7月に入ったあるとき、朝4時をすぎた頃からひぐらしが鳴き出す。
森の奥の方からこちらの方へだんだんと近づいてくるような、銀色の鈴を響かせているようなこの声が目覚まし時計がわりになって、いつも寝坊助な私も早起きになる。
この声を聞くと「夏がやってきたんだ」と思う。
枕の向こうの山から、あちらこちらから、まるで輪唱しているように途切れることがない。
カナカナカナカナ・・・
セミたちは朝がやってきたことをどうやって知るのだろう。
セミは6〜7年間、土の中で過ごしてから地上に出てくるそうだから、この鳴いているひぐらしたちは今1年生の子どもたちが生まれた頃に土の中で誕生したんやなあ、とまだぼんやりした頭で考える。
しばらく布団の中でごろごろしていると、障子の向こうがほんのりと白く明るくなってくる。
小鳥たちが鳴き始める。
大地が目を覚まし、生きているものが順番に起きてくる。
いつのまにかひぐらしの鳴き声は遠ざかり、ジージージーという鳴き声にバトンタッチ。
鶏も鳴いている。
いろんないのちの音で満ちる朝。
今日も夏の1日が始まる。