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土佐町の現在の人口です。(2017年6月末時点・土佐町公式サイトによる)
注:土佐町の総人口が3,997人(2017年4月末時点)から4,001人(6月末時点)に増加したことに伴い、当プロジェクト名も「4,001プロジェクト」に変更になりました。
“4,001プロジェクト”は土佐町に住む人々を、全員もれなく、写真家の石川拓也が撮影する計画。
念のため書いておくと、「全員もれなく」…あくまで目標です。
土佐町の人口の増減によって、タイトルもたまに変わります。 (敬称略・撮れたときに不定期更新)
溜井 | 川村光太郎
9月。空と風が突如として秋モードになる日がありますね。
夏のジリジリと焼けるような暑さから、ふっと肩の力が抜けるような日。
そんなある日に、溜井のとある田んぼにお邪魔して撮影しました。折しも稲は色づきはじめ刈り入れ時を迎えつつあるタイミング。
この時期の田んぼは日本人のDNAをくすぐるような何かがありますね。
相川の棚田の写真を撮影した際にも感じたことですが、この風景を作り出しているのは地元の農家さんたち。
「風景を作る」ことを目的として稲作をしている方はあまりいないと思いますが、毎年お米を作ることが結果的にこの風景を作ることにもなっている。頭が下がる思いです。
貫禄の片鱗が見える後ろ姿は川村光太郎くんです。
笹ヶ峰は、土佐町南部と南国市にまたがる、標高1131mの山です。
「笹ヶ峰」という名前で呼ばれる山は石鎚山系にもうひとつあり、こちらは標高1859m、いの町本川村と西条市にまたがっています。
今回の記事は土佐町の笹ヶ峰のお話。
登山口までは車で上がれます。いくつかルートはありますが、相川地区から上がるのが最もわかりやすいルート。
通称「台の牧場」と呼ばれる牛舎を右手に、さらに上がると下の写真のような登山口手前につきます。
ここに車を停めて、ここから片道1時間程度の登山です。
登山口付近に掲げられた道標。とても良い感じで苔むしています。空気もとてもきれいです。
この笹ヶ峰、道標に書かれているように「天狗岩」と「小天狗岩」のふたつの目的地があります。
ふたつともそう離れたところにあるわけではないので、どちらかに寄ってからもうひとつに行く。例えば小天狗岩に行ってしばし眺めを堪能したら天狗岩へというルートになります。
この苔の美しさ!ダイダラボッチが出てきてもおかしくなさそうです。いやおかしいか。
途中にはこんな岩も。子どもだったら絶対にくぐってるヤツですね。
左に行くと小天狗岩、右に行くと山頂+天狗岩という分岐。名前に「小」がつくけれど小天狗岩の方が眺めが良いで〜という地元の方は多いです。
小天狗岩に到着。ちょっとわかりずらいですが、中央に見える白っぽい岩が小天狗岩。ここによじ登ると待っているのは下のような眺望です。
小天狗岩から北側を臨んだ景色。眼下に広がるのは土佐町の風景です。この日はあいにくの曇り空でしたが、晴天の日には四国山脈が彼方まで見通せます。
小天狗岩を降りて再び山頂を目指します。後ろ姿は同行した高知新聞記者・森本さん。
山頂までもう一歩。
密とはほど遠い世界で、マスクをとって新鮮な空気を深呼吸できる環境です。
山頂に到着!
山頂に立つ1131.4Mの看板。
山頂には祠が鎮座しています。山神様がお住まいです。
こちらが山頂の天狗岩。
天狗岩に立って臨む土佐町。雲の下の雄大さが伝わるでしょうか?
ここからが帰り道。ちゃんと「帰路」と出ていますので迷いようがありません。
以上、笹ヶ峰往復報告でした!今回は撮影しながらの往復でしたので2時間半ほどかかったのですが、登山口からまっすぐ山頂を目指せば小1時間ほどで踏破できる距離です。
途中危険な箇所は皆無です(天狗岩から踏み外さないように気をつけてください)ので、低山トレイルには最適な山のひとつです。
「人新世の資本論」 齋藤幸平 集英社新書
気候変動やコロナ禍のさなか、世界の(もしくは人類の)価値観は急速に変化を求められています。「今まで作ってきた世の中が、果たして正解だったのだろうか?」という根深い疑問がその根底に流れています。
資本主義という、「利己」を最大限に解放することで社会の原動力とする仕組みの力強さ。ここ100年ぐらい、その仕組みを御旗に進んできて、今、多くの人々が持つ「これ合ってないんじゃない?」という思い。
今までの価値観と仕組みの問題はどのようなものなのか。
では次の世の中をどういう価値観で進めていくか。
著者の経済哲学者・齋藤幸平は、マルクス主義を主戦場としている人です。
本書のキーワードは「脱成長」と「コモン」。もうすでに資本主義の「修正」でなんとかなる時期は通り越していて、資本主義ではない次の仕組みに移っていかなければ人類もこの惑星も、もう保たない。(その文脈で、著者はグリーンエコノミーやSDGsを「本質的な問題から目を逸らすことになる」として痛烈に批判しています)
表面的な取り組み云々では、次の世代が生きやすい環境を残すことも不可能で、根本的な価値観から見直す必要があるということ。
