美味しかった母の作ったお弁当
小学校三年生の秋の運動会。お天気も良くて、楽しみの少ない田舎の小学校の運動会、お年寄りや父兄たち総出の一年に一度の楽しみでした。
当時は広いと思った運動場も、85年過ぎた今はすっかり様変りしましたが、幼かった当時の姿形は今だに消えません。
当日、父は朝から行って競技に出、来年入学の妹は好き勝手に走り回り、母は皆のお弁当を作って来ることになっていました。
お昼になっても来ないので、帰って食べようかと坂道を半分くらい帰った所で、弟を背負って、両手に重箱らしいものを持って汗びっしょりで下りてくる母に会いました。近くの従兄弟の家の縁側を借り、熱いお茶を出して貰って、大きな重箱を開けてびっくり。家では見たことも食べたこともなかった五目めし。お皿代りの大きな貝殻。美味しいのと腹ぺこで忽ち一つは空っぽ。汗を流しながらよそってくれた「カカヤン」の顔が浮かびます。
年中麦飯だったのに、運動会用にお米を残してあったのか想像しながら、母の優しい心遣いに子供なりに感謝したのでした。
美味しいお弁当のおかげで、午後の競技も頑張れたのでした。
何につけても色白で丸顔、鼻筋の通ったカカヤンの顔が浮かんで涙々です。
やがて私も天国へ。その時は絶対、皆のいる相川の家へ帰ろうと思っています。