「今年もトマトが赤く色づき始めたよ!」
「収穫が楽しみです!」
今日も『ちょっこりファーム』のLINEグループではこんなやり取りがありました。
小さな種から芽を出し、沢山の甘いミニトマトが収穫できた2023年の夏は、自分で蒔いた種からこんなに沢山の野菜が収穫できるということに心が躍った季節でした。
以前から花や野菜を育ててみたい…と思っていたので、いしはらの里で「ハウスが空いちゅうき、小松菜でも作ってみんかえ?」という声かけがあった時には「はい!」と即答。
同じ時期に移住して来た安達さんや地域おこし協力隊の千葉くんもやってみるとのこと。早速ハウスの中に小松菜の種を蒔くために、畝作りを開始しました。
そしてビニールハウスで、参加者が地域の方からこの土地に合った野菜作りを学ぶグループを『ちょっこりファーム』と名付けました。土佐弁で『ちょっこり』は『ちょっと』という意味だとか。
野菜作りをしたことのない私たちが、地元の方々から教えてもらいながら楽しく作業しています。
ハウスの中は雨でも雪でも水やりが必須。夏は朝早くと夕方の2回、元気に育っている野菜たちが水不足にならないように、じょうろで水やりをしていく時には、「大きゅうなったね〜!」とか「病気に負けんと頑張れ!」と、トマトやきゅうり、ナスたちに話しかけてしまいます。台風の季節には心配になって、防風が吹く前に急いで窓を閉めに行ったりすることも。なんだか子供を育てているみたいな感覚です。
植物も私たちの言葉に応えてくれるかのように艶々の葉っぱが嬉しそう。
石原には野菜作り名人が何人もいて、この土地に合った野菜作りを度々教えてもらえます。仲間のひとり大高みかさんと、『ちょっこりファーム』名付け親の山下けいこさんは身近な先生。
「トマトときゅうりは相性がようないき、離して植えないかんきね。」「そろそろエンドウ豆の種を蒔こうか?」などと、それぞれの季節に必要な作業やお手入れの知識を教えてくれます。
そして週末一緒に作業をした後は、参加者全員でコーヒータイム。時には手作りケーキや桜餅、サンドイッチなどが持ち寄られ、疲れていても清々しい達成感で会話も弾みます。
その場は情報交換の場になることもあります。この春に、去年から『ちょっこりファーム』に参加している藤原ちえさんから「白石に個人の方が親子で切り開いた山の斜面にお花畑を作っていて、芝桜と花桃がとっても綺麗に咲いてます!持ち主の方も沢山の人達に見てもらった方がお花も喜んで咲いてくれるから、とおっしゃっているのでみんなで観に行きましょう!」と提案があった時には、早速車でお出かけしたことも。
藤原ちえさんは、元気な3人の子育て真っ最中のお母さん。時にはハウスの作業に子供達も参加します。
ほのかちゃんと一緒に大根の種を蒔いた時に「ほのか、大根大好き!美味しいよね〜!」と、野菜好きの一面を覗かせます。そうくんは土から出てくる物にいつも興味津々。末っ子のゆうまくんはゾウさんのじょうろで水やりをするのがお気に入り。でも辿々しい足取りで、一杯入ったじょうろの水を全部自分にかけちゃったことも。
藤原家の子供達は、野菜は土と太陽と水があってこそ実が成り美味しく食べることができるものだという事を、自分で体験しながら育っています。
今年からは石原の集落支援員、森ゆめかさんも『ちょっこりファーム』に参加することになりました。私たちが顔を合わすと、必ず話題に登るのはハウスの野菜やコミュニティーセンターにある花壇のお花のこと。
「グラジオラスの芽が出ました!」「霞草がきれいに咲いてきましたね。」「花びし草がやんちゃ〜!」「お母さんがオクラの種を分けてくれたので、ハウスに植えませんか?」一緒に作業をしながら、「来年は紫陽花を観にお出かけしましょう!」と旅の計画まで出てきます。
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里山で元気に暮らす高齢者の方々を見る度、いつまでも元気に生きる秘訣は何かしら…と、不思議に思っていました。きっと野菜や草木を育てることで、それらに対する責任感や愛情が毎朝の目覚めを促し、一日を終えた時の充実感をもたらすのかもしれません。
自然と共存することの大切さと喜びを、石原の人達と『ちょっこりファーム』が教えてくれています。