2017年11月

図らずもTPP。あっちのTPPではありません。

土佐町在住の写真家、石川拓也がひと月に1枚のポストカードを作るプロジェクト。

2016年11月から始まり、たまに遅れたりもしながら、いちおう、今のところ、毎月1枚発表しています。

各ポストカードは土佐町役場の玄関と道の駅さめうらにて無料で配布しています。

写真:石川拓也 宛名面デザイン:品川美歩

土佐町ポストカードプロジェクト

2017 Oct.

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上地蔵寺 | 上田英奈

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「本の子」 オリヴァー ジェファーズ (著),‎ サム ウィンストン (著),‎ 柴田 元幸 (翻訳) ポプラ社

これは私、鳥山の大切な一冊「本の子」。

この本の中には、世界中で読み継がれてきた昔話や児童文学、ファンタジー、たくさんの本や言葉が出てきます。

本の中のページを開くと、たくさんの時間がつまっていていろんな出来事があって、いろんな人生がある。
それは「ものがたり」。

人は、自分のものがたりを日々積み重ね、時には自分と隣の人のものがたりを重ね合わせながら今この場所で生きているんやなあと思います。

「わたしたちはものがたりでできている」。

『とさちょうものがたり』とどこか通じるものを感じて
この本を手にした時、本当にうれしかったのです。

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土佐町ストーリーズ

早明浦の蛇の神様

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蛇の神様がいる、という。
早明浦ダム近くのさめうら荘の上の道をくねくね登って、行き着いたところを西へ少し行ったところ。
小さな神社があり、蛇の神様はそこにいるらしい。
その蛇の神様は「作物がよく実りますように」という願い事に加え、「おねしょしませんように」という願い事をかなえてくれるのだそうだ。

土佐町の人の中には、子どもの頃、おねしょが止まるようにお参りに行ったという人がたくさんいるという。

 

蛇の神様へのお供え物は生卵。カラスに卵を取られないように神社の扉には鍵がかかっていて、その扉は誰でも開けられる。ぎい、と扉を開くとそこに白色の蛇の神様がいるとのこと。

供えられた卵を定期的に片付けている人がいるらしいが、いつ行っても何十個と卵がお供えしてあるのだそうだ。おねしょで困っている人は、どうもたくさんいるらしい。

 

『三島神社の横のかけ道を登って、頂上にいる蛇の神様までどんどん歩きます。蛇の神様には生卵をお供えして「おねしょしませんように」「おしっこもれませんように」とみんなでお祈りしました』と保育園からのお手紙に書いてあった。

次の日、先生に話を聞いた。
「○○くんはね『どうかおねしょしませんように』って手を合わせてつぶやいててかわいかった〜。」

そして「私はね『どうか尿もれしませんように』ってお願いしてきた。」と大笑いしながら、なかなか切実なことを言う。

早明浦の蛇の神様、どうか先生の願いをかなえてやってください。

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笹のいえ

カメムシを考える

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冷え込みが強くなると、よく見かけるようになるカメムシ。

ご存知の通り、彼らが出す匂いは独特で、嫌いな人も多い。ここらの地域では「クサムシ」と呼ばれる。
うーん、なんと分かりやすい名前だ。

触らないように気をつければ特に害はないのだけれど、どこにでも潜り込む彼ら、気づかないところで触ってしまう。
そうするとどこからかあのパクチー臭が漂い、臭いの元を探し回る羽目になる。

さて、うちでは室内にこの虫を見つけると、ペットボトルにそっと誘導し外にポイっとする。
末っ子はそんな様子を真似してか、カメムシを積極的に捕まえるようになった。

ただ、二歳児がカメムシを直接触らないように室外に出すのは難しい。

そのうち、ああなんということでしょう、素手で捕まえるようになったのだ。
当然、カメムシは例の臭いを発し、彼もまた同じ臭いに包まれる。父母は目を丸くし、姉兄はワーキャーと逃げ回る。
しかし、当の本人は一向に気にしない様子で黙々とこの昆虫を手に乗っけては観察してる。

まだ先入観のない小さな子どもは純粋な好奇心で生き物と向き合い
「臭いからヤダ、嫌い」などというのは大人の先入観なのだなあ。
と感心して末っ子の顔を見ると、両方の穴から鼻水が出ている。
なんということはない、鼻が詰まって、なんのニオイも感じていないだけだった。

しかし、彼のカメムシ遊びのお陰で「カメムシは本当に臭いのか」という疑問が僕の中で生まれた。
「嫌われ者のこの虫だって一生懸命生きているのだ」と考えると、「それほど臭くないんじゃないか」とさえ感じてしまう。
が、しかし、嗅ぎすぎで自分の臭覚が狂ったと思わなくもない。

