今更感がありますが、うちのお風呂は五右衛門風呂。
引っ越しにあたり、住む家の理想条件のひとつが薪風呂だったから、願ったりだった。ただ、もともとあった風呂釜はヒビが入っていたし、その他にも直したい箇所があったので、五右衛門風呂作成経験者の知人たちと改修することになった。
実際解体してみると、古い釜を取り出すだけでも重労働であることが分かった。周りのタイルやセメントをトンカチやドリルで打ち砕き、外に運び出して、釜の下にある釜戸も取り除いて作り直した。
釜戸はサイコロ状にした粘土で成形していく。粘土は柔らかいときは変形しやすく扱いやすい。そして乾燥すると硬くなり熱に強く、高温になる焚き口には適している。奥行きを80cmほど取り、長い薪も入るようにした。予め購入しておいた鋳物製小判型五右衛門風呂を二人掛かりで運び入れ、排水しやすいように少しだけ傾けて据え付ける。それからその辺に転がっていた大きめの石をセメントで固定していった。
煙道は作らなかったので熱効率は悪いが、浴槽の側面が熱くならず、子どもにも安心だ。
釜の下から熱するため、入浴時に直接底を触ってしまうと火傷する。蓋を沈めて、その上に座るようにして湯に浸かる。ただうちのは木製なので、ある程度の体重がないと蓋が浮かんでしまう。改修当初の五年前、親と一緒でないと入れないほど小さかったうちの子どもたち。今では体重も人数も増えて、自分たちだけで入れるようになった。こんなところでも成長を感じてしまう。
五右衛門風呂最大のおすすめポイントは、遠赤外線効果だ。
薪で沸かした湯は、身体の芯から温まる。時間を掛けてじっくり入れば、湯上がり後もしばらくぽかぽか、じんわり汗をかいてしまうほどだ。だから夏はお湯を浴びる程度にしてる。薪がもったいないので、近くの川で水浴びして、お風呂がわりにすることも多い。
笹に引っ越す前に住んでいたアパートはガス風呂だった。真冬は、いくら長風呂をしても湯冷めをしてしまって困った(体質によるのかも知れない)。寒い日が続くと、車を何十分も走らせて温泉に行くのが楽しみだった。けれど、五右衛門風呂にしてから温泉欲がピタッとなくなった。熾火から発生する遠赤外線が心も身体も温めてくれた。
冬の気配を感じる季節となり、お風呂に入るのが嬉しい季節だ。
翌朝の贅沢な楽しみが、朝風呂。夜、皆が入り終わってから薪を一本加えておく(この辺が贅沢)と、翌朝も温かい風呂に入れる。窓を全開にして、湯気の立ち昇る浴槽から、夜が白々と明けていく向かいの山々を眺めるのもオツなものである。子どもたちにも人気で、いつもは布団から出たがらないくせに、「お風呂あったかいよ」と声を掛けると、飛び起きて来る。釜戸の火はすでに消えているので、蓋なしで入れるのも、子どもたちにとって嬉しいらしい。蓋がない分いつもより深くなった浴槽で潜ったりして遊んでる。
残り湯は洗濯に使っている。冬の山水は、とびきり冷たいので、この湯温はありがたい。最後の最後までこの温かさを利用させてもらう。
写真:2014年撮影。脱衣所の床に柿渋を塗るお手伝い。弟に刷毛を取られて不満顔の姉。