「52ヘルツのクジラたち」 町田その子 中央公論新社
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない、何も届けられない。その為、世界で一番孤独だといわれている。
帯に書かれてなかったら、作者も題名にも素通りしていたかもしれない。
生きるのに疲れ、最果ての街にきた貴湖。そこで自分と同じ匂いのするしゃべることのできない少年と出会う。親からの愛情が注がれていない孤独な少年の匂いが、家族から受けた虐待の日々と重なってくる。
貴湖の持つタブレットを通して、クジラの歌声をきく少年。繰り返しの日々の中で少しずつ心を開いていく。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性貴湖と、母に虐待された少年。彼らが出会い新たな物語がつむがれていく。
文体の読みやすさもあって一晩で読んでしまうほど。夜中に目もしぱしぱ。長男の嫁さんにすすめると「いっきに読んだよー」と…。