そういう僕はカメムシの飛ぶ音が苦手。
匂いと同様、羽音も特徴があり、文字にはしにくいけど、「ゔーーーん」という低音が気になってしょうがない。

カメムシが大量発生する年は、寒い冬になったり大雪が降ると聞いたことがある。
今年は厳しい冬になるのだろうか。

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私の一冊

山崎幸子

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「子どもの話にどんな返事をしてますか?」 ハイム・G・ギノット (著),‎ 菅靖彦 (著) 草思社

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土佐町ストーリーズ

蛇の家(黒丸)

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ずっと昔、黒丸での話よ。

ある晩のこと、きれいな娘さんが「この川には渕はいくつもあるけんど、どの渕も先客がおるので泊まる所がない。どうか泊めてくだされ」言うてやって来たと。

それじゃあと言うことで泊めてやることにしたが、寝る時に桶を貸してくれえ言うたと。

大きな桶もなかったので、楮(かじ)を蒸す桶でもかまん、誰もあけてくれな言うてそれをすっぽりかぶって寝たと。

夜中に、体が蛇にもどったもんよ。

桶がバリバリ言うて割れたそうな。朝になってみると、娘さんの姿は見えざったそうな。

そのことがあった後、すぐ隣の家から火が出たそうな。

昔のことじゃきに草葺きよね。近くの家はどんどん焼けてしもうたけんど、その家だけ焼け残ったと。

娘さんを泊めた時に、私の寝姿さえ見んかったら、どんな火事にも焼けんから言うて寝たそうなが、その御利益だったもんよ。

草葺ではなくなったけんど、その家は今もあらあね。

蛇の娘がどこから来て、どこへ行ったかは聞いちょりません。

 

町史(「土佐町の民話」より)

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土佐町ストーリーズ

蛇神様(北境)

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応仁の乱から百年余りが過ぎ、やっとのこと平和が訪れようとしておった。

その頃、南越村(みなごしむら・現在の北境)の名本(今の区長さんのような仕事をする人)藤大夫(ふじだゆう)の弟で和田孫三郎が須山に分家した。

それがこの地に人が住むようになった最初であった。

その下方には十二戸の百姓が住み、長い戦乱に生き残ったのは、蛇神様が守ってくれたおかげだと、住民は毎日酒や魚を供えておった。

杉の平から落ちて来る谷川に蛇渕があって、大きな蛇が棲んでおった。

渕は青々として底は知れず、周りはしめなわで囲まれ、色とりどりの花が飾られておった。

住民は幸せで、境村や和田村から多くの人に来てもろうて盛大に蛇神様祭りをしておった。

それは天録から宝永にかけてのことじゃった。

いつの間にやら蛇神様が南越村の蛇渕へ移っちょった。

「これは大変じゃ。どうやったら戻ってくれるろう。」とさわぎよった。

ちょうどその頃雨が降り始めた。雨は毎日降り続き、次第に滝のような雨になった。そして急に山が崩れて、十二戸はアッと言う間もなく八ヶ内川に押し流されて生き残った人はいなかった。

反対に、南越村は五戸しかなかったのに、方々から人が来て二十三戸になりにぎわった。

そして、それはそれは盛大な蛇神様祭りをしておった。

 

そんなことが百年余り続いたある年、「どうも近頃蛇神様が見えんようになったが、どう言うもんじゃろう。大夫さんに見てもらおう。」と言うことになり、毎日毎日笛や太鼓で蛇神様迎えの祭りをしたが、帰って来てはくれざった。

それから間もなく、大崩れがしたり、伝染病で家が絶えたりして、昔の五戸に戻ってしもうた。

それから久しいことたってから、蛇神様は汗見川へ移ったことが分かった。

そういうことは、地元の人は気付いてない風であったが、石ころだらけで人の住める所ではなかった沢ヶ内に人が来て住みだし、やがて店もでき大きい集落となったそうじゃ。

 

和田輝喜(「土佐町の民話」より)

 

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土佐町ストーリーズ

土佐町ヘビ祭り!

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勝手にやります!土佐町ヘビ祭り!

 

「土佐町ストーリーズ」では、これまで土佐町のちょっとした日常の話から戦争のような昔の話、それからこの地での神話や民話をごちゃまぜに紹介してきました。

「戦争の話」とか「民話」とか、ひとつひとつジャンル分けしないでご紹介してきたのは、そういったここで起こる全てのお話が、ひと続きの「土佐町」を現すものだと考えたからです。

昨日もらった果物も、戦争の体験も、人を化かすタヌキも、それぞれが違う角度から土佐町を照らす小さなロウソクの光のような気がします。

さて話は若干変わりますが、土佐町に伝わる民話や神話を読んでいると、ヘビの話がとても多いことに気がつきます。

人に(特に若い娘に)化けるヘビ、人から畏れられ崇められるヘビ、水を支配する(すなわち五穀豊穣を司る)蛇神さま。ちなみに「蛇神」は「じゃがみ」と読むことが多いみたい。

