「遍路まんだら」 村上護 佼成出版社
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山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。
人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。
土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?
みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!
(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)
「遍路まんだら」 村上護 佼成出版社
「萩殺人事件」 内田康夫 光文社文庫
「須磨明石殺人事件」 内田康夫 光文社文庫
「藍色回廊殺人事件」 内田康夫 光文社文庫
我が家の本棚には日本文学全集がずら〜〜っと並んでいる。これは自分が退職後にゆっくり読もうと思って在職中に購入したのだが退職して9年…。まだ一冊も読破していない。まあ死ぬまでには何とか読むかな…。
今、私のベッドの枕元には内田康夫の浅見光彦シリーズのサスペンスが常に置かれている。これは浅見光彦というルポライターが「旅と歴史」の原稿を書く取材の途中で殺人事件に遭遇し、難事件を解決する話だ。事件に出会って警察に疑われると、水戸黄門の印籠のような刑事局長の兄が出てきて堂々と捜査に参加する。パターンは同じだが、あちこちの地方の様子や旅先の風景やふれあった人のやさしさ等、旅情や人情を感じながら自分もその場所へ旅した気持ちになってくる。
そして、何と言っても身長180㎝、イケメン、おっとりとやさしい性格。かなりのマザコンだが、警察の組織力を出し抜く抜群の推理力…。年齢は永遠の33歳(ここから歳をとらない)。「彼の鳶色の瞳に見つめられると…」という表現がよく出てくるが、ぜひ見つめられたいものだ。
こんな彼がいるといいな…、もう無理!!せめて娘の彼にでも…、これも無理!!
他に信濃のコロンボこと竹村岩男警部、警視庁捜査一課の岡部和雄警部と魅力的な男性が出てきて、さっそうと事件を解決するシリーズ等、今夜もサスペンスの世界に浸りながら眠りにつく私です。
川田ルミ
「江戸川乱歩傑作選」 江戸川乱歩 新潮文庫
江戸川乱歩との出会いは小学生の時。
近所のおじさんの家にあった『屋根裏の散歩者』のハードカバーの表紙が怖くて怖くてこの本は一体どんな本だろうとドキドキしたのを覚えています。
結局読んだのは中学生になってからだったのですが。
この短編集の物語はどれもこれも一体最後はどうなってしまうんだろう?と思わせるものばかり。
『鏡地獄』を読んで、ガラスの球体の中心とはいったいどんなものだろうと想像してみようとしては想像すらできません。
私が一番好きなのは『芋虫』なのですが、かつて伏字だらけで発表され、戦時中には発禁処分となったのだそう。
そうなるのも頷ける、そんな物語です。
和田亜美
「ロジックの詩人たち」 安野光雅 平凡社
画家である安野光雅は、ぼくが小さな頃のヒーローです。
あのタッチで描かれる日本や外国の町の風景に、理由もなく強く心惹かれてページをめくっていた記憶があります。
この本は松山の古本屋で見つけた一冊。珍しく、安野光雅の対談集。15人の文人や学者と、それぞれテーマとなる人物について語っています。
鶴見和子さんと語られる南方熊楠の一章。二人の話題は明治39年に発令された神社合祀令にも及びます。
江戸時代に一つの村に必ず産土(うぶすな)神社があったのに、村を二つ三つ一緒にして町にすると、産土が一つの町に二つとか三つあることになって、ムダだと政府は考えるようになったわけです。だから、なるべく一緒にまとめて、あとは壊してしまう。それが神社合祀なんです。 鶴見
文化的・環境的・生態学的・民俗学的、多様な見地から、熊楠は激しい反対運動を展開し、国内外に「農民困窮す」「漁民困窮す」と激しく警鐘を鳴らしました。結果、10年という時間がかかりましたが合祀令を撤回させることに成功しました。なんか話が逸れちゃいましたが、鶴見さんの熊楠論を聞いての安野さんらしいひと言。
南方熊楠を遠いむつかしい存在だと思う人が多いんですが、まったく逆でその実は面白いですね。学問がこんなに面白くていいかしらと心配になるくらい。 安野
「チムとゆかいなせんちょうさん」 エドワード・アーディゾーニ作 福音館書店
図書館で偶然出会ったこの本があまりにも面白くて、図書館で借りて全11巻を読みました。
その時、この「チムとゆかいなせんちょうさん」以外は全て絶版になっていました。
そのことがとても残念だったので、出版社である福音館書店に「チムシリーズを復刊してほしい」という内容の手紙を書きました。そう思っていたのは私だけではなかったのでしょう、そのあとシリーズの一部が限定復刊され始め、とてもうれしかったです。
この本の初版は1963年。
多くの人に読み継がれていく本には、きっと世代や国境を越えて人が共有できる何かがあるのではないかな、と思います。
アーディゾーニが、いつも子どもたちの背中をどこかでそっと支えてくれているような感じがとても好きです。
鳥山百合子
「たまたまザイール、またコンゴ」 田中真知 偕成社
「世界は偶然と突然でできている。」
著者の田中真知さんが2度に渡って敢行したコンゴ河下りを描いたノンフィクション。
雄大な自然、全てを笑いとばす人々。オナトラ船。コンゴのどでかい混沌が田中さんの冷静でいて暖かい目線で語られています。
コンゴには行ったことはないのですが、僕も東西アフリカの数カ国を旅したことがあります。ケニア、エチオピア、エリトリア、エジプト、モロッコ、モーリタニア、セネガル、ガンビア…。
アフリカの旅は、他のどこよりも疲れる。田中さんのコンゴ行と同様、僕のアフリカ旅も極端に情報が少なく、交通の便も寝る場所も行ってみなければわからない。
暗中模索のようなそんな旅は、他のどこよりも疲れるのですが、心のどこか別の部分では、とても大きな力を感じれる旅でもありました。
うまく書けないのですが、人が人として生きること以上でも以下でもない、ただそれだけの至ってシンプルな価値に立戻らせてくれるというか。
現代の複雑な社会で身につけたいろいろ余計な記号を、乱暴にぶっ壊してくれるような爽快さは、僕が行った中ではアフリカとインドが群を抜いています。
あ、騙されたりぼったくられたり、ムカつくことが多いのも群を抜いていますってことは付け加えておきます。
石川拓也