その価値観の話が「脱成長」。過去100年のエンジンとなった資本主義の宿命である「経済成長」、これを根本から疑っていく。「右肩上がりの成長を善としてきた価値観は正しいだろうか?」
そしてもうひとつの「コモン」。資本主義の「私有」の概念に対する疑い。
際限のない私有は社会をおかしな方向に導くし、公有も上手くいかない例が多い。その中間ともいえる「市民有」(私営・公営の中間にあたる「市民営」)がコモン。
いわゆる「共有」であり市民の共同管理。特に水や道路などインフラに近いものの運営のあり方は厳しく問われるべき。
例として、著者はスペインのスーパーブロック(バルセロナで行われている、車両乗り入れ禁止のブロックを作る都市計画)などを挙げています。
非常に興味深い内容で、この本がある意味「時代のバイブル」的な受け止められ方を一部でされていることも頷ける話です。
世界の価値観が現在進行形でどのように変化しているのか、そしてその変化をもとに自分の価値観がどのように変化していくのか。
さらに最も大事なことは、変化した価値観をもとにどういった行動を起こしていくのか。
動いては考えてを繰り返していこうと思います。
「HIDEKI NAKAJIMA: MADE in JAPAN」 著:中島英樹
中島英樹さんは、日本を代表するグラフィックデザイナー。映画雑誌「CUT」のデザインを長年されている方です。
僕も駆け出し若手カメラマン時代にとてもお世話になりました。写真に対する目線が怖ろしいほど鋭く深く、甘っちょろいごまかしがあれば即見破られてしまいそうな、会うたびにそんな緊張感を感じていたことを記憶しています。
もうちょっと平たく言えば、写真家から見た「怖い先輩」です。その怖さは、すぐ怒るからとか言葉がキツイからといった類の怖さとはちょっと違っていて、「本質的な部分を見抜かれる怖さ」であったと思います。
怖い先輩であったものの、こうして時間が経って思い返すに、自分を写真家として育ててくれたのはそういった「怖い先輩たち」なんだよなぁと思います。
その時は厳しいことを言われ凹んで帰ってくるわけですが、その経験が最も自分を育ててくれたことでもあるという実感があります。
その中島英樹が作った自身のデザインを集めたデザイン集。これ以上ないぐらいにキレキレです。
「湖畔りんご園」を営む伊藤明導さんと美恵さんのご夫婦です。
湖畔りんご園は土佐町平石地区にあり、様々な種類のりんごを栽培している農家さんです。
以前、高知県西部でケーキ屋さんをやっている知人も、「湖畔りんご園のりんごでケーキを作りたい!」と言ってはるばる仕入れにやってきていました。
三代に渡るりんご園のお話も近々ご紹介したいと考えています。
蛇足になりますが今回伺った理由は、写真の背景にちらっと写り込んでいる家屋、この伊藤さんのご自宅が、ダム建設時に水没地域であった柿ノ木部落から、そっくりそのまま移築したものであったということを聞き及んで、その実物を見せていただこうということで訪問させていただきました。
現在、柿ノ木地区は大半がダムの水の下にあるという事実。そして昔は柿ノ木にあったこの日本家屋が、現在では平石に建っているということに、不思議な巡り合わせを感じます。
相川・中尾地区の上田義和さん。土佐あか牛の畜産農家さんです。
義和さんとの出会いのきっかけは、鹿の角。
とさちょうものがたりが取り組んでいる「鹿の角ガチャ」が高知新聞に取り上げられた際に、記事を読んだ相川の澤田清敏さんから、「鹿の角をきっと持っている猟師さんに頼んであげる」と紹介がありました。
そうして鹿の角をいただいたご縁で、今度はあか牛の出産に立ち会わせてもらえることに。
母牛が赤ちゃんを産むその瞬間の、その模様はまた別の記事でご紹介するつもりでいますが、上田さんはとさちょうものがたりが一方的にお世話になっている「お師匠」の一人です。
ちなみに背景に写る牛舎全体を、義和さんご本人が自作されたそうで、その技術とバイタリティにもびっくりします。
石原の川を撮影中に出会った西川公明さん。
釣りをしている最中にお邪魔と思いながらも声をかけ、川のことや魚のことを教えていただきました。
石原出身の元新聞記者である窪内隆起さんの文章につける写真を撮影するため、「継ぎ竿(太さの違う竹を組み合わせて分解可能にした釣竿)」を探していたのです。
結論は、継ぎ竿ではなく、継ぎ竿にしていたような竹林をこの写真の対岸に見つけ、公明さんの手をお借りして撮影することができました。
こういう「お師匠」のような方がそこかしこにいらっしゃって、意図せずばったり出会ったりすることも、土佐町で仕事することの面白みになっています。
西石原の筒井良一郎さん、和子さんのご夫婦です。
実は編集部は良一郎さんにとてもお世話になっていて、土佐町ベンチプロジェクトのベンチを石原に設置した際だとか、最近では「山峡のおぼろ(著・窪内隆起)」のあるエッセイの写真に、モデルとして登場していただきました。
この写真はその撮影の後に撮った一枚です。
いつお会いしても快活で気持ちの良い方です。