思いつくままに思いだしてみれば、世界のあちこちの神話で、ヘビって意外と特別な位置にいます。

アペプ(エジプト)、ヴィシュヌの蛇(インド)、ヨルムンガンド(北欧)、ケツァルコアトル(南米)、虹の蛇(オーストラリア)、そして我らがヤマタノオロチ。

アダムとイブに智慧のりんごを食べさせたのもヘビでしたね。

数多ある神話の中でも他の動物と違って、ヘビはなんとなく妖しく艶っぽく、セクシャルな雰囲気を漂わせています。ヘビはタヌキのようにポンポコおなかを叩いて踊ったりしない(まず叩く手がない)し、キツネのように手袋を買いにいったりもしない(手袋つけられない)。

中途半端なジョークはあんまり通じないようなシリアスさがあるのもヘビの特徴。見つめられたら動けなくなるカエルの気持ちも少しはわかります。蛇の目=邪眼という説も昔からありますね。

その上、世界のヘビ神話はこの世の成り立ちに直結している話が多い。大きなヘビがいるからこの世があるんだ(水を支配しているので)、またはこの大地は巨大なヘビの上に載ってるんだって感じの話です。

興味ある方はぜひ「虹の蛇」や「ヴィシュヌの蛇」を調べてみてください。

そんな、ちょっと特異な役割を果たしているヘビの話。今回、土佐町バージョンを集めてみました。明日28日から7日連続でご紹介したいと思います。

私たちより遥か昔にこの地に住んでいた人々にとって、ヘビがどれほど恐ろしく頼りがいのある存在だったのか。少しだけお仕事の手を止めて想像してみるのも、たまにはいいと思いませんか?

あ、大事なこと忘れてた、、、。

苦手な人、ごめんなさい!

 

 

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私の一冊

仙田聡美

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「でんしゃはうたう」 三宮 麻由子  (著),‎ みねお みつ (イラスト) 福音館書店

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土佐町ストーリーズ

ポッポ広場

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土佐町には子育て支援センター『ポッポ広場』があります。

平成18年に開設され、ちょうどその頃長男を出産した私は、ポッポ広場へほぼ毎日のように遊びに来ていました。

今でこそ4人の子どもの親をやっている私ですが、
当時は我が子にも、他の子どもにも、そして他のお母さん達にもどう接したらいいかわからず、
ただただ家で長男と二人きりでこもるストレスから逃れるためにポッポ広場を利用していました。

 

そんなポッポ広場で、私を変える出会いがありました。

 

次男を出産してから、ポッポ広場を訪れた時のことです。
人のお母さんがニコニコと話しかけてきたのです。

『もしかして、上にお兄ちゃんがいます?多分同級生なんですよ~』

彼女の名前は加藤さん。
転勤族で、土佐町に引っ越してきたとのことでした。
人見知りだった私は、こうやって初対面の人が話しかけてくれるということが衝撃的でした。

 

下の子も同級生ということもあって、加藤さんとよくポッポ広場で話をするようになりました。
いつでも穏やかに笑っている加藤さんの周りには自然と輪ができて、私もみんなと喋るようになりました。
あっという間に何でも喋れるようになって、子育ての悩みや家庭の愚痴、どこそこのスーパーであれが安かった、
これがおいしかった・・・こないだ教えてもらったアレ、やってみたでー!など、情報交換も盛んになりました。

今までは子ども同士の玩具や遊具の取り合いなどのトラブルがあるとすぐに介入していたのですが、
みんなが『えいえい、ケガがなかったら放っちょって~』という雰囲気だったので、
ちょっとしたことでオタオタすることもなくなりました。

消しゴムハンコの作り方やパンの焼き方を習ったり、簡単なレシピを教えてもらったり、
誰かの家に集まって、わいわいお茶をしたり。
私は勝手に『ポッポ広場の黄金期』と呼んでいます(笑)

転勤族だった加藤さんとは、数年後にお別れすることになってしまうのですが、
あの時加藤さんが話しかけてくれなかったら、子育てを楽しむという気持ちは生まれていなかったと思います。

今でもポッポ広場には色んなお母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃんがやってきます。
転勤族の人、里帰り出産の人、他町村からの人、ポッポ広場は誰でも利用できます。
お弁当を持って、子どもと一緒に食べてから帰ることもできるようになりました。

初めての子育ては何もかもが手探りで、不安でいっぱいで孤独を感じるものです。
仕事をしていると、他の保護者の方と話す機会も少ないのでなおさらです。

そんな保護者の方達に、ぜひポッポ広場に足を運んでもらいたいです。
いつでも開いていますよ。

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