前回、ブータンのGNH(国民総幸福度)について触れました。
繰り返しになりますが、GNHはGNP(国民総生産)では計れない、本当の「豊かさ」を計り、国民がより幸せを感じる国にしていきましょうという指標です。
では、GNPって一体なんなんでしょう?
と、このあとGNPの問題点などを書こうと思ったのですが‥‥
ぜ〜〜んぶやめました!
なぜなら、本に書いてあるようなことをくどくどと解説するのはこの連載の目的ではない、と気づいたから。当初の予定は、GNHについての理解を深めた上で、では土佐町のやりたいことは?という話の進め方をしようとぼんやり思っていたのですが、ぜんぶやめます!
土佐町では今このときにも、現実が刻一刻と動いています。本を読めばわかることをここで書いているヒマはない。現在、土佐町役場が取り組んでいるGNHに基づいた「土佐町のものさし」作りはもうすでにスタートしています。この連載は、その「現実の取り組み」を中心に追いかけていきます。2話目で突然すみません^^;
さて、土佐町。
大まかに取り組みの流れをざっと書くと、
この一連の流れの目的は、「土佐町の考え方の軸」を作ること。シャレた言い方をすれば「土佐町のグランド・デザイン」を作ることと言っても良いでしょう。ここではシャレた言い方をする必要はないので、「土佐町のものさし」がしっくりきますね。
2018年11月現在は、住民幸福度調査アンケート。実施へ向けてのアンケート作りが行われている真っ最中。これが実は一筋縄ではいかない、でも今後の流れの大元になる大切なものなのです。
比べるべきや?比べざるべきや?
まず、アンケートの目的です。「幸福度を測る」とひと言で言っても考え方は一通りではありません。なんのためのアンケート?誰のためのアンケート?そういったスタート地点を常に確認しながら一歩一歩進んでいく作業になります。
ここで大きな分岐点となった疑問。それが、「他の自治体や国と土佐町を比べるべきか?」というものです。
「他の自治体と比べること」を目的としているならば、他の自治体も広く実施したことがあるアンケート内容にすべきです。でないと比べることができなくなります。おのずと質問内容は土佐町の風土に特化したものではなくなります。
「比べる必要がない」のなら、土佐町は土佐町独自の価値観に基づいたアンケート内容、土佐町の生活に根付いたアンケート内容にすべきです。こっちの道を行くのなら、質問内容は土佐町の風土に特化したものになる。もっと言えば、質問内容そのものが土佐町の「幸せ」を体現したメッセージになる可能性もあります。「こういうことを土佐町では幸せと考えます」そういう意思がアンケート内容に反映されるでしょう。
土佐町の出した小さな結論。それは「他とは比べない」。
例えば土佐町が他県の自治体より上の順位だったとして、それが「土佐町の人々の幸福」にとって一体どんな意味があるのでしょう?もしくは下位だったとして、上位の町や市を「追い抜け追い越せ」レースが始まるんでしょうか?それってなんかおかしくないですか?
実は「他と比べること」というのは幸福度という視点から見ると、幸せ度合いを下げる考え方だそうです。「隣の芝生は青い」と言いますが、それで勝手に悔しくなるのは「幸福度」と離れていく可能性の高い考え方だそうです。なんとなくわかりますね。そういえば、FacebookなどのSNSも「他と比べるツール」として幸福度を下げるものとされています。
ではなんのためのアンケートなのか?
スタート地点に戻りましょう。この一連の取り組みは「土佐町の人々がより幸福を感じる町になるためのもの」。アンケートもそのためにあるべきです。
となると、現時点での結論は「土佐町の幸福の現在地」を知るためのアンケート。町の人はどんなことに幸福を感じ、どのような町になりたいと思っているのか?
そのことを知った上で、やっと次にやるべきステップが見えてくる。そのためのアンケート。
他と比べない。でも土佐町の未来と比べる。
この幸福度調査アンケートは一度きりのものではありません。今回の結果をもとに、さらに深く土佐町の幸せについて考えていく。そうやって考えたことを現実の行動や施策に反映していく。(←この現実の行動にしていくところが最も大切です)
2018年度の調査結果を踏まえて行動し、次のアンケートの時には幸福度が上がっているように努める。つまり、過去のアンケート結果と比べるということです。その「ものさし」を作る最初のとっかかりが、この幸福度調査アンケートなのです。
やっぱりブータンが先達としてそこにいる。
ここで参考になったのは、GNHの大元であり先輩でもある、幸せの国ブータン。ブータン先輩と呼んでかまわないでしょう。あ、それで思い出したのですが僕の高校の先輩で「ぶーちゃん先輩」と呼ばれている人がいました。ご想像の通り、体重100キロオーバーの巨漢です。
‥‥話が逸れました。ブータン先輩、2010年と2015年、5年づつ大きなアンケート調査をやっています。そしてその都度詳細な報告書をあげています。さて、ここで問題です。ブータンは他の国と比較するためにアンケート調査をやっているのでしょうか?
答えはノーです。否です。ニェットです。ブータンの国民幸福度調査アンケートの目的は、ネパールやインドやフランスなどの他国の幸福度と比較するためではありません。
ブータンのGNH調査報告書の冒頭近辺に明記している言葉、それは
幸福度を前進させる行動の指標を作るため
とあります。目的はこれ一点。「行動のためのもの」というのがいいですね。今回書いた土佐町の小さな結論には、ブータン先輩のこの文章が小さくない影響を与えてくれました。