘタを取って、氷砂糖と一緒に瓶へ。氷砂糖を口に入れながらの作業はとても楽しいです。

「梅、いるかよ?」と近所の人が声をかけてくれることもあり、そんな時はさらに梅シロップを仕込みます。いくつも並んだ瓶を見てはちょっとした達成感を味わえるものお楽しみです。

この記事を読んでくださった方が「うちも梅シロップ作ってるから、いつでも家に寄ってね。ごちそうします」とメッセージをくれました。

四季折々の野菜や果物が地元で手に入ること。それらを工夫して使い、周りの人が喜ぶものを作ること。それはこの地の人たちがずっと昔から大切にしてきたことです。それがどんなに豊かなことであるか、日々噛みしめています。

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 5

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

初ガツオ

産直市の魚売り場へ行った。今が旬と言わんばかり、 今にもピチピチ飛び跳ねそうな魚が並んでいた。初ガツオだった。黒潮に乗ってはるばる太平洋を北上してきた初物、 目が合ったからには夕飯のおかずは決まりだ。でも丸ごと一匹をさばく自信は恥ずかしながらゼロ。冊を買うことにした。

売り場に並んだ冊には皮がついている。刺身にするには皮をはいだ方がいいのだろうか。店員さんに聞くと「皮付き、皮なし、どっちもいけるよ。好みは人それぞれ!」と笑う。
よく見ると皮は2種類。青味を帯びた黒、そして銀色に光って筋が入ったもの。違いがわからず、隣で熱心に選んでいたおんちゃんに聞いた。

「黒は背中、銀は腹じゃ。腹は脂が乗ってたたきにするとうまいで!わしは腹が好きじゃ」とガハハと笑う。 そして「ほら見てみい。背 中と腹の色が違うろう」と氷の上のカツオの群れを指差した。本当だ!

せっかくだから背も腹も買い、夜、皮付きのまま厚めに切っていただいた。背と腹の味の違いを考えながら食べたのだが、私の舌ではよく分からなかった。

が、初ガツオは口の中でとろけ、幾度となく店員さんとおんちゃんの笑顔を思い出させた。とても良い5月の一日だった。

 

2023年5月30日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。

今回は産直市に並んでいた初ガツオのことを書きました。

氷の上に並んだカツオたちはピチピチと銀色に光り、ぎろりとこちらを見ていました。はるばる太平洋を北上してきたのかと思うと、何とも愛しくなってきます。

冊をどう選んだらいいのか迷う私に、産直市の店員さんは「皮付き皮なしどちらが美味しいか」、おんちゃんは「背と腹の違い」を教えてくれました。
お二人とのこういったやりとりも、初ガツオをさらに美味しくしてくれました。

高知の食、高知の人。その掛け算が高知の魅力です。

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 3

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

日常

5月。田んぼに水が入り、水面はまるで鏡のように空の雲を映す。苗床では稲の赤ちゃんが緑の絨毯のように生えそろい、田植えの日を待っている。

ある日の夕方、田んぼのそばでカメラを構えていた。「何を撮りゆうが?」背後の声に振り向くと、近所の人だった。「田んぼに映った夕焼け雲が奇麗やと思って」と答えると、 その人は笑って言った。「私には毎年、いや毎日見慣れた風景やけど」

撮影していたのは自宅から徒歩1分。私にとっても見慣れているはずの場所だった。でも、その日常の風景をはっとするほど美しいと思うことがある。この日もそうだった。

ある時は道端に咲く小さな花だったり、山並みの上に浮かぶ黄金色の月だったり。雨が降ったあとの川の蒼さやウグイスの声も然り。一見何げない、身近な存在にあらためて気付く時、今まで一体何を見ていたのかと愕然とする。

私たちが生きる世界は美しさを併せ持つ。その美しさは身近なところにもちりばめられ、見ようとしないと見えないものがある。逆に言えば、見ようとしたら見えるということだ。

何げない日常が今日という日を支えてくれている。日常が 特別。高知に来て、尚更そう感じている。

(風)

 

2023年5月11日、高知新聞に掲載された「閑人調」です。

仕事や子どものこと、家のこと…。次から次へやること満載、一つ終えると新たなもう一つがやってくる。常にやるべきことを考えて、それをこなすことで精一杯。夜ごはんの後はバタンキュー、畳の上でいつの間にか寝ていたなんてしょっちゅうです。そのたびに、今日もやってしまったと自己嫌悪。
そんな日々の中でも、時々目が覚めるような美しさやうれしさに出会うことがあります。ちょっとした余白を与えてもらったような、自分の呼吸を思い出すような感覚を得ます。
「日常が特別」。つい忘れがちなこのことを、この地の自然やこの地の人が思い出させてくれます。

 

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山の手しごと

スモモとり

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6月下旬、近所の方が「スモモとりにきや〜」と声をかけてくれました。大きなカゴを持って、収穫へ。

遠くから見ても、紅いスモモがたくさん実っているのがわかるほど。

 

枝がたわむほどのスモモたち。深い紅色、まだ黄色がかっているものもたくさん!手にしたそばからたまらず、ガブリ!甘いむんとした香り、甘酸っぱい果汁がポタポタ、なんともみずみずしい。

「カラスに食われちまうから、全部とりや」

そう言ってくれていたので、夢中になってとりました。枝から落ち、斜面を転がるスモモをいくつも追いかけました。

 

 

カゴいっぱい、たくさん採れました!黄色いものは追熟、置いておくと1~2日後には紅くなります。

近所の人によると、このスモモは5年ほど前に植えたそう。

「昔は甘いものがほとんどなかったき、スモモはこの季節の楽しみ、おやつやった」と話してくれました。

収穫したスモモは友人にもおすそ分け。残りはジャムにしたいと思います。

 

 

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 2

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

灯り

12年前、土佐町に引越して来てから、近所のおじいちゃんとおばあちゃんに大変お世話になってきた。2人は軽トラックにお米や野菜を載せ、たびたび家に来てくれた。土地勘もなく知り合いもいなかった時分、2人と交わすあいさつやおしゃべりにどんなに助けられてきただろう。

息子と山師であるおじいちゃんは年の離れた友人のようだった。一緒にタケノコを掘り、ビワやアケビを採った。学校から帰るとすぐ2人の家へ走り、一緒にテレビで時代劇や相撲を見るのを楽しみにしていた。

おばあちゃんが藁を綯う手は美しく、その技はまるで魔法のようだった。綯った縄に吊り下げられて揺れる柿と澄み渡った冬の青空。その光景は、高知の原風景の一つとなっている。

ある夕暮時、息子が「おじいちゃんちに灯りがついたねえ」とつぶやいたことがあった。そのことを伝えると「わしらあも同じことを思いゆう。(筆者宅に)灯りがついたなあって」。その言葉を思い出すたび、心に灯りがともる。違う土地で生まれ育った者同士が出会い、人生が重なる不思議と尊さを思う。

息子をかわいがってくれたおじいちゃんは4年前に亡くなった。でもきっと、今もどこかで見守ってくれている気がする。

(風)

 

2023年4月26日に、二本目の記事「灯り」が掲載されました。

「とさちょうものがたり」でも何度かお伝えしてきた、近所のおじいちゃんとおばあちゃんのことを書きました。
人こそ違えど、人はこういったつながりに助けられているんじゃないかなと思います。

先日、久しぶりにおばあちゃんに会いに行きました。コロナ禍では手紙を何度かやり取りしていたのですが、実際に会えることは何にも勝る。本当に素晴らしいことです。

この記事を読んだおじいちゃんの娘さんからお手紙をいただきました。この記事をお仏壇に供えてくださっているとのこと。

 ありがとうございます。

今日もあかりが灯る 